公衆衛生医師とは? 仕事内容やキャリアパス、メリット・デメリットも解説|ファイナンシャルフィールド

公衆衛生医師とは? 仕事内容やキャリアパス、メリット・デメリットも解説

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病院やクリニックで患者を治療するのではなく、地域住民全体の健康保持に努める「公衆衛生医師」が注目を集めています。本記事では、公衆衛生医師の詳しい仕事内容やキャリアパス・働き方などを紹介しながら、やりがいや魅力について解説します。

「公衆衛生医師に転職したい」と思っている方はもちろんですが、「公衆衛生医師の存在について、はじめて知ったので詳しく知りたい」という方も、最後まで読むことで、公衆衛生医師について知ることができるでしょう。

公衆衛生医師とは

「公衆衛生医師」とは、地域の保健所で勤務する医師のことです。一般的に病院やクリニックなどで患者を治療・診断する医師とは違い、地域住民を対象に予防医療や健康レベルを上げるような働き方を行う医師となります。

目の前の患者を救うために働くのが臨床医師だとすると、公衆衛生医師は地域全体を患者として扱い、過去のデータや現状を把握した上で対策を練っていく動きが求められます。

公衆衛生医師の役割・仕事内容

公衆衛生医師の仕事は一般的な認知度がまだまだ低い職種となります。

地域の健康を守る重要な働きを担っている公衆衛生医師ですが、仕事内容もいくつかあり、働き方なども臨床医師とは異なるため、詳しく説明していきます。

公衆衛生医師の仕事内容

基本的に保健所に勤務しながら次のような仕事内容に従事しています。

(1)感染症の予防対策
(2)災害時の健康対策
(3)地域住民の検診や受診案内
(4)健康意識への促進・装着



インフルエンザのような感染症の対策はもちろんのこと、新型コロナウイルスのようにこれまで未知の感染症が流行った際には、公衆衛生医師が地域と連動しながら対策を立てています。

また、乳がん検診や健康診断などの実施や認知についても企画しながら広報をしていきます。地域住民の病気の発生率や傾向に合わせて強化するべき企画をブラッシュアップする必要があります。

さらに、セミナーや講演会といった活動を通して、地域住民に直接発信することも重要な仕事です。地域住民全体の健康に対する意識を高め、1人ひとりに当事者意識を持ってもらうよう働きかけます。

公衆衛生医師の勤務先や働き方

公衆衛生医師は、地域の保健所に勤務します。そのため、求人募集は各市町村の公的サイトなどで行われることが多いです。もし希望の勤務地がある場合、対象エリアの市町村サイトで調べてみると良いでしょう。

働き方としては、イレギュラーな勤務が多い臨床医師とは異なり、一般的な会社員と同じような勤務形態が多いです。土日祝日は休みであったり、産前産後休暇や育児休暇といった休暇制度が整えられていたり、男女問わずワークライフバランスを整えながら働けるでしょう。

勤務先の種類

公衆衛生医師の勤務先は大きく分けて3種類あります。

●都道府県型の保健所
●政令市型の保健所
●本庁(県庁等や市役所)



都道府県型の保健所は一般的にイメージする地域の保健所で、地域住民の健康保持に関わっていきます。その他にも政令市型の保健所というものもあり、妊婦や乳幼児の健康診断、母子健康手帳の交付、育児学級、妊産婦・新生児の訪問指導などの業務を担っています。

さらに本庁の場合は自治体全体の健康や保健衛生に関する計画の策定や予算の算出など、大きな影響力を持って地域の健康を守っているのです。

公衆衛生医師に求められる役割

地域各所と協力しながら、医療機関・医師会と調整を行ったり、必要な機関同士を結びつけたりすることも求められています。

地域医療は様々な機関が連携して運営していくものです。必要な機関を洗い出し、協力要請を行うことも重要なミッションです。地域住民が健康で健やかな生活を送れるよう支援する必要があります。

公衆衛生医師のキャリアパス

公衆衛生医師のキャリアパスには、大きく分けて3つのラインがあります。最初から最後まで公衆衛生医師として生きる方法もあれば、臨床経験を踏まえて転職する方法もあります。

●衛生行政一筋型
●セカンドキャリア型
●ラストキャリア型



公衆衛生医師のキャリアパス(1)衛生行政一筋型

臨床研修のあと、すぐに公衆衛生医師を目指す人は、世間一般で言うところの「新卒」にあたるイメージです。最も多くの時間を公衆衛生医師として働けるため、より専門的かつ詳しくなることができるでしょう。

公衆衛生医師のキャリアパス(2)セカンドキャリア型

セカンドキャリアで公衆衛生医師を目指す人は、ある程度の現場経験を積んでから転職するため、バランスの良い視野で働くことができるでしょう。現場が抱える課題を理解しやすかったり、対策内容についてもより実践的なものを提案できるでしょう。

公衆衛生医師のキャリアパス(3)ラストキャリア型

ラストキャリアで公衆衛生医師を目指す人は、多くの経験を積んでいるためかなり臨床現場よりの考えが強い方が多い傾向にあります。キャリアによってはいきなり役職につくことも多く、最も実績を重視される採用となるでしょう。

公衆衛生医師のやりがいや魅力(メリット)

公衆衛生医師には他の医師にはないやりがいやメリットも多くあります。もし公衆衛生医師を目指したいと思っている方や、これまで知らなかったけれど、興味があるという方はチェックしてみてください。

●ワークライフバランスが整いやすい
●多くの命を救う働きができる
●地域の医療ケアに携われる



公衆衛生医師の魅力(1)ワークライフバランスが整いやすい

公衆衛生医師は、土日祝休みかつ、夜勤や当直のような特殊な勤務形態も少ないのが特徴です。勤務時間も9時~18時のように一般的な会社員と近い場合が多く、臨床医師よりも働きやすいと言われています。

さらに、昇給制度が整っている職場も多く、臨床医師からスタートして課長や次長、部長を目指すことも可能です。役職に合わせて収入もアップしていくため、将来的なキャリアプランも描きやすくなるでしょう。

図表1
※厚生労働省「公衆衛生医師(保健所等医師)確保について」より

公衆衛生医師の魅力(2)多くの命を救う働きができる

地域住民全体へ働きかける仕事になるため、臨床医師時代よりも一度に多くの命に向き合うことができます。それは1人でも多くの命を救いたいと考える医師の方にとって、大きなやりがいとなるでしょう。

さらに、今起きている事象に向き合うだけではなくこれから起こるかもしれない事象についても予測・対応が必要となります。目の前の患者に起きている症状だけに向き合うわけではないという点についても公衆衛生医師ならではの特徴です。

健康を害さないように発信したり、予防医学に注力したりすることで、地域そのものを活性化させることができるでしょう。

公衆衛生医師の魅力(3)地域の医療ケアに携われる

勤務先は市町村の保健所になるため、地域の医療ケアに深く関わることができます。公衆衛生医師になる人のきっかけの1つに「自分が生まれた地元を支えたい。支援したい」といったものもあげられます。

公衆衛生医師になることで、地域の子どもから高齢者まで多くの人の健康をサポートできます。地域住民とのコミュニケーションが必要なシーンも多く、愛着のあるエリアであれば強いやりがいにつながるでしょう。

また行政に働きかけたり、人々が健康で居続けるために必要な仕組みを整えたり、大きなプロジェクトに関わる機会も増えます。地域への貢献が実績につながります。

公衆衛生医師の苦労する点(デメリット)

公衆衛生医師になり苦労する点を3つ紹介します。事前に把握しておくことで対策を打つことができ、転職後のミスマッチを減らすことが可能です。

●臨床現場から離れる
●医療関係者以外との関わりも多い
●希望の勤務地で働けるとは限らない



公衆衛生医師の大変なところ(1)臨床現場から離れる

臨床現場から離れるため、転職後「やっぱり現場で働きたい」と思うことがあるかもしれません。戻ることは可能ですが、ある程度時間があくと、ブランクがあるため、現場に戻った際に、苦労する可能性が高くなります。

臨床現場で働きたいのかそうでないのか、転職活動をする前に、現在の自分の希望を確認することが大切です。

公衆衛生医師の大変なところ(2)医療関係者以外との関わりも多い

公衆衛生医師は、医療関係者だけではなく行政の関係者や地域住民など多くの人と関わりを持つことが多いです。地域の健康について改善しなければならないと考えている人は必ずしも医療関係者に絞られないからです。

地域住民が長く元気でいることは、地域の経済を成長させ、新しい住民の呼び込みにもつながります。

住民の健康を守るために尽力している人は多岐に渡り、行政のトップや飲食店関係者、農業関係者なども対象に入ります。そうしたすべての部門をつなげ、調整していきながら地域を盛り上げることは時に大変だと感じることもあるかもしれません。

逆に、様々な人と関わることをやりがいだと思える方には向いている仕事かもしれません。

公衆衛生医師の大変なところ(3)希望の勤務地で働けるとは限らない

公衆衛生医師の募集は募集枠が少ないことも多いため、必ず希望のエリアで働けるとは限りません。もし「絶対にこのエリアでしか働きたくない」と思ったら対象エリアの募集にタイミングが合うまで待つことになるでしょう。

特定の地域で働きたいという強い希望がなく、「地方を活性化させたい」、「仕事内容そのものに興味がある」といった動機の方は、別地域で求人を探してみるのも1つの手です。

公衆衛生医師になるために必要なスキル・資格

公衆衛生医師になるために必要なスキルとして、次の3つのスキルがあげられます。

●医学と公衆衛生の知識
●行政の知識とマネジメント能力
●コミュニケーション能力と危機管理能力



医師資格・医学の知識はもちろんのこと、公衆衛生や疫学などの知識もあるとよいでしょう。疫学とは、個人単位ではなく集団をひとくくりとして見た時の病気の原因や流行、予防などについて考えるものです。

伝染病など多くの人に感染するような病について詳しかったり、過去のデータをもとに分析したり、そうした経験があればフルに活かせるでしょう。また行政とのやりとりも増えるため、行政の仕組みや知識、プロジェクトに関わるメンバーを統制するマネジメント能力も必要です。

他に必要なスキルとしては、「コミュニケーション能力」、「危機管理能力」などがあげられます。どちらも一般的なビジネススキルではありますが、公衆衛生医師のように幅広い影響力を持つ仕事内容ではより活用するシーンが多くなる能力になります。

公衆衛生医師になる上での注意点

公衆衛生医師を目指す上で、知っておいてもらいたい注意点が3つあります。

●募集案件が少ない
●様々なビジネススキルが求められる
●転職サポートを受ける必要がある



一般的な職種と比較しても案件が少なかったり、求められるスキルの幅が広かったりするため、しっかり読んで対策しておきましょう。

公衆衛生医師になる上での注意点(1)募集案件が少ない

1つ目の注意点は、募集案件そのものがかなり少ないことです。勤務地の規模感によりますが、公衆衛生医師は基本的に欠員補充で募集することが多いです。そのため、通年で募集していることは少なく、補充されたら終了する上に必ず毎年募集しているとは限りません。

応募方法ですが、基本的に保健所や市役所といった公的機関のホームページに募集ページが作られることが多いです。定期的にチェックして、期間内に応募するようにしましょう。また、転職先としてピックアップするエリアはなるべく複数上げることで転職成功率が上がるでしょう。

公衆衛生医師になる上での注意点(2)様々なビジネススキルが求められる

2つ目の注意点は、前述でも触れていますが面接では幅広いビジネススキルをチェックされる点です。いくら臨床医師として功績をあげていたとしても、行政や地域住民とスムーズにやり取りができたり、素早く課題を特定して対策を打てたりするような正確性・スピード感も求められます。

そのため営業職のように提案・交渉ができたり、大量の論文や知見からのデータ分析ができたり、臨床以外のスキルも必要です。

「地域に貢献したいから」という思いだけでは採用されない可能性もあります。事前準備や自己アピールの場でしっかり自身のビジネススキルについても伝えられるよう、まとめておくとよいでしょう。

公衆衛生医師になる上での注意点(3)転職サポートを受ける必要がある

公衆衛生医師はなかなか市場に情報が出回らないことが多い職種になります。そのため、いち早く情報を獲得し、詳しい内部情報を知りたいと思ったら転職エージェントのサポートを受ける必要があります。

エージェントによって強み・弱みも様々なので、できれば複数社登録しておくとよいかもしれません。その際、面談でヒアリングがあることが多いので、自身の経歴を洗い出しておき、スムーズに伝えられると効果的なサポートを受けやすくなるでしょう。

さらに、面接練習を依頼したり、スケジュールの調整をしてくれたりと転職全体のフォローもしてもらえます。現役の医師であれば多忙によりなかなか時間が取れない方も多いので、エージェントサービスを有効活用することで効率よく転職活動を進めることができます。

公衆衛生医師まとめ

公衆衛生医師は、地域住民の健康を丸ごとサポートできる、非常にやりがいのある仕事です。臨床現場とは違った経験を通して、視野が広がったり、大きく成長できたりするでしょう。

公衆衛生医師に興味がある方は、気になる地域のホームページをチェックしてみてください。募集要項や資格などは、エリアによって異なる場合があります。まずは、情報だけ集めたいという方であれば転職エージェントに登録し、情報収集をするのがおすすめです。

本記事を参考に、公衆衛生医師のメリット・デメリットなどを正しく把握した上で、納得のいく転職活動をはじめてみてください。

出典

厚生労働省 公衆衛生医師(保健所等医師)確保について キャリアパスや待遇
厚生労働省 公衆衛生医師の業務


執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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