85歳の親が「NISAを保有したまま」亡くなりました。配当金が「月5万円」入るそうですが“NISAのまま相続”は可能ですか？「非課税の恩恵」は受けられるでしょうか？
しかし、NISA口座を保有していた人が亡くなると、そのNISA口座は閉鎖されるため、NISA口座のまま相続することはできません。
本記事では、NISA口座が相続できない理由や、相続時に注意すべきポイントを分かりやすく解説します。将来相続を受ける可能性がある人はもちろん、現在NISA口座で資産運用をしている人も、ぜひ最後まで目を通してください。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
NISA口座が相続できない理由
NISAは、あくまで名義人本人の特例です。そのため、口座を保有している人が亡くなると、非課税の扱いが終了するため、相続人がそのまま被相続人の「NISA口座を引き継ぐ」ことはできないのです。
親が亡くなった場合は、まず取引している証券会社などの金融機関に死亡の届出を行います。このとき、NISA口座そのものは閉鎖され、中にある株式や投資信託は課税口座（一般口座や特定口座）へ移されます。
この移管が完了して初めて、相続人がその資産を相続できるようになるのです。NISAの「非課税の枠」自体は本人限りのものですが、その中で保有していた資産は、課税口座を通じて相続人に引き継がれるという仕組みです。
NISA口座を相続するときに気を付けるべきこと
亡くなった時点で保有していた株式や投資信託は、「相続財産」として扱われます。相続の手続きが完了し、相続人の課税口座（一般口座または特定口座）へ移された後は、通常の課税ルールが適用されます。
亡くなった時点でまだ受け取っていない配当金は、支払基準日がいつかによって扱いが変わります。死亡前に権利が確定していた配当金は非課税となりますが、死亡後に権利が発生した分は相続財産に含まれ、課税の対象となるのです。
また、NISA口座に入っていた株式や投資信託は、亡くなった時点の時価で評価され相続財産の対象となります。例えば、相続発生時の時価500万円分の株式を保有していた場合、その500万円が相続財産に加算されます。
そのため、たとえ相続後に値下がりしても、相続税は死亡時の価格で計算されることになるのです。
NISA口座で資産運用している人が知っておくべきこと
NISA口座に限らずですが、証券口座を保有している場合、家族が手続きに困らないように、どの金融機関でどんな商品を持っているかを元気なうちに一覧にしておくと安心です。また、どの金融機関でNISA口座を保有しているのかは、明らかにしておくと良いでしょう。
複数の金融機関で取引をしている場合、その全てで手続きが発生します。そのため、取引金融機関を減らしておくと、残された家族の手続きの負担を軽減できます。相続時に株式などを売却せず、そのまま保有することは可能ですが、購入時の価格は引き継がれません。
その場合は、相続時点の時価で評価されることになります。相続後に株式等を売却して得た資金を使い、相続人自身のNISA口座で改めて投資することはできますが、当然新たな買い付け扱いになります。
まとめ
NISA口座は、亡くなった時点で非課税の効力を失うため、相続人がそのままNISA口座を引き継ぐことはできません。
家族がNISAで資産運用している場合は、「どの金融機関で、どんな銘柄を、どれくらい持っているか」を把握しておくと、相続が発生したときに手続きがスムーズに行えます。早めの準備が、相続手続きを円滑にし、負担を軽くすることにつながります。
出典
金融庁 NISA特設WEBサイト
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
