“定期預金360万円”ですが、息子に「NISAで年5%運用なら、年18万円増えて毎年旅行に行ける」と勧められました。“オルカンなら安心”と言いますが、本当に増えますか? 親世代にとっての「落としどころ」とは
しかし、長年コツコツとためてきた定期預金を解約し、元本保証のない投資に回すことへの不安は、簡単に拭えないのではないでしょう。どれほど効率的な投資であっても、不安を抱えてしまっては意味がないかもしれません。
本記事では、投資と現金のバランスをどのように考え、子どもからの提案をどう落とし込めばよいのか、具体的な数字とリスク管理の視点から解説します。
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手元に残すのは「現金140万円」で十分か?
投資を始める前に重要なのが、不測の事態に備える「生活防衛資金」の確保です。
老後生活の場合、この資金の目安は「毎月の生活費の3~6ヶ月分」に加え、「近い将来使う予定のあるまとまったお金(家の修繕費や車の車検、当面の医療費など)」の合計額として「生活費の1~2年分程度」の確保が推奨されます。
毎月の生活費の赤字(年金で足りない分)が3万円だった場合、1年分の補てん額は36万円です。手元に140万円の現金があれば、こうした当面の生活費の補てんやちょっとした医療費などには対応しやすいでしょう。
ただし、屋根の修繕や車の買い替えなど100万円単位の出費が控えている場合は、140万円では心もとないため、NISAへ移す金額を減らして現金を多く持っておくと安心でしょう。
「年5%で毎年18万円」の落とし穴
子どもの言う「年5%」は、世界中の株式に分散投資する投資信託(eMAXIS Slim 全世界株式、通称「オール・カントリー(オルカン)」など)を長期間保有した場合の期待リターンの一例として考えられる数字です。
ただし、実際の運用では、必ずしも毎年5%の利益が得られるわけではありません。
仮に360万円を年5%で運用できたとして、1年間の運用益は18万円です。その状態が毎年続き、毎年18万円を取り崩せば、計算上は元本360万円を維持できます。定期預金のまま毎年18万円を引き出した場合、単純計算では20年で底をつくのとは対照的です。
しかし、ここには投資特有の落とし穴があります。株式投資の利回りは、毎年確約された「固定金利」ではありません。ある年はプラス20%と大きく増えることもあれば、別の年にはマイナス15%と元本を大きく割り込むこともあるでしょう。
マイナスになった年に「旅行代だから」と無理に18万円を引き出すと、元本が大きく削られてしまい、その後の資産回復に時間がかかる可能性があります。NISAは「毎年必ず18万円出てくる魔法のATM」ではない、という事実を理解しておくことが重要です。
定期預金の「安心感」には価値がある
「元本が減るかもしれない」というストレスは、これまで元本保証の預金を安心材料としてきた親世代にとって、想像以上に重いものです。子ども世代であれば、投資期間が長く、損失が出ても取り戻すための時間を確保しやすいですが、親世代が同じ感覚で投資する必要はありません。
定期預金は金利が低いかもしれませんが、「元本が減らない」という安心感は、老後の生活を穏やかに過ごすためにも大切です。安心感を捨ててまで、無理に360万円全額を投資に回さなくてもよいでしょう。
親世代に合った無理のない折衷案
子どもからの思いやりを受け取りつつ、自身の安心感も守るためには、「投資額を自分が無理なく受け入れられる金額まで下げる」のも1つの方法です。
例えば、500万円のうちNISAへ移すのは「100万円」だけにし、残りの「400万円」は定期預金や普通預金に残しておきます。
100万円を投資した場合、仮に20%値下がりしても、評価額の下落は20万円です。360万円全額を投資するケースと比べれば、資産価格が下落したときの影響を小さく抑えられます。
また、「毎年旅行に行く」という目標は、手元の400万円の現金から気兼ねなく使えばよいのです。
手元資金が減っていくスピードを、100万円のNISA運用が「少しだけブレーキをかけてくれる(寿命を延ばしてくれる)」といった距離感が、親世代が無理なくNISAを活用し、老後を楽しく過ごすための選択肢にもなります。
例えば、100万円を年5%で1年間運用できたと仮定すると、計算上の運用益は「5万円」です。この金額でも、旅行の費用の一部をまかなえるでしょう。
どうしても気になるなら手元に残す金額を増やそう
子どもの「360万円を投資して毎年18万円の旅行を楽しむ」という提案は魅力的に見えますが、相場下落時のストレスや生活防衛資金の不足を招くリスクもあります。
大切な老後資金を守り、安心して暮らすためには、世間の平均や子どもの意向にそのまま合わせる必要はありません。
100万円など許容できる金額だけをNISAで運用し、残りは現金としてしっかり確保するといった「折衷案」も含め、自身が納得できる落としどころを見つけていってください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
