2020年度税制改正 国外扶養親族に関する扶養控除等の見直しについて
配信日: 2020.08.01 更新日: 2020.08.04
とりわけ、日本で働く外国人の場合、扶養親族を20人などと申告し、扶養控除だけで税負担を逃れるケースがあったので、今回の改正により、それらを是正することになります。これは国外在住の外国人だけでなく、国外在住の日本人にも適用されます。
改正内容の適用には時間的猶予があり、2023年(令和5年)分以降の所得税から施行されます。
執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。
ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。
FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。
2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。
現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。
早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。
サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow
現行の国外扶養親族に関する扶養控除等の内容
扶養控除等とは、扶養控除、配偶者控除、配偶者特別控除、障害者控除のことをいい、その対象は国内の居住者に限定されていないので、親族が非居住者であっても要件を満たせば扶養控除等の適用を受けることができました。
年末調整または確定申告書に、国外居住親族に関する「親族関係書類」および「送金関係書類」を添付すれば扶養控除等を受けることができたのです。
現行制度の問題点
扶養控除等の適用を受ける国外居住親族の所得要件は、日本国内の源泉所得に基づいて行われるため、国外でいくら所得があっても日本において扶養控除等を受けることができました。
また、扶養控除等を受けるための国外居住の扶養親族に対する送金額が明示されていません(いくらでもいいから送金していれば、送金制限はクリアできるということと思われます)。
税制改正による見直しの内容
現行制度の問題点を考慮し、今回の見直しでは、現行の扶養控除等の適用対象者に対して新たな年齢要件が加えられました。
1.現行の扶養控除等の適用対象者の年齢要件は16歳以上であるが、そこから30歳以上70歳未満の者を除く(改正後の適用対象者は16歳以上29歳以下、または70歳以上となります)。
2.ただし、30歳以上70歳未満の者であっても、次のいずれかの条件を満たす場合は適用対象者とする。
(1)留学により非居住者となったもの(留学ビザ等による証明が必要)
(2)障害者(障害者控除の適用対象者)
(3)その年における生活費または教育費に充てるための支払いを38万円以上受けている者(送金関係書類を提出し、年38万円以上の送金を行ったことを示す必要あり)。
要約すれば、30歳以上70歳未満の者を扶養控除等の適用対象者にしようとすると、いくつかの制約がかけられるようになったということです。
この改正による改善点
国外居住の30歳以上70歳未満の者を扶養控除等の適用対象者にするためには、留学生・障害者を除くと、年38万円以上の送金が条件として追加されました。
これにより、多数の国外居住親族を扶養親族として申告することが難しくなり、実質的に扶養していないと扶養控除が受けられないという本来の姿になりました。国外における所得を確認するのは難しいので、それに代わるものとして実際の送金額という条件を設けたと考えられます。
この改正は国外居住の外国人だけではなく、国外居住の日本人にも適用されます。
日本人の納税者で親族が国外居住者の場合、国外で相応の所得があっても、国内での所得が扶養控除等の制限以下であれば「親族関係書類」および「送金関係書類」を提示することにより控除が受けられましたが、留学生・障害者を除けば30歳以上70歳未満については送金額38万円以上という新たな要件が加えられたことになります。
まとめ
今までは、国外で所得がある場合でも、国内で所得がなければ扶養控除の対象とすることができましたが、2023年以降はそれがなかなか難しくなります。
これは外国人労働者の国外親族対策がメインですが、同時に日本人の国外居住者へも影響することになります。
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー