更新日: 2019.01.08 その他資産運用

〈柴沼投資塾〉時事ネタ編④。トランプ疑惑「ロシアゲート」の相場への影響をチャートから読み解く

執筆者 : 柴沼直美

〈柴沼投資塾〉時事ネタ編④。トランプ疑惑「ロシアゲート」の相場への影響をチャートから読み解く
トランプ大統領がコミー前FBI長官を呼びつけて捜査の打ち切りを要請した流れは、かつてのニクソン大統領時代のウォーターゲート事件になぞらえて、「ロシアゲート」と呼ばれています。
発端はトランプ陣営がロシアから資金援助を受けていたかもしれないなどといわれています。そして1972年のニクソン大統領時代のウォーターゲート事件の当時は、事件が発覚して2年後に大統領が辞任。その間結果的に、1051ドルだったNYダウは577ドルまで下落しました。このことから、今回も同様の株価下落が起こるのではと懸念する声が上がっていますので、当時との違いを中心に確認してみましょう。

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柴沼直美

Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com

スキャンダルだけを近視眼的にみると危険

政治スキャンダルが報道されたときは、トランプ大統領や側近がどうなったかという現在進行中の動きだけを追うのは危険です。これは、昨年あった英国のEU離脱(ブレクジット)や米国大統領選挙の時のことを思い起していただければ明らかです。当初の市場予測と逆の結果が出て、当初は大きく下げましたが、その後しっかり回復しています。ニュースだけに着目していると値動きに振り回され、手数料を無駄遣いするだけに終わってしまいます。例えば、筆者のクライアントにもブレクジットで下がったところに買いを入れたおかげで、わずか数日で思わぬ収益を獲得することができた方がいらっしゃいます。「実態をきちんと見ることができるかどうか」で左右されます。ではどうすればいいのでしょうか。一番大事なのは、「報道の大きさ≠金融商品の値動き」ということを知っておくことです。筆者は少なくとも2つのプロセスで確認することをお勧めしています。

その1 過去の類似のスキャンダルや政治イベントと比較してみる

ステップ1として、今回の事件をウォーターゲート事件になぞらえているは、なぜなのか考えてみましょう。ウォーターゲート事件は72年に発覚。74年に大統領が辞任する2年の間に株価が半分に。今回もトランプ大統領が辞任に追い込まれるカモ!とまでささやかれ、そうなれば株価が急落に、という連想なのでしょうが、当時と今回との決定的な違いを見過ごすわけにはいきません。それは、ウォーターゲート事件発覚当時の72年、無事に株価は保たれていたのですが、実は後半に急落した要因は73年10月に勃発した第四次中東戦争にあったとみられていることです。この戦争により、アラブ石油輸出国機構がイスラエルに味方する国への石油禁輸や、原産、原油価格の引き上げといった措置を講じ、先進国の経済を大きくゆるがしたのです。これと比較して今回のロシアゲートは、そのような世界経済のトレンドを反転させるような動きはまだ見られません。経済指標を確認すれば一目瞭然です。以前にもお伝えしたように、どの経済指標を見ればいいかわからない場合は、「第一金曜日に発表される雇用統計」を確認してください。堅調な雇用統計からは、ロシアゲートをウォーターゲート事件と同じように当てはめるのは早急と言えます。

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その2 チャート(移動平均線とRSI)で動きのパターンを予測する

次のステップとして、チャートの力を借りましょう。チャートでは、日々の株価はローソク足で表されます。(ローソク足の説明はここでは省略します)ただこれで表された値動きだけを見ても、今後の動きを予測するのは難しいので、移動平均線を併せて確認します。移動平均線には、日々の短期的な値動きについては、5日、25日、75日、長期の値動きに関しては、13週(3カ月)、26週(6カ月)が一般的に使われていますが、短期と長期の組み合わせで、今の水準が妥当かどうかを判断します。

移動平均線が上を向いているか、ローソク足が移動平均線を上回っていれば上昇トレンド、下を向いているかローソク足が移動平均線を下回っていれば、下降トレンドにあると判断します。ただし、ローソク足が移動平均線を大きく上回っている場合は過熱感(買われすぎ)のため短期的には調整が考えられますし、逆に移動平均線を大きく下回っている場合は弱気すぎなので短期的に反発することが予想できます。今回は売り時かどうかだけチェックしますから、「長期移動平均が大きく(急こう配で)上昇した後、傾きが緩やかになり、かつローソク足が移動平均を下回っている」ことが読み取れれば売り時となり判断できます。

図_資産運用3_チャート

出所:Yahoo!ファイナンス
 
 
このルールを念頭において、2017年5月31日までのニューヨークダウのローソク足と25日移動平均線(緑の線)、26週移動平均線(赤の線)をあわせてみましょう。これでみると、ローソク足は26週移動平均線を上回っていますが、短期の25日移動平均線の上にあります。ここから、短期的にはこの範囲で妥当ですが、長期的なトレンドからは上放れしていることから強気で見ていいと考えられます。

ダブルチェックのためRSI指標を確認しましょう。RSIとは一定期間において上昇と下落のどちらの勢いが強いのか計測しようとする指標で、0~100の範囲で推移し、50以上になると上昇局面に入り、70を上回ると過熱気味、50を下回ると下降局面に入り30を下回ると売られ過ぎであると判断されますので、一目でわかるシンプルな確認方法です。チャートで確認してみると現在ちょうど50近辺にありますから、RSIからは買われすぎでも売られすぎでもない妥当な水準であると判断できます。

つまりこれらからも、ロシアゲートなど大きく報道される政治スキャンダルほど要注意だということがわかります。ゴージャスなジャケットを身にまとっていると「凄い!」と誤解してしまいがちですが、体力測定をしてみないと筋肉がついているかどうかわからない、金融商品の値動きもこれと同じようなものですね。