FXのロスカットとは？ 仕組みや計算方法、回避方法をわかりやすく解説！

「FXをはじめたいため、ロスカットの仕組みについて事前に知りたい」「ロスカットについて、わかりやすく解説しているサイトを探している」といったお悩みを抱えたことはありませんか？
 
FXの利用を検討している方は、取引前にロスカットの概要について知りたいと考える人も少なくありません。
 
FXのロスカットとは、保有しているFXの資産を一定の損失が発生した場合に自動的に売却できる機能です。価格が大きく下落する前に取引物を決済することで、損失を最小限に抑えられます。
 
また、「口座残高を多く入金する」「実効レバレッジを低額に設定する」「損切りを注文しておく」などのポイントを押さえることで、ロスカットの損失を回避しながらFXで取引を続けられます。
 
本記事では、ロスカットの概要、ロスカットのメリットやデメリット、初心者がロスカットで注意すべき点、ロスカットを回避する方法についてご紹介します。本記事の内容を参考にして、FX取引におけるロスカットについて理解を深めましょう。

【初心者向け】FXのロスカットとは？

FXの「ロスカット」とは、FX取引で「一定の水準以上における損失が発生した場合にポジションを強制的に決済する」仕組みのことを指します。FXの「ポジション」とは、新規で注文し、約定後に売買せずに保有している未決済の状態を意味します。

FXは損失が発生するリスクがあるため、相場の値動きをチェックしながら取引します。FXのロスカットは利用時に預けている資産が減少した場合に、強制的に保有しているポジションを決済します。

ロスカットでは損失が発生しますが、為替相場が大幅に下落しない値動きでポジションを決済するため、投資家の損失を守る機能です。FX取引のリスク面が気になる方は、ロスカットの仕組みを知ることで安心して取引することができます。

ロスカットのメリット

ロスカットのメリットとして、FX取引の大きな損失を防げる点が挙げられます。為替相場が下落した際に、値下がりの影響が少ない状態で保有しているポジションを自動的に決済できるためです。

例えば、就寝中や仕事中で為替相場の値動きをチェックできない状態でも、急な為替相場の下落時に自動的に決済されるため、大きな損失を受けにくくなります。FX取引のリスクが気になる人でも、ロスカットの機能を活用することで損失を最小限に抑えられるでしょう。

ロスカットのデメリット

ロスカットのデメリットとして、許容できる含み損が少ない点が挙げられます。

「含み損」とは、ポジションの購入時より時価が値下がりしている状態です。FXの為替変動で一時的に価格が下落した場合にも、保有しているポジションをロスカット機能で決済するケースがあるためです。

例えば、急激に為替相場が下落することで、後に利益が得られる可能性があるポジションを早いタイミングでロスカットするケースが考えられます。ロスカットは、「一定ラインを下回る」ことでポジションを決済するため、許容できる含み損の範囲が狭い点について留意しましょう。

初心者がロスカットで注意すべき点

初心者がロスカットで注意すべき点として、以下の3点が挙げられます。

（1）ロスカット率を大きく下回る価格で決済する可能性がある
（2）月曜日の始値が前週から大きく乖離（かいり）する場合がある
（3）FX会社によってロスカットの基準が異なる

 

ロスカットで注意すべき点（1）ロスカット率を大きく下回る価格で決済する可能性がある

ロスカットは相場変動が影響し、ロスカット率を大きく下回る価格で決済する可能性がある点について留意しましょう。ロスカットは為替相場が大きく下落した場合に、ロスカットラインより低価格で決済する可能性があるためです。

具体的には、「政治情勢の変化」「重要な経済指標の発表」などの影響で為替相場が大きく下落した場合に、保有しているポジションを決済するケースがあります。為替相場が急激に下落し、想定以上に大きな損失が発生する可能性がある点について注意しましょう。

ロスカットで注意すべき点（2）月曜日の始値が前週から大きく乖離（かいり）する場合がある

ロスカットは月曜日の週初めに、前週より大きく価格が乖離するケースがあります。FX取引は取引ができない土曜日や日曜日に相場が大きく変動し、週明けの月曜日に前週と比べて大きな乖離が発生する場合があるためです。

また、FX取引の流動性が低下している場合は、ロスカットの決済注文の約定までに時間がかかります。「為替相場の変動」「ロスカットの決済注文の約定が遅れる」という2つの事象が重なることで、想定以上の損失を受ける可能性がある点について注意しましょう。

ロスカットで注意すべき点（3）FX会社によってロスカットの基準が異なる

利用先のFX業者によって、ロスカットの基準が異なる点に留意しましょう。具体的には、図表1のとおりです。

図表1

利用先のFX会社	ロスカットの基準
GMOクリック証券	50％未満 法人は100％未満
DMM FX	50％以下
外為どっとコム	100％

GMOクリック証券株式会社「FXネオ取引のロスカットについて教えてください。」、株式会社DMM.com証券「DMM FXのロスカットとは？－初心者向けガイド」、株式会社外為どっとコム「ロスカットルールと注意点」を基に筆者作成

それぞれのFX会社のロスカット率の基準をチェックして、自分に合ったFX会社を選びましょう。

ロスカットの計算方法

ロスカットの計算方法は、次のとおりです。

＜ロスカットの計算方法＞

ロスカット（証拠金維持率）＝有効証拠金÷必要証拠金×100

有効証拠金とは、「FX口座の残高」「含み損」「含み益」の合計額です。

例えば、30万円の証拠金がある場合をイメージしましょう。

FXで10万円の利益を得ている場合は、有効証拠金は30万円＋10万円＝40万円、5万円の損失が出ている場合なら、有効証拠金は30万円－5万円＝25万円となります。また、FX会社によって、有効証拠金を「実質証拠金」「純資産」と表示する場合もありますが、これら3つの単語は同じ意味の用語です。

また、必要証拠金とは、FX口座に預けるべき必要最低限の金額です。必要証拠金は、次の計算式で算出できます。

＜必要証拠金の計算式＞

1.必要証拠金＝現在の為替レート×取引数量×証拠金率
2.必要証拠金＝現在の為替レート×取引数量÷レバレッジ

1または2のいずれかの計算式で、必要証拠金を算出できます。例えば、1米ドル100円、取引数量4万通貨、レバレッジ25倍の場合なら、次の計算式です。

＜1米ドル100円、取引数量4万通貨、レバレッジ25倍の場合における必要証拠金の計算式＞

・100円×4万通貨÷25倍＝16万円

有効証拠金や必要証拠金を算出し、ロスカット率（証拠金維持率）についてチェックしましょう。

ロスカットを回避する方法

ロスカットを回避する方法として、以下の6点が挙げられます。

・口座残高を多く入金する
・実効レバレッジを低額に設定する
・損切りを注文する
・保有する一部のポジションを決済する
・少ない通貨数を購入する
・ロスカット率が低いFX会社を選ぶ

取引用の口座残高を多く入金する、また、実効レバレッジを低額にすることで、ロスカットを回避しやすくなります。他にも、「損切りを注文しておく」「保有する一部のポジションを決済する」「少ない通貨数を購入する」「ロスカット率が低いFX会社を選ぶ」などの方法を選ぶことも大切です。

ロスカットを回避する方法1：口座残高を多く入金する

取引用の口座残高を多く入金することで、ロスカットを回避しやすくなります。取引用口座の残高の割合を増やすことで、証拠金維持率の割合を下げられるためです。
例えば、「100万円」「1000万円」2つの資産を比較すると、1000万円を保有している方が取引に必要な証拠金（必要証拠金）に対して持っている資金が多くなります。

取引用の口座残高の割合が多くなることで、ロスカットの対象になる可能性が低下します。取引用の口座に余裕をもった入金をしておくことで、ロスカットになる可能性を最小限に抑えましょう。

ロスカットを回避する方法2：実効レバレッジを低額に設定する

実効レバレッジを低額にすることも、ロスカットを回避しやすくする方法の1つです。「実効レバレッジ」とは、運用しているFXの資産を意味しています。

FXの運用総額を少なくすることで、ロスカットに該当する取引額も少なく抑えられるためです。レバレッジは最大25倍まで資金を増やせますが、リスクを考慮して少ない倍率からFXをはじめることをおすすめします。

ロスカットを回避する方法3：損切りを注文する

損切りを注文することで、損失を最小限に抑えながらFX取引ができます。通常は自動的にロスカットの機能が働きますが、急激な為替相場の下落時などにロスカットが遅れてしまった場合は、損失が想像以上に大きくなるためです。

具体的な対処法として、ロスカット機能より少し前の為替相場で、損失を抑えられる損切りを自分で注文する方法が有効です。「ロスカット機能」「投資家自身で設定する損切り」という二重のセーフティーネットを設けることで、万が一の大きな損失を最小限に抑えましょう。

ロスカットを回避する方法4：保有する一部のポジションを決済する

保有する一部のポジションを決済することで、ロスカットを回避しやすくなります。ポジションの一部を決済することで必要証拠金が少なくなるため、証拠金維持率が高くなります。

例えば、3ロットを保有している場合は、1ロットを決済することでロスカットの証拠金維持率が上昇します。証拠金維持率を引き上げることで、ロスカットを回避しながらFX取引をしましょう。

ロスカットを回避する方法5：少ない通貨数を購入する

少ない通貨数を購入することで、ロスカットを回避しやすくなります。購入する通貨量を減らすことで必要拠出額が少なくなり、証拠金維持率が高く設定されるためです。

具体的には、FXの通貨量が減少することで、保有している資産全体に対する拠出金の割合が減ります。少ない通貨量でFXの取引をはじめることで、ロスカットを回避しましょう。

ロスカットを回避する方法6：ロスカット率が低いFX会社を選ぶ

ロスカット率が低いFX会社を選ぶことも、ロスカットを回避するためには有効です。利用するFX会社によっては、ロスカットに該当する利率が異なるためです。

ロスカット率についてもさまざまなFX会社を比較検討しながら、自分に合ったFX会社を選びましょう。

ロスカットに関するよくある質問

ここでは、ロスカットに関するよくある質問をご紹介します。抱えている悩みと同じ項目を見つけた際には、ぜひ参考にしてみてください。

ロスカットに関するよくある質問1：ロスカット後に証拠金がない場合はどうなる？

ロスカット後に証拠金がない場合は、現在保有しているポジションを全て強制的に決済します。例えば、「くりっく３６５」のFX取引について、次のように記載されています。

「証拠金不足額が発生した発生日（発生日が土曜日の場合は翌月曜日）の19時までに前日証拠金不足額以上の金額を入金していただきます。発生日（発生日が土曜日の場合は翌月曜日）の19時までに証拠金不足合計額以上の入金が確認できず、かつ当該発生日（発生日が土曜日の場合は翌月曜日）が銀行営業日である場合には、お客さまの全ての保有ポジションを強制的に、成行による反対売買により決済します。」
（住信SBIネット銀行株式会社「よくあるご質問 〔くりっく３６５〈FX〉〕 証拠金不足となった場合はどうなりますか？」より引用）

ロスカット後に証拠金がない場合を回避するためにも、まとまった資産を保有した状態でFX取引をはじめましょう。

ロスカットに関するよくある質問2：ロスカットされたらどうなる？

ロスカットされた場合は保有しているポジションが全て決済され、未約定の指値注文も取り消されます。現時点より損失が拡大することを防ぐ目的で、取引を終了させる機能が自動的に働くためです。

また、ロスカットは少なからず損失が発生する機能であるため、可能な限り回避することをおすすめします。

ロスカットに関するよくある質問3：ロスカットと損切りの違いは？

ロスカットと損切りの違いは、図表2のとおりです。

図表2

手法	特徴
ロスカット	自動的かつ強制的に保有ポジションを決済する機能
損切り	投資家が主体的におこなう決済方法

筆者作成

ロスカットは証拠金維持率を満たさない場合に、自動的に保有しているポジションを売却する機能です。一方で、損切りは投資家がポジションを売却する起点を設定し、損失を最小限に抑える手法です。

ロスカットより多少価格が高いタイミングに損切りを注文することで、取引相場が急激に下落する前段階で決済できる可能性が高まります。「ロスカット」「損切り」の2種類を活用することで、FXで発生する損失を最小限に抑えましょう。

ロスカットに関するよくある質問4：ロスカットの証拠金維持率とは？

ロスカットの証拠金維持率とは、ポジションの必要証拠金に対する純資産の割合です。証拠金維持率は、次の式で算出します。

＜証拠金維持率の計算式＞

証拠金維持率＝有効証拠金÷必要証拠金×100

有効証拠金は、証拠金と含み損と含み益を合わせた合計金額です。例えば、10万円の証拠金がある場合を想定しましょう。15万円の利益が出ている場合の有効証拠金は25万円、5万円の損失が出ている場合の有効証拠金は5万円です。

また、必要証拠金とは、FXの取引をはじめる前に、FX口座に最低限預け入れる金額です。ロスカットの証拠金維持率は、有効証拠金や必要証拠金に応じて変動している点について留意しましょう。

ロスカットを理解してFXの取引をはじめよう

本記事ではロスカットの概要、ロスカットのメリットやデメリット、初心者がロスカットで注意すべき点、ロスカットを回避する方法についてご紹介しました。FXのロスカットとは、保有しているFXの資産を一定の損失が発生した場合に自動的に売却できる機能です。

また、「口座残高を多く入金する」「実効レバレッジを低額に設定する」「損切りを注文しておく」などのポイントを押さえることで、ロスカットにおける損失を回避しながらFX取引を続けられます。本記事の内容を参考にして、FX取引におけるロスカットについて理解を深めましょう。

出典

GMOクリック証券ウェブサイト
株式会社DMM.com証券 DMM FXのロスカットとは？－初心者向けガイド
株式会社外為どっとコム ロスカットルールと注意点
住信SBIネット銀行株式会社 〔くりっく３６５〈FX〉〕 証拠金不足となった場合はどうなりますか？

執筆者：FINANCIAL FIELD編集部