最短5年で「NISA1800万円」を“満額投資”して5年運用…「これで老後は安泰」と思ったら、退職直後“30%暴落”で取り崩し額にがく然…妻の「暴落したらどうする?」が杞憂ではない理由
そう考えているシニア世代は少なくないのではないでしょうか?
55歳のAさんも、今年から毎月30万円ずつ投資し、最短5年で1800万円を満額投資する計画です。その後は追加投資をせず、60歳から65歳までの5年間は運用だけを続けると言います。
年4%で運用できたと仮定すると、65歳時点の資産は約2424万円となり、俗に言う「老後2000万円問題」もクリアできる計算です。これを35年間、運用しながら取り崩すと、毎月約10万5000円を使える計算になります。
「年金に月10万円程度を足せれば、つつましく暮らせる。無理に再雇用で働かなくてもいい」そう安心しきっていたAさんに、妻がひと言、こう言いました。
「でも、退職したあと株が暴落したらどうするの?」
本記事では、Aさんを例に、退職直後に株価が30%下落した場合、老後資金にどれほどの影響が出るのかを試算します。
1級ファイナンシャルプランニング技能士、証券外務員二種
NISA1800万円でも30%暴落で約1697万円に
本来なら約2424万円になっているはずの資産が、もし30%下落すると約1697万円まで目減りします。その差は約727万円です。
Aさんは65歳からこの資産を取り崩して生活していく予定だったため、目減りした資産で今後の生活費をまかなう必要が出てきます。そこで、暴落後の約1697万円を年4%で運用しながら35年間取り崩した場合、実際の生活費にどれほど影響が出るのかを試算してみます。
NISA1800万円でも取り崩し額は月7.4万円に
株価が下落しなかった場合の取り崩し額は毎月約10.6万円ですが、退職直後に30%下落した場合は毎月約7.4万円まで減ってしまいます。
・月の差額:約3.2万円
・年間の差額:約38.4万円
・35年間の差額:約1344万円
ただし、これは暴落後に資産が回復し、その後は平均年4%で運用できたと仮定した試算です。実際の株式市場が毎年一定の利回りで推移するとは限らず、下落が続けば取り崩し可能額はさらに少なくなる可能性があります。
一方、暴落はもうこりごりと、運用をやめて全て現金にしてしまうと、取り崩しできる額は約4万円まで下がります。値動きへの不安から運用をやめてしまうことも、老後資金にとって大きなリスクになるのです。
ここから分かるのは、退職直後の暴落は、その時点の資産額を減らすだけでなく、その後何十年も続く生活費にまで影響するということです。
NISA1800万円でも若い世代とは暴落の意味が違う
なぜAさんのようなケースでは、暴落をここまで心配する必要があるのでしょうか。理由の1つは、Aさんがこれから資産を「使う側」に回るからです。
例えば、30代で毎月5万円ずつ投資している人は、同じように株価が下落しても、その後も投資を続けられます。むしろ株価が下がったときに買い増しをすれば、相場が回復したときに大きな利益を得られる可能性もあります。
一方、65歳で退職を迎えたAさんは、これから生活費のために資産を取り崩していく計画です。株価が下がったからと言って、これまでと同じように資金を追加して買い増すことは難しくなります。
つまり、同じ「30%暴落」でも、「資産を増やしている途中の人」と「資産を取り崩し始める人」とでは、その意味がまったく変わってくるのです。
「NISA1800万円=老後は安泰」とは限らない
Aさんは、NISAを最短5年で1800万円まで満額投資し、さらに5年間運用すれば、老後2000万円問題も解決し、老後資金の準備は十分だと考えていました。
しかし、資産形成では「いくら投資したか」だけでなく、いつまで運用できるのか、そしていつから使い始めるのかまで考えておく必要があります。
特に退職後は、現役時代とは違い、資産を追加することが難しくなります。「NISAを満額にしたから大丈夫」と安心するのではなく、退職後に株価が大きく下落した場合でも、どう生活費を確保するかを事前に考えておくことが大切です。
妻の「株が暴落したらどうするの?」という一言は、NISAを満額投資するだけでは見えにくかった、資産を使い始める時期のリスクに気づく、良いきっかけになったのではないでしょうか。
執筆者 : 藤田寛子
1級ファイナンシャルプランニング技能士、証券外務員二種
