更新日: 2019.12.17 控除
社会保険料控除とは? 控除を受けるための手続き方法を解説
公的年金や健康保険などの社会保険料を支払った人は、1年間で支払った社会保険料の全額を、その年の所得から控除することができる制度があるのです。納付する所得税や住民税の税額を下げることができる「社会保険料控除」とは、どういったものなのか、控除対象と手続き方法について確認しましょう。
執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士
元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
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社会保険料控除とは?
そもそも、社会保険料控除とは何なのかを、まずは理解していきましょう。
給与などの所得を得ている人が支払う所得税は、その年の収入に応じて、支払う額が決まります。その額は、下図の順序で算出されます。(※1)この時、Bの部分で適応される所得控除の一つが、社会保険料控除です。
A、所得金額の計算
会社員や公務員などの給与所得者は、その年の給与収入からその額に応じた給与所得控除額を差し引いて、所得額を計算します。また、自営業などの事業所得者は、事業に必要な経費を収入から控除することができます。
B、課税所得金額の計算
次に、配偶者控除や医療費控除などの所得控除額を差し引いて、課税所得額が算出されます。社会保険料控除は、この所得控除の一つで、支払った社会保険料の全額が控除されますので、他の所得控除より納める税額に大きく影響します。
C、所得税額の計算
課税所得金額(B)に、その額に応じた所得税率をかけて所得税額が求められます。
D、所得税額から差し引かれる金額を差し引いた後の所得税額(基準所得税額)の計算
算出された税額から、住宅借入金等特別控除(ローン減税)など、差し引くことが認められた額を差し引いた後の税額が、実際の納税額となります。また、現在は、所得税に加えて復興特別所得税が徴収されています。なお、住民税は、前年の収入に対して同様の処理を行い、当該年の税額などが決定されます。
対象となる社会保険料は?
社会保険料控除の対象となる社会保険は、下表のとおり、健康保険、年金、雇用保険、その他労働者災害補償保険などになります。
(※2)を基に筆者作成
なお、社会保険料の徴収・支払い方法には、次の(1)と(2)がありますが、どちらであっても、その全額が控除されます。
(1)健康保険、厚生年金保険および雇用保険などの保険料や掛け金は、毎月の給与から差し引かれます。
(2)国民健康保険や国民年金などの保険料、保険税や掛け金は、直接本人が支払います。
社会保険料控除を受けるための手続き方法は?
社会保険料控除を受ける方法には、次の二通りの方法があります。
1、会社員や公務員が年末に行う年末調整
会社員や公務員は、その年の社会保険料を基本的に毎月の給与から徴収されています。一方、所得税は、その年の収入見込み額に応じて、毎月の給与からあらかじめ源泉徴収されています。そして、年末にその年の実際の収入に応じた所得税額と、源泉徴収された税額の過不足を調整することを目的として年末調整が行われます。
この際、給与から徴収された社会保険料以外に、生計を一にする子供の国民年金保険料など、直接支払った社会保険料がある場合には、年末調整の際に申告することができます。年末調整を行った結果、所得税に過不足が生じた場合には、1月以降の給与で調整されます。
2、確定申告書の提出
自営業者などはもとより、だれであっても、直接支払った社会保険料について、社会保険料控除を確定申告することができます。
そして、確定申告した結果、納めるべき所得税に過不足がある場合は、税金を納めるか、税金が還付されます。なお、国民年金および国民年金基金の保険料や掛け金については、支払ったことの証明書類を提出、または提示する必要があります。
まとめ
社会保険料控除は、所得税などの計算の基礎となる、課税所得額を計算する際に所得から控除されるものです。そして、社会保険料控除は、他の所得控除とは違い全額が控除されますので、税額に大きく影響します。年末調整や確定申告を通じて、確実に社会保険料を控除するようにしましょう。
出典
(※1)国税庁 パンフレット「暮らしの税情報(所得税のしくみ)」
(※2)国税庁 タックスアンサー「社会保険料控除」
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士