フリーランス医師とは? 働き方や市場、年収、メリット・デメリットを紹介|ファイナンシャルフィールド

フリーランス医師とは? 働き方や市場、年収、メリット・デメリットを紹介

医師の働き方は大きく3種類に分けられ、自分で開業して病院を経営する「開業医」、特定の病院に勤め常勤で働く「勤務医」と、非常勤やスポット勤務を主とした勤務形態で働く「フリーランスの医師」がいます。

本記事では、常勤医師とフリーランス医師の働き方の違いや、フリーランスのメリット・デメリットについて解説します。

「フリーランス医師の方が稼げそう」「勤務医よりも自由に働けそう」といったイメージのあるフリーランス医師ですが、どのような特徴があるかきちんと理解することが重要です。

ぜひ最後まで読んで、キャリア形成の参考にしてみて下さい。

フリーランス医師と勤務医の違い

フリーランスの医師とは、病院などの医療機関に勤務している医師ではなく、個人事業主のような働き方をする医師のことを指しています。フリーランス医師と勤務医の違いを、「働き方」、「福利厚生」、「収入」から解説します。

働き方の違い

フリーランスと言っても、様々な働き方があります。主に、「非常勤」、「スポット」、「非常勤+スポット」の3種類です。

それぞれの特徴を図表1にまとめています。

図表1
働き方特徴
非常勤アルバイトのような働き方です。週2日や1日5時間といった曜日や時間を決めて働く方法です。いくつかの医療機関を掛け持つ医師も多いです。
スポット1日8万円などのように単発で働く方法です。健康診断などで多く募集されています。高時給の案件もありますが、長期的に働けないため融通が利く働き方です。
非常勤+スポット単発案件と、定期的な非常勤案件を組み合わせて働く方法です。収入と時間の自由度の両立がしやすいです。
筆者作成

たとえば、出産・育児をきっかけにフリーランスになった医師などは、家庭の用事などを踏まえて働くことができたり、自分に合うようカスタマイズした働き方ができたりします。

一方、勤務医は特定の医療機関と雇用契約を結び働く働き方です。給与は雇用契約時に定められているため、安定した働き方を希望する方に向いています。

たいていの場合は「週5日勤務」や「1日8時間勤務」など、長時間拘束されることが多いです。また、当直や夜勤などの働き方も発生しやすく、激務になってしまうケースもあります。

福利厚生の違い

フリーランス医師は、福利厚生面が充実していない場合が多いです。なぜなら、勤務医と異なり、社会保険に自分で加入する必要があり、賞与や退職金などの恩恵も受けられないためです。

勤務医であれば、厚生年金・健康保険・介護保険・雇用保険などは、医療機関が加入するよう手続きをしてくれ、支払いも給料天引きで行ってくれます。さらに、退職時は勤続年数によってまとまった「退職金」を受け取ることができる可能性が高く、老後の生活についても見通しが立てやすくなります。

フリーランス医師は自分で保険に加入・支払いをする必要があり、確定申告なども対応が必要になるでしょう。

収入の違い

フリーランスは自分が働いた分だけ収入が発生します。

一方、勤務医は固定給があらかじめ決まっており、たとえ少々休んだとしても給与に大きな変動はありません。そのため、安定した収入は勤務医の方が得やすいでしょう。

どちらの方が高収入になるのかについて比較します。勤務医の平均年収は2231万8000円(賃金構造基本統計調査 令和4年賃金構造基本統計調査)です。

もしフリーランス医師が、時給1万円で週5日、1日8時間働いたとします。

時給1万円×8時間×週5日(月20日勤務)=月収160万円
月収160万円×12ヶ月=年収1920万円



年収例として、1920万円稼げることになります。しかも残業をしていない状態で、休みも週2日取れていることを踏まえると、かなり良い収入と言えるでしょう。

仕事量は自分で調整することができるため、もっと稼ぎたいと考えれば仕事量を増やし収入をアップさせることもできます。

フリーランス医師の業界市場

フリーランス医師は、シェアが高い診療科や、働きやすい職場があります。詳しく解説しますので、「フリーランス医師に興味がある」という方は、業界について把握する参考にしてみて下さい。

フリーランスが多い診療科

フリーランスとして働く医師が多い診療科は次の5つです。

・麻酔科
・精神科
・放射線科
・産婦人科
・内科



一般的に「麻酔科医」が最も多くのフリーランス医師が働いているといわれています。医療機関としても仕事を外注しやすく、業界全体で麻酔科医の人手不足が起きているため案件が担保されているためです。

他にも、放射線科のようにスポット案件が多く発生している科や、精神科医が「産業医」としてフリーランス勤務しているケースも多いです。共通点は、ニーズに対して人手不足が加速していて、引継ぎが比較的しやすい診療科であることが挙げられます。

フリーランスが働きやすい職場

フリーランスの医師が歓迎される職場には5つの特徴があります。もし勤務先を探していて、営業をかけたい場合は参考にして下さい。

(1)医師不足に悩んでいる
(2)業務引継ぎがしやすい
(3)一度の診察や診療で完結する診療内容である
(4)専門性が高い
(5)業務量が多い



これらの条件に当てはまる職場は、求人募集をかけている可能性も高く、スムーズに採用されやすい傾向があります。特に、フリーランスの医師に求められているのは、負荷の高い業務を巻き取り、既存スタッフの負担を軽減させることです。

引継ぎがしやすい職場はそうした意味でも需要が高いでしょう。

フリーランス医師の年収相場

フリーランスの医師は、年齢や立場によって年収にばらつきがあります。

「Dr.アルなび」が行った「医師の年収に関するアンケート」によると、ボリュームゾーンは「年収 1000万円以上、1200万円未満」で、14.7%でした。

図表2
※Dr.アルなび 28%が年収1,800万円以上!「フリーランス医師」の年収事情を調査より引用

「年収 600万円~800万円未満」や「800~1000万円未満」の医師も10%ほどおり、「高収入」のイメージがあるフリーランス医師ですが、必ずしも収入が良いとは言えません。

なぜなら、「人間関係に疲れたのでゆったりと働きたい」、「キャリアよりプライベートを優先させたい」といった理由でフリーランスを選んでいる医師も多く、収入にこだわりがあまりない医師も多いためです。

フリーランス医師に向いている医師の特徴

フリーランス医師に向いている医師は、次の思考を持っている医師です。

・コミュニケーション能力がある
・いくつかの医療機関で経験を積みたい
・スケジュール管理が徹底している
・プライベートも両立させたい



フリーランスとして働くメリットとマッチしやすいため、向いていると言えます。1つずつ解説します。

フリーランス医師に向いている医師の特徴1:コミュニケーション能力がある

フリーランスの医師は、1つのところに属する訳ではないので、人間関係のしがらみからは解放されやすくなります。しかし、どこの職場でも渡り歩くことができるコミュニケーション能力が必要となります。

また、自分で仕事を取るためには、対人能力や交渉力も身に付けなければなりません。コミュニケーション能力が高く、仕事を取るための活動が苦ではない場合、フリーランス医師に向いているでしょう。

フリーランス医師に向いている医師の特徴2:いくつかの医療機関で経験を積みたいと考えている

フリーランス医師であれば、1つの医療機関に留まらないため、通常では経験できないほど多くの職場を体験しやすくなります。職場によって方針やスキルレベルが異なるため、求められる能力も幅広くなっていきます。

1つの能力を集中的に伸ばすよりも、いくつかの能力を身に付けたいと思っている方や、複数の職場を見て回りたいという方に適しています。

フリーランス医師に向いている医師の特徴3:スケジュール管理が徹底している

フリーランスは自分でスケジュール管理をしなければならないため、そうした管理をきっちりできるタイプの医師に向いています。1つのことに集中してしまうタイプよりも、マルチタスクで器用にこなせる医師の方が、立ち回りやすくなります。

フリーランスは自由な分、責任を伴います。仕事を得るのは時間がかかりますが、ルーズな対応を繰り返せばあっという間に、信頼を失ってしまうのです。「言われたことを期限内に行う」、「スケジュールのバッティングを防ぐ」など、マネジメントを当たり前にできる医師であれば問題ないでしょう。

フリーランス医師に向いている医師の特徴4:プライベートも両立させたいと考える医師

仕事はもちろん、プライベートも充実させたいと考える医師にも、フリーランスは1つの選択肢になります。フリーランス医師は仕事量の調整がしやすく、残業や休日出社なども自分でコントロールできるためです。

勤務医よりも制限がないため、子育て中の医師や、介護などを伴う医師にとっても融通を利かせながら働くことができます。

一般的に勤務医はどの診療科でも激務となることが多いです。そうした働き方に疲れてしまった方や、無理なく働きたいと思っている方は、フリーランスになることでバランスが取りやすくなります。

フリーランス医師のメリット

フリーランス医師には4つのメリットがあります。

・働き方に制限がない
・人脈を広げながら幅広い経験ができる
・人間関係の悩みが軽減する
・収入がアップする可能性がある



フリーランス医師のメリット1:働き方に制限がない

フリーランスは働き方に制限がないため、自分で選択しない限り、残業・休日出勤・夜勤・当直・オンコール対応から解放されます。また、週2日はA病院で働き、週3日はB病院で働き、「月曜日はかならず休みを取る」といったシフト調整もしやすくなります。

スポット案件であれば1日~1週間程度で終了する案件もあるため、「毎日勤務地が異なる」ケースもあるでしょう。こうした自由な働き方ができるところは、フリーランス医師ならではと言えます。

フリーランス医師のメリット2:人脈を広げながら幅広い経験ができる

定期的に勤務先を変えたり、複数の勤務先を兼任できたり、様々な場所で働くことができます。そのため、通常の勤務医よりも幅広い経験を積むことができます。

また、フリーランス医師として働いていくために人脈は非常に重要です。

多くの場所で働くことで人脈が広がり、紹介で仕事も獲得しやすくなります。もし将来開業したいと思った時に役に立つだけではなく、「やはり勤務医に戻りたい」と思った際にも大きく寄与してくれるでしょう。

フリーランス医師のメリット3:人間関係の悩みが軽減する

フリーランス医師は常駐しないため、人間関係のしがらみから解放されやすくなります。勤務医よりも業務的な会話が多く、スタッフと一定の距離を置いたままやりとりが可能です。

上下関係が厳しくなることもなく、人間関係のトラブルに巻き込まれにくくなります。人間関係が煩わしいとに悩んでいる医師は、フリーランスになることで負担を軽減させられるでしょう。

フリーランス医師のメリット4:収入がアップする可能性がある

前述でも紹介したように、フリーランスとして高収入案件を継続して行うと、勤務医よりも収入が高くなる可能性があります。コツコツ営業活動しながら、案件を多く捌けるようになれば高収入が期待できるでしょう。

しかし、そのためには、専門性の高いスキルを身に付けたり、人脈を広げながら案件を取り続けたりする必要があります。収入が上がる可能性はありますが、楽に稼げる訳ではないため、注意して下さい。

フリーランス医師のデメリット

フリーランス医師におけるデメリットも理解しておきましょう。事前に把握しておくことで「こんなはずではなかった」と後悔せずに済みます。

・安定性に欠ける
・事務作業が増える



フリーランス医師のデメリット1:安定性に欠ける

フリーランス医師は、「収入」と「業務量」の、どちらの側面から見ても安定性には欠けています。自分が求人に応募したり、営業活動を行うなどしなければ仕事がなくなってしまうため、月によって収入にばらつきが生まれる可能性が高いです。

さらに、勤務先の都合により急に案件が終了になることもあります。自分の希望に必ずしも沿う案件ばかりではなく、休みが増えすぎてしまうことや条件が良くない案件を対応することもあるでしょう。

自分で予定を決められる反面、計画的にスケジューリングしていくことが求められます。

フリーランス医師のデメリット2:事務作業が増える

フリーランス医師は、確定申告・税金の支払い・社会保険への加入など事務作業は全て自分で行う必要があります。勤務医であればそうした事務作業は勤務先が巻き取ってくれ、診察・治療のみに専念できたかもしれません。

しかし、フリーランスは自己管理が必要です。そのため、通常の勤務医とは別の事務作業が増える可能性が高くなります。

外注するとしても費用がかかる上に、「完全に丸投げ」という訳にもいきません。お金の流れを把握し、必要な支払時に困ることがないよう、管理に手間がかかる点はデメリットとなります。

フリーランス医師のキャリアプラン

フリーランス医師になることはゴールではありません。ここからは、実際にフリーランス医師になった後、どういったキャリアを歩む医師が多いのか紹介します。以降を参考に、自身のキャリアプランについて考えてみてください。

フリ―ランス医師のキャリアプラン(1)プライベートを重視する

1つ目は医師としてのキャリアを伸ばすよりもプライベートでやりたいことや、やらなければならないことに注力していくことです。医師だから必ずしも多くの患者を救い、高いスキルを身に付け続けなければならないということはありません。

働き方が多様化してきたように、医師としてのキャリアも多様化しています。激務によって身体を壊したり、大切な人との時間を失ってしまったりするくらいなら、フリーランスとして無理なく働き続ける方が、結果的に多くの患者に寄与することもできます。

ただし、いつまでも同じ能力のままでは、仕事を取り続けることはできなくなっていきます。自分のスキルに固執することなく、新しいことは柔軟に吸収していく姿勢が必要でしょう。

フリ―ランス医師のキャリアプラン(2)勤務医に戻る

2つ目は、フリーランスとして活躍したのち、勤務医に戻ることです。やはり、勤務医は長期的に安定しやすい点が魅力です。

「一生、非常勤案件とスポット案件を獲得しながら生活する」ということを考えた時に、フリーランスとして1人で走り続けることは簡単なことではありません。業界でも引く手あまたの有名な医師になることができれば可能かもしれませんが、どちらにせよ「いつ切られてもおかしくない」という状況下に置かれ続けることになります。

実際に、若いうちは都心部でフリーランス医師として稼ぎ、落ち着いた年齢になってから地元の医療機関で働いている医師も多いです。

フリ―ランス医師のキャリアプラン(3)開業する

3つ目は、独立して開業することです。こちらは、フリーランス医師として、営業活動をしたり、人脈を広げたりすることがとても役に立ちます。

開業する場合、「経営」についても学ぶ必要があります。しかし、フリーランスは自分だけの法人を経営しているようなものになるため、そうしたスキルも自然と身に付きやすくなるでしょう。

ただし、フリーランスは、組織マネジメントや学会への参加、技術習得の機会を作りにくいことが考えられます。「フリーランスとして働きながらゆくゆくは開業したい」と思っている方は、積極的に知識・スキル習得の場を設ける必要があります。

フリーランス医師がキャリアアップに必要なこと

フリーランス医師がもし「キャリアアップしたい」と思ったらどのようなことが必要でしょうか。働きながらできることを4つ紹介します。

フリーランス医師がキャリアアップに必要なこと1:専門性を高める

フリーランス医師としての価値を高めるためには、「専門性を高める」ことが重要です。他の医師との差別化も重要なポイントとなります。

フリーランスに依頼する仕事は、「誰でもできる」仕事と、「専門性が高いため担い手がいない」仕事の2つに分けられます。

引継ぎが簡単で「誰にでもできる」仕事ばかりを受けていれば、ニーズに左右されやすく、キャリアアップや収入アップには繋がりにくいです。希少な症例を扱う、実績を積むなど専門性を磨くことで、高時給案件を獲得しやすくなったり、人からの紹介を受けやすくなったりします。

フリーランス医師がキャリアアップに必要なこと2:最新トレンドを把握しておく

フリーランス医師になると、業界情報を得る機会が減る場合が多いです。学会や新しい器材・手法についてのセミナーに参加するなど、積極的に「情報をアップデート」していきましょう。

勤務医であれば自然と得られる技術や知識が、フリーランスの場合、日々の努力が重要になります。逆に言えば、努力した分、他の医師との差別化に繋がり、案件も獲得しやすくなります。

資格取得や学会の参加料、医学書の購入まで全て自費となってしまいますが、自己投資だと思い、惜しまない方が良いでしょう。忙しい中でも向上心を持って取り組むことがキャリアアップに繋がっていきます。

フリーランス医師がキャリアアップに必要なこと3:スキルアップに励む

フリーランス医師の場合、「今の自分ができる仕事」だけやっているとあっという間に案件がなくなっていきます。継続して案件を獲得するために、できる範囲を増やす「スキルアップ」に励みましょう。

また、「できる仕事」と同じくらい「努力すればできる仕事」にも挑戦してみましょう。新しい学びや努力により成功体験を積めれば、キャリアアップにも大きく寄与します。

スキルとは、手を動かす技術的な側面もあれば「営業力」や「適応力」といったコミュニケーション能力のことも指します。どの職場でもすぐに馴染んで幅広い業務に関与できる医師を目指しましょう。

フリーランス医師まとめ

フリーランス医師は、労働環境を整えたい方にとって、融通が利かせやすいため適した働き方といえます。介護や子育てのように、両立したいことがあっても、残業や休日出社をセーブして働くことができます。

しかし、収入が不安定になったり、キャリアアップが難しくなったりと良い面ばかりではないことも理解しておきましょう。メリットばかりに目を向けて飛びつくことなく、しっかりと比較検討した上でチャレンジすることが大切です。

出典

政府統計の総合窓口(eーStat)賃金構造基本統計調査/令和4年賃金構造基本統計調査一般労働者職種 Dr.アルなび 28%が年収1,800万円以上!「フリーランス医師」の年収事情を調査

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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