医師のワークライフバランスの実態とは? 上手に取る方法をご紹介|ファイナンシャルフィールド

医師のワークライフバランスの実態とは? 上手に取る方法をご紹介

医師の方で「自分のライフワークバランスって大丈夫?」と疑問をおもちの方もいるのではないでしょうか。本記事は、下記についてお伝えしています。

・医師のワークライフバランスの必要性
・医師がワークライフバランスを上手に取るためのステップ



医師が、「仕事」と「ワークライフバランス」を上手に取る方法やポイントもご紹介します。

本記事を参考にすれば、医師も仕事とプライベートの両立ができるようになる可能性があります。ぜひ、参考にしてください。

医師のワークライフバランスの実態とは?

ワークライフバランスとは一言でいうと「仕事とプライベートの両方を充実させること」です。

内閣府の公式サイトでは、「ライフワークバランスとは誰もが仕事にやりがいを感じて働き、子育て・介護、自己啓発など個人の時間をもてる健康で豊かな生活」と説明しています。年齢、性別に関係なく働く人々全てが対象です。

ここではワークライフバランスにおける企業の取り組みや、個人でできることを解説します。

企業のワークライフバランスへの取り組み

ワークライフバランスの実現には、企業の積極的な取り組みが必要不可欠です。具体的には次のような例があります。

・フレックスタイム制
・短時間勤務
・長時間労働の削減
・テレワークの導入
・育児・介護休暇制度
・給休暇取得促進



企業がワークライフバランスを重視する環境を整備すると、従業員が制度を利用しやすくなります。また求職者へのアピールにもなり、離職率の低下や生産性向上も期待できるでしょう。

ワークライフバランスのために個人がすべきこと

「ワークライフバランス」は、企業だけの取り組みでは実現できません。個人がワークライフバランスの重要性を理解し、実践することが大切です。

具体的には、時間管理スキルや自己管理スキルの向上、仕事とプライベートのメリハリをつけることが求められます。誰もがワークライフバランスを実現できる社会を目指すには、ひとりひとりの取り組みが非常に重要です。

ワークライフバランスを実現するには、企業と個人、双方が協力し合うことが大切といえます。

医師のワークライフバランスが問題になっている5つの理由

ワークライフバランスが医師に必要な理由は5つあります。具体的には次のとおりです。

・勤務時間が長い
・不規則な生活になる
・休みが取りづらい
・医師の退職者が増える懸念
・医師の働き方改革の開始



医師は患者の命と健康を守るという特殊な職業であることから、長時間残業や夜勤が避けられない仕事です。しかし、近年では医師自身のワークライフバランスの必要性が問われるようになりました。

そして2024年4月からは医師の働き方改革が施行される予定です。

ここでは医師にもワークライフバランスが必要である理由を解説します。

医師のワークライフバランスが問題になる理由1:勤務時間が長い

「医師の勤務時間が長い」ことが1つ目の理由です。

労働時間が長いと集中力が低下し、医療ミスに繋がりかねません。また、長時間労働は、疲労やストレスが蓄積します。医師自身の健康が損なわれ、患者への適切なケアが難しくなる可能性も発生します。

勤務時間が長い職場は、ワークライフバランスが必要といえるでしょう。

医師のワークライフバランスが問題になる理由2:不規則な生活

2つ目の理由は、「医師の生活が不規則」なためです。

医師の多くは夜勤や当直、そしてオンコールがあり、生活が不規則になりがちです。医師には勤務医、臨床医、研究医がありますが、生活が不規則になる点は共通しています。

普段の勤務に加えて研修もあるため、自分のための時間確保は難しい環境であるといえるでしょう。注意力が必要な仕事だからこそ、バランスの取れた生活リズムが大切です。

医師のワークライフバランスが問題になる理由3:休みが取りづらい

「休みが取りづらい」こともワークライフバランスが必要な理由です。

医院によっては、緊急に呼び出しがあり、休日出勤が必要になるケースもあります。また、医師不足により1人の医師にかかる負担が大きくなっているため、休みが取りづらい医師がいるのも実情です。

医師が十分な休暇を取ることは、医師自身の健康維持と医療の質を守る上で大きな課題の1つです。

医療機関や行政は、医師が安心して休みを取れる環境を整備し、ワークライフバランスの改善に取り組むことが求められています。

医師のワークライフバランスが問題になる理由4:医師の退職者が増える懸念

4つ目の理由は、医師不足が過疎する懸念です。2040年に必要とされる医師の人数が1070万人に対して、確保が見込まれる数は974万人と推計されています。

医師の労働環境が過酷な状態であると、医師を志望する人が少なくなり将来は深刻な医師不足が懸念されます。今でも地方やへき地は、医師不足が深刻な状況です。

未来の医療を担う若手の医師がいなくなると、ますます深刻になるでしょう。将来の医師不足に歯止めをかけるために、医師のワークライフバランスを見直す必要があります。

医師のワークライフバランスが問題になる理由5:医師の働き方改革の開始

5つ目の理由は、2024年4月から医師の働き方改革が施行されるためです。

この制度によって医師のワークライフバランスへの取り組みが本格的に始まるでしょう。医師の働き方改革の目的は、主に下記です。

・長時間労働の改善
・ワークライフバランスの向上
・医療従事者の確保と育成



具体的には、適用条件によってことなりますが、時間外・休日労働時間が年960時間までと定められています。また年間5日の有給取得促進や医師・コメディカルへの業務移譲などが内容にもり込まれました。

医師の働き方改革は、政府で取り組む段階にあります。しかし、医療現場で実践されないと意味がありません。取り組みを実施するにあたっては、医療機関や医師自身が労働環境の改善に向けて行動することが大切です。

医師でもワークライフバランスが取りやすい診療科

医師の勤務時間は、診療科によって大きく異なります。勤務時間の少ない環境は、プライベートの時間を確保しやすいためワークライフバランスを取りやすいといえます。

厚生省が発表した2017年の「医師の勤務実態について」によると、最も勤務時間が少ない診療科は臨床検査科で46時間10分です。

図表1
勤務時間が少ないトップ3診療科目週当たり勤務時間
1臨床検査科46時間10分
2精神科47時間50分
3リハビリテーション科50時間24分
※厚生労働省 医師の勤務実態についてを基に筆者作成

医師がワークライフバランスを取りづらい診療科

勤務時間の多い診療科は、オンとオフを区別することが難しい傾向にあるため、ワークライフバランスが取りづらいといえます。図表2は厚生労働省の「医師の勤務実態について」を参考にした勤務時間の多い診療科です。

勤務時間の最も多い診療科は、外科の61時間54分です。

図表2
勤務時間が多いトップ3診療科目週当たり勤務時間
1外科61時間54分
2脳神経外科61時間52分
3救急科60時間57分
※厚生労働省 医師の勤務実態についてを基に筆者作成

性別の勤務時間を比較した場合、週に60時間以上働いている医師の割合は、男性41%、女性28%で週60時間です。 

医師がワークライフバランスを考えるタイミング

医師がワークライフバランスを考えるタイミングは、主に下記のとおりです。

・結婚
・出産・育児
・介護
・将来への不安を感じた時



詳しくお伝えします。

医師がワークライフバランスを考えるタイミング1:結婚

結婚は医師がワークライフバランスを考えるタイミングの1つです。結婚してもプライベートの時間を確保できなければ、夫婦間のすれ違いが多くなります。結婚生活が上手くいかない原因にもなりかねません。

結婚を機にワークライフバランスを考える医師がいるのは必然といえるでしょう。将来子供をもった場合に、生活スタイルが今のままで良いのかを見直すタイミングでもあります。

医師がワークライフバランスを考えるタイミング2:出産・育児

女性医師にとって出産や育児は人生の大きなイベントであり、ワークライフバランスを考えるタイミングです。

育児休暇は取れても、勤務が不規則で労働時間が長い環境は、仕事と家庭の両立が難しいと考える女性医師も多いでしょう。近年育児は女性だけでなく男性も参加する時代です。子供が生まれたのをきっかけに、在宅勤務を増やしたいと考える医師も増えてくるでしょう。

ただし、男性医師も育児休暇を取りづらいのは女性医師と同じです。性別に関係なく、出産や育児はライフワークバランスを考えるきっかけとなるでしょう。

医師がワークライフバランスを考えるタイミング3:介護

介護が発生するタイミングでも、ライフワークバランスを考える必要があります。介護は家族や親せきなど身近な人が行いますが、医師も例外ではありません。

近年では現役世代の人口も減少傾向にあるため、医療施設に頼りにくいのも懸念点にあげられます。 育児と介護が重なるケースもあり、医師にとっても柔軟な働き方のできる職場環境が必要になるでしょう。

医師がワークライフバランスを考えるタイミング4:将来への不安を感じた時

過酷な勤務や人間関係に疲れたタイミングは、ワークライフバランスを考えるきっかけになります。医師は重い責任が伴う職業です。

そのうえ過酷な勤務体制が続くと、やがて体力や気力に限界がきてしまうことが多いです。医師自身がうつ病やメンタルヘルスをひきおこす原因にもなりかねません。

・「このまま医師として長期的に勤務することは難しいかもしれない」
・「プライベートの時間も充実させたい」



こうした悩みのもと、将来のために自分の生活スタイルを見直す医師もいるでしょう。

医師がワークライフバランスを取るためのステップ

医師がワークライフバランスを取るためのステップは次の3つです。

・キャリアプランを考える
・時間管理能力を身につける
・オンとオフの境界線を区別する



詳しくお伝えします。

ステップ1:キャリアプランを考える

最初にキャリアプランを考えます。キャリアプランとは「自分がなりたい将来像を明確にする」ことです。キャリアプランを立てることで自分が今やるべきことを理解できます。

医師としてのキャリアとプライベートの幸福感を得るために必要なことが明確になるため、自分にどのようなライフワークバランスが必要なのか実感できるでしょう。

キャリアプランを考えるには、次の順番で考えるのがおすすめです。

図表3
手順内容実施内容
STEP1自己分析・自分の価値観、強み・弱み、興味・関心などを整理
・将来の目標や理想のライフスタイルを考える
STEP2情報収集・各医療機関、診療科のキャリアパスの情報収集
・医師転職サイトで求人の傾向をチェック
STEP3計画実行・目標達成に向けた具体的な行動計画
・計画実行と見直し
筆者作成

自分の生活の変化に合わせて、柔軟にキャリアプランを変更することが大切です。やり方が不安な方は、プロのキャリアコンサルタントに相談するのも良いでしょう。

ステップ2:時間管理能力を身につける

2つ目のステップは、時間管理能力を身につけることです。具体的には下記を実施すると良いでしょう。

・タスクの優先順位を付ける
・スケジュールの明確化
・業務の明確化
・時間の使い方の意識改革
・自己管理ツールの活用



自分がタスクに割り当てた時間が妥当だったかチェックすると、次第に仕事と生活のバランスが取れるようになります。

ステップ3:オンとオフを区別する

3つ目のステップは、オンとオフの境界線を区別することです。人の命を預かる医師にとって、仕事の時間とプライベートをはっきりと区別することは難しいかもしれません。

しかし、ワークライフバランスを実現するためには、仕事とプライベートの境界線をどこかで引くことが必要です。

医療現場では、医師の存在は24時間必要とされています。医師が求められる全てのことを全うするのは、結果的に自分自身を追い込んでしまう結果になりかねません。

オンとオフを区別することで、仕事とプライベートそれぞれの時間が充実します。

医師がライフワークバランスを取れ入れるためには、仕事の時間とプライベートの境界線をしっかり引く必要があるといえるでしょう。

医師がワークライフバランスを上手に取る6つの方法

医師がワークライフバランスを上手に取る方法をお伝えします。方法は下記6つのとおりです。

・労働時間の管理
・ワークライフバランスの重要性を認識する
・職場で話し合う
・転科する
・転職する
・開業する



1つずつ詳しくお伝えします。

医師がワークライフバランスを取る方法1:労働時間の管理

1つ目の方法は、労働時間の管理です。医師の仕事は長時間労働になりやすい職業といわれています。しかし、ワークライフバランスを取るためには、労働時間を適切に管理することが必要です。

具体的な方法は「法定労働時間を遵守する」「夜勤の頻度を減らす」などです。ただし、自分1人では取り組めないこともあるでしょう。まずは自分の労働時間を把握し、周囲に協力を求めていくことが大切です。

適切な労働時間で働くことは医師のライフワークバランスの向上とともに、医療の質の向上にも繋がります。

医師がワークライフバランスを取る方法2:医師自身がワークライフバランスの重要性を認識する

医師自身がワークライフバランスの重要性を認識することも、ワークライフバランスを上手に取る方法の1つです。具体的には下記のとおりです。

・仕事とプライベートの両立が健康維持に繋がる
・充実したプライベートは、仕事へのモチベーションに繋がる
・ワークライフバランスの改善は、医療現場全体の活性化に繋がる



医師がワークライフバランスを取る方法3:職場でワークライフバランスについて話し合う

3つ目のポイントは、職場でワークライフバランスについて、話し合うことです。自分の考えや意見を上司や同僚に伝え、話し合う機会を設けてお互いの意見を積極的に交わすことが大切です。

話し合う時には自分と意見が異なっても「相手を尊重する」「建設的な意見をだす」意識が欠かせません。職場でワークライフバランスについて話し合うことは、職場全体の意識改革や環境改善に繋がる可能性があります。

医師がワークライフバランスを取る方法4:転科する

転科することも1つの方法です。医師のワークライフバランスの取りやすさは診療科によっても異なるためです。

比較的ワークライフバランスの取りやすい診療科をまとめました。共通している点は緊急手術が少なく、夜勤やオンコールがほぼないところです。

図表4
働きやすい主な診療科特徴
眼科・精密検査や手術が必要な症例もある
・専門性の高い知識や技術が必要
皮膚科・美容皮膚科・自費診療が多い
・患者とのコミュニケーションが重要
・最新の医療機器や技術の習得が必要
耳鼻咽喉科・網羅する領域が幅広い
・アレルギー疾患や慢性疾患の診療が多い
精神科・精神疾患の診断と治療
・心理療法やカウンセリングなどの専門知識が必要
筆者作成

ただし転科すると年収が下がるケースもあるため、仕事に求める優先順位を明確にしてくことがおすすめです。

医師がワークライフバランスを取る方法5:転職する

転職することも、医師がワークライフバランスを上手に取る方法です。今の職場ではどうしても改善が難しい場合、転職をすることもワークライフバランスが改善する可能性があります。

ワークライフバランスを目的に転職する場合は、下記の点を満たしていると良いでしょう。

・労働時間の短い診療科
・夜勤やオンコールが少ない



ただし経営者の考えによっては、必ずしも上記だけを満たしていれば良いわけではありません。転職前に、次の点についてもしっかり確認しましょう。

・病院の労働環境
・休暇取得率
・医師同士の協調性



転職はワークライフバランスを改善するための有効な手段の1つです。ただし、安易に転職することはリスクを伴います。転職エージェントなどを活用し、情報収集を行い計画的に転職活動することがおすすめです。

医師がワークライフバランスを取る方法6:開業する

医師がワークライフバランスを上手に取得するための方法として、開業するのも1つの方法です。開業すれば営業時間や休日は自分で決めることができます。ワークライフバランスも整えやすいといえるでしょう。

また経営が順調であれば、勤務医より収入が上がる場合もあります。経営者となることで、医師の他にも経験値が増え仕事のやりがいも感じるでしょう。

一方で開業は全責任を1人で負わなければなりません。自分で働き方を決められる反面、大きな責任も伴います。慎重に判断することが重要です。

医師のワークライフバランスまとめ

医師がワークライフバランスを上手に取るための方法やポイントについてお伝えしました。

医師の働き方改革が始まることにより、今までより労働環境が整備され、医師の労働環境が改善される可能性が示唆されています。医師の労働環境が過酷な場合、医師自身の健康が維持できなくなります。

今後はそのような環境が改善され、医師もプライベートを充実させながら、仕事に集中できる労働環境が必要です。

ただし、ワークライフバランスが整った職場を手に入れるには、医師自身の認識を変える必要があるといえるでしょう。医療の質の向上のためにも、医師たちの心身の健康を社会全体で守っていくことが求められます。

出典

内閣府 「仕事と生活の調和」推進サイト 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章
厚生労働省 令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保
厚生労働省 医師の勤務実態について


執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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