“キオクシア株”を「朝に5万5000円」で購入→「5万8000円」で売却! その勢いで“もう一度”買おうとしたら、画面に「法令違反」の文字が…いったいナゼ? 差金決済のルールをFPが解説
デイトレをするつもりがなくても、保有している銘柄が一日のうちに大きく値上がりすると、思わず利益を確定させたくなる人もいるでしょう。ところが、売却したあとその日のうちにもう一度買い直そうとすると、画面に「法令違反」の文字が表示されることがあります。
仕組みを知らずに取引をした人は、驚いてしまうのも無理はないでしょう。
本記事では、差金決済(さきんけっさい)と呼ばれるこのルールの内容と、デイトレードで注意すべきポイントを解説します。
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
銀行にて12年勤務し、法人および富裕層向けのコンサルティング営業に従事。特に相続対策や遊休地の有効活用に関する提案を多数手がけ、資産管理・税務・不動産戦略に精通。銀行で培った知識と経験を活かし、収益最大化やリスク管理を考慮した土地活用のアドバイスを得意とする。
現在は、2社の経理を担当しながら、これまでの経験をもとに複数の金融メディアでお金に関する情報を発信。実践的かつ分かりやすい情報提供を心がけている。
「差金決済」とはどのような取引か
差金決済とは、株式などを買付または売却したあと、同じ銘柄を同じ受渡日のうちに反対売買し、実際の受け渡しをせずに売買差額だけをやり取りする形で決済を終える取引のことです。
金融商品取引法第161条の2およびその関連の内閣府令により、信用取引を除く全ての取引でこの差金決済は禁止されていますが、この規制は株式の受け渡しにかかる時間と関係しています。
株式を売買しても、実際にお金や株式が手元に届くのは、約定した日ではなく、約定日から数えて3営業日目の受渡日です。
現物取引で同じ資金を使い、受渡日が来る前に同じ銘柄の売買を繰り返すと、証券会社の取引システムはこれを差金決済に該当するおそれのある注文として検知し、発注できないようにしています。
信用取引であれば、証拠金をあらかじめ預けたうえで売買を繰り返すことが認められていますが、現物取引で同じ動きをすると、担保を差し入れないまま信用取引と同じ効果を得ることになるため、法令で歯止めがかけられているのです。
「売った代金」で買い直すと、なぜ警告が出るのか
今回のケースでは、朝にキオクシア株を5万5000円で購入し、同日に5万8000円で売却しています。
この時点で3000円の利益が確定しますが、この売却代金はまだ手元に届いていません。受渡日である3営業日後まで、証券会社の口座上で正式な資金として扱われないためです。
それにもかかわらず、この売却代金を使って同じ銘柄を買い直そうとすると、証券会社のシステムは、まだ受け渡されていない資金による買い付けと判断します。その結果、差金決済に該当するおそれがある注文として受付が止められ、警告メッセージが画面に表示されるのです。
ただし、口座に決済済みの資金が十分にある場合は、この限りではありません。あくまで、同一資金を使った決済ができない、という規制です。
差金決済に該当した場合の対応とデイトレードの注意点
差金決済に該当するおそれがある注文は、証券会社のシステム側であらかじめ止められるため、うっかり法令に違反する結果になることは基本的にありません。
ただし、売却代金を受渡日前に出金したり、ほかの取引の資金に充ててしまったりすると、結果的に差金決済に該当し、証券会社から不足額の請求を受けることがあります。その際は、証券会社の指示にしたがって対応するようにしましょう。
デイトレードを繰り返したい場合は、証拠金を預けて取引する信用取引を利用すれば、受渡日を待たずに同じ銘柄を売買することも可能です。
ただし、信用取引には金利や貸株料といった追加のコストが発生するため、仕組みを理解したうえで利用しましょう。
まとめ
画面に表示された「法令違反」の文字は、その時点で違法なことをしてしまったという意味ではなく、差金決済という禁止ルールへの抵触を防ぐ警告です。
現物取引では、同じ資金を使った当日中の反対売買に制限があると知っておけば、デイトレードでの思わぬエラーに戸惑わずに済みます。また、取引を始める前に、利用している証券会社の差金決済に関するルールを確認しておくと、売買で戸惑うことを避けられます。
執筆者 : 竹下ひとみ
FP2級、日商簿記2級、宅地建物取引士、証券外務員1種
