更新日: 2019.09.03 その他資産運用
投資信託のプロでも【マイナス】になってしまう理由
購入時期によって状況は異なりますし、損失を抱えた人が保有し続ける傾向もありますが、それでもあまり良い状況ではありません。
金融庁「投資信託の販売会社における比較可能な共通KPIを用いた分析」
執筆者:村井英一(むらい えいいち)
国際公認投資アナリスト
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員
大手証券会社で法人営業、個人営業、投資相談業務を担当。2004年にファイナンシャル・プランナーとして独立し、相談者の立場にたった顧客本位のコンサルタントを行う。特に、ライフプランニング、資産運用、住宅ローンなどを得意分野とする。近年は、ひきこもりや精神障害者家族の生活設計、高齢者介護の問題などに注力している。
プロが運用しているのもかかわらず、平均以下も
日本の株式相場は1年前の同じ時期と比べて、13%程度上昇しています。3年前と比べても11%程度の上昇ですから、日本の株式で運用していたら、それなりの利益になっていてもおかしくありません。
その間、為替レートは円高に進んでいますが、それ以上に海外の株式は上昇しており、海外の株式で運用していてもプラスになっているのが自然です。
投資信託の運用の対象は、日本の株式、債券、海外の株式、債券、それに不動産投資信託などいろいろなものがありますが、国内でも海外でも株式相場が上昇したのですから、半数近い人がマイナスとなるのは決して褒められたものではありません。
投資信託は、一般の個人投資家から集めたお金を、資産運用の専門家が代わって運用する仕組みです。プロが運用するのですから、当然のこと、素人が運用するよりも良い成果を期待してしまいます。投資信託が販売されている金融機関でも、その点が強調されます。
ところが、資産運用のプロが運用しているにも関わらず、実際は期待したほどではありません。期待したほどどころか、市場の平均よりも悪い結果となることも珍しくありません。プロが運用しているにも関わらず、なぜこのようなことが起こるのでしょうか?
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プロが運用してもマイナスとなってしまうわけ
まず、投資信託で運用すると、手数料がかかります。購入時には販売手数料が引かれ、運用している間には、信託報酬という手数料が差し引かれています。
運用している専門家はもちろん、販売窓口やその他いろいろな人がかかわっていますから、ある程度の手数料がかかるのはやむをえません。しかし、当然のことながら、運用の成果にはマイナスとなります。
投資が話題になり、株式相場が盛り上がっている時に、まとめて資金をつぎ込んでいる人が多いことも影響しています。株式相場が上がった時は「儲かった」という話が多くなり、投資への関心が高まります。
しかし、株価が高い時には投資信託を購入している人が多く、なかなかプラスになりにくい傾向があります。
さらに、少し上昇するとすぐに売却して利益を取ってしまう人がいることも影響しています。毎月分配型で、常に利益部分を外に出してしまう商品が多いことも同様です。
せっかく値上がりしても、すぐに資金が出てしまうようだと、安定した運用ができないのです。もちろん、これには販売する金融機関の姿勢にも問題があると言えるでしょう。
つみたてNISAは投資信託の条件が厳しい
そのような、日本の個人投資家の状況を変えようと取り組んできたのが金融庁です。
株式相場の状況に一喜一憂して、短期で売買を繰り返し、むやみに手数料がかかってしまう。あるいは、毎月分配型ばかりが人気で、積み立てによる資産形成が根付いていない。そんな状況を変えたいという狙いで作られたのが、「つみたてNISA」です。
つみたてNISAは、年間40万円までは、20年間にわたって利益が非課税となる、資産形成の優遇制度です。毎月積み立てで投資信託を購入していくようになっていますが、対象となる投資信託にかなり厳しい条件が課されています。
(1)購入時にかかる販売手数料が無料となっている。
(2)運用期間中に差し引かれる信託報酬が低めに設定されている。
(3)毎月分配型ではない。
さらに、運用担当者が積極的に運用判断を行う投資信託では、「すでに一定の実績があり、ある程度の資産規模がある」などの条件も加味されています。
そのため、対象は152本(2018年7月3日時点・金融庁HP)と少なく、つみたてNISAを扱っていない金融機関もあります。
つみたてNISAの条件には、「積立投資を長期間行うことで、安定した利益を上げて欲しい」という、今の金融庁の姿勢が表れているように思います。
実はこの7月に金融庁の長官が変わりました。「金融機関の利益よりも投資家の利益を重視すべき」として、この数年間は積極的な施策を打ち出していました。今後、どのように変わっていくのか、金融庁の施策にも注目したいところです。
Text:村井 英一(むらい えいいち)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、日本証券アナリスト検定会員、国際公認投資アナリスト