医師から保険社医へのキャリア転換|生命保険業界に転職するメリット・デメリット|ファイナンシャルフィールド

医師から保険社医へのキャリア転換|生命保険業界に転職するメリット・デメリット

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病院勤務から一般企業勤務である「保険社医」へのキャリア転換を考えているが、どのようなメリットやデメリットがあるのだろうかと気になっている方もいるかもしれません。

保険社医は一般企業に社員や業務委託として勤務する形となり、病院勤務と比較するとワークライフバランスが整いやすい傾向にあります。一方で、勤務先となる生命保険会社は民間企業であり、将来性などについては未知の部分があります。

本記事では、医師から保険社医へのキャリア転換について解説させて頂きます。

保険社医とは?

保険社医とは、生命保険会社に雇用されて働く医師のことを指します。彼らは診察医や査定医と呼ばれることもあります。

公益財団法人生命保険文化センターの「生活保障に関する調査」によると、2022年に生命保険に加入している方は約8割です。保険社医は医師の資格を活かして民間企業で活躍することができ、社会からの需要も非常に高い職業です。

保健社医の業務内容

保険社医の業務内容は、大きく分けると以下のとおりです。

●診査業務
●引受け査定業務
●支払査定業務

それぞれについて解説します。

保健社医の業務(1)診査業務

保険社医の業務には、診査業務が含まれています。診査業務とは、保険加入を希望する方々の健康診断を行うことです。

具体的には、視診、触診、血圧測定、検尿、問診などを行い、加入者の健康状態を把握し、リスクを評価します。審査は、来社して行う場合もありますし、往診の形を取る場合もあります。保険社医が診査できない場合には、嘱託医を通じて健康状態を把握することもあります。医師としての経験が必要となる傾向にあります。

保健社医の業務(2)引受け査定業務

引受け査定業務は、生命保険に加入を希望する方に対して、提出された書類を基に保険契約の受け入れ可能性や条件を査定する重要な業務です。

引受け査定の業務では、加入希望者が提出した人間ドックの結果や健康管理証明書などの書類を詳細に検討します。また、受け入れ可否の判断をするだけではなく、受け入れる場合にはどれくらいの保険料を徴収するか等の算定業務もここに加わります。

保健社医の業務(3)支払査定業務

支払査定業務は、生命保険の支払時に発生する業務です。たとえば、生命保険や医療保険、がん保険などで保険加入者が亡くなった場合や医療サービスを利用した場合に行われる業務です。

具体的には、死亡保険請求用診断書や入院・手術等証明書(診断書)などの提出された書類を基に、保険金支払の正確性や妥当性を査定します。

保険社医が医学的な情報を収集し、査定業務の担当者に対してアドバイスを提供することになります。

医師から保険社医になるには? キャリア転換に資格は必要?

医師が保険社医になる際には、医師免許以外の特別な資格は必要ありません。転職を希望する医師は、サラリーマンの転職活動と同じように、希望する生命保険会社の求人を探し、履歴書や職務経歴書などを送付して選考を受けることになります。

資格要件が医師免許のみであっても、一定年数以上の臨床経験を求められる場合がよくあります。医師としての臨床経験は、保険商品への理解や、保険契約希望者とのコミュニケーションに役立つ可能性があり、そのため一定年数以上の臨床経験を求められます。

保険社医に向いている人はどのような人?

保険社医に向いている人は、以下のとおりです。

●組織の一員となることに抵抗がない人
●医療現場の仕事から遠ざかることに抵抗のない人
●コミュニケーション能力が高い人

それぞれについて解説します。

保険社医に向いている人(1)企業で働くことに抵抗がない人

保険社医に向いている人は、企業で働くことに抵抗感がない方です。保険社医が転職先として選ぶ生命保険会社は民間企業なので、営利を追求しなければなりません。

一社員として、企業の営利のために働くことができる方は、保険社医に向いていると言えます。

保険社医に向いている人(2)医療現場の仕事から遠ざかることに抵抗のない人

医療現場から離れることに抵抗のない方は、保険社医の仕事に向いているかもしれません。

保険社医の業務は主に診断や診査などであり、医療施設の業務とは異なります。そのため、と直などがなくなるため、勤務時間の拘束は軽減される可能性が高いですが、手術や治療をすることはなくなってしまいます。医師として患者さんと直接関わりたいという方は再検討した方がよいかもしれません。

保険社医に向いている人(3)コミュニケーション能力が高い人

保険社医は、加入希望者との面談や企業内のさまざまな部署とのやり取りを通じて経験を積むことになります。そのため、コミュニケーション能力の高い人材が求められます。

加入希望者の話を詳しく聞き出し、適切な査定を行うことや、医師としての高い専門性を活かしながら、社内の人間関係を上手く構築するスキルも重要となります。

保険社医として働くメリット

保険社医として働くメリットは、ワークライフバランスが整うことや、新しい人脈を築くことができる等のメリットがあります。

ここでは、保険社医として働くメリットについて解説します。

保険社医として働くメリット(1)ワークライフバランスが整う

保険社医として働く大きなメリットは、「ワークライフバランスが整う」ことです。なぜなら、生命保険会社に社員として雇われることになるからです。

保険社医は、生命保険会社に社員として雇われることもあり、規則的な勤務時間となります。一般的に、正社員は休日や勤務時間がしっかりと設定されています。保険社医は、病院での医師の不規則な勤務体系よりも、仕事とプライベートのバランスを取りやすく、オンオフの切り替えがしやすい環境です。

診査や査定業務を担当しながらも、当直やオンコールの負担が少ないため、ワークライフバランスを重視できる職業です。特に、医師としての知識や経験を活かしながら、決められた勤務時間や休暇を確保できるため、ワークライフバランスを重視する医師にとって魅力的な選択肢となっています。

保険社医として働くメリット(2)新しい人脈を築くことができる

保険社医として働くメリットは、「新しい人脈を築くことができる点」です。医師としての専門性を活かしながらも、これまで勤務してきた医療現場とは異なる場所で働くことで、さまざまな部署や職種の人たちと交流することができます。

たとえば、保険社医は、診断のために来社する契約希望者と接する機会があります。また、民間企業で、いわゆるサラリーマンとして仕事をすることになるため、新しい仕事の進め方やビジネスに関する知識に触れることができるので、刺激を受けることができます。

これまでと異なる環境で働くことになり、勤務当初は戸惑うこともあるかもしれませんが、働いていく中で、新しい働き方を見つけることができるでしょう。

保険社医として働くメリット(3)生命保険会社の福利厚生が充実している

生命保険会社は、「福利厚生が充実している」傾向にあります。なぜなら、生命保険会社は金融関連の企業であり、大企業が多いという特徴があるためです。

金融業は高度な専門性を求められる業界であり、競争を生き抜くために社員の待遇を良くし、優秀な人材を採用するために福利厚生を充実させている傾向にあります。

また、大企業は、資本力が大きく社員の福利厚生を充実させる余裕があります。大企業の社員特有の福利厚生を活用して、充実した会社員生活を送れる可能性が高いです。

保険社医として働くメリット(4)これまでの人間関係から離れることができる

保険社員として働くメリットは、「これまでの人間関係から離れることができる」という点にあります。

厚生労働省の令和5年8月4日の「労働安全衛生調査(実態調査)」によると、人間関係に関するストレスを抱えている人は、26.2%となっています。

働く人の約4人に1人が人間関係にストレスを抱えているということです。いま抱えている人間関係に問題があり、そこにストレスを抱えている方にとっては、民間企業への思い切った転職はこれまでの人間関係を一変させるチャンスかもしれません。

環境が変わることにより転職当初は、慣れない職場にストレスを感じる可能性もありますが、結果的に精神的に楽になる可能性もあります。

保険社医として働くメリット(5)訴訟のリスクが低い

保険社医として働くメリットとして、「一般病棟で医師として勤務する場合よりも、医療事故による訴訟のリスクが低い」ことが挙げられます。

一般社団法人医療事故調査・支援センターが2023年3月に発表した年報によると、患者から医療事故ではないかという相談が2022年には1612件あったという報告でした。

医療事故を起こせば訴訟を起こされ損害賠償請求されることや刑事責任を問われる可能性があります。

保険社医としての主な業務は診察や診査です。そのため、命に関わるような手術を行うことや、危機的状況下の患者を診ることは基本的にないため、訴訟リスクは低いといえます。

一般病棟で医師として勤務する場合に比べて、保険社医は一社員という扱いであり、基本的には従業員として保護される立場となります。

訴訟リスクが気がかりな方は、保険社医を選択することも良いかもしれません。

保険社医として働くデメリット

保険社医として働くデメリットとして、キャリアアップの難しさや、企業の一社員として働くことになるといったデメリットがあります。

ここでは、保険社医として働くデメリットを解説させて頂きます。

保険社医として働くデメリット(1)医師としてのキャリアアップが難しくなる

保険社医として働くデメリットとして、「キャリアアップの難しさ」があります。なぜなら、保険社医として働くことにより、医療現場での仕事から離れることになるためです。

特に、臨床経験を積むことが難しくなるため、もしも途中で病院に戻って患者の治療にあたる仕事をしたい、と考えたときに感覚を取り戻すのに、苦労する可能性が高くなります。

保険社医として働くデメリット(2)企業文化に合わない可能性がある

保険社医として働くデメリットは、企業文化に合わない可能性があるということです。

生命保険会社は一般企業なので、病棟で勤務していた時とは違う、企業文化へ馴染むことを求められる可能性があります。企業によっては独特の社風が存在しており、馴染めなければ勤務し辛くなる可能性があります。

転職を考えている場合には、現在の職場への不満と、転職先での職場風土などをしっかりと確認することでミスマッチを避けることが重要となります。

保険社医として働くデメリット(3)保険業界の将来性への不安は残る

保険業界は金融業であり、大手企業が多いという特徴があります。しかしながら、いつまでも業績が安泰かどうかは誰にも分かりません。

たとえば、少子高齢化社会に突入し、人口が減少することによって、生命保険業界そのものの存続が危うくなる可能性も0とは言えません。また、デジタル保険の台頭により、保険料の安い保険商品なども出てきています。

生命保険業界は安定している業界ですが、将来性については注視する必要があります。ただし、将来性に関しては、例えば、個々人の運動習慣などに基づいて保険料を細かく設定する商品を開発するなど、業界的に積極的に成長をはかっており、まだまだ未知の状況です。

保険社医として働くデメリット(4)業務の単調さ

保険社医の業務は、「単調さが伴う」ことがデメリットです。なぜなら、保険社医の主な業務内容は審査業務や引受け査定業務、支払査定業務などの3つに集約されるからです。

診査業務では、保険加入希望者の健康状態確認を行い、引受け査定業務では、書類を基に加入の妥当性を判断します。支払査定業務では、保険金請求に対する妥当性等を判断します。

決まったルールに従い、仕事を遂行することが求められるため、同じ作業を繰り返すことになり、特定の手続きに従って業務を進める必要があります。

保険社医まとめ

今回は、保険社医へのキャリア転換にあたってのメリットとデメリットなどを解説しました。

保険社医は生命保険会社等に雇用される医師のことを指しています。主に入社後は、診査業務、引受け査定業務、支払査定業務を担当することになります。

企業によっては、若干の業務内容の違いもあるため、自分に合った企業選びが大切です。メリットは定時が定められているため、ワークライフバランスが一般的な病院勤務よりも整いやすいことです。また、医師経験を活かしつつ、民間企業で働くことができるため、貴重な経験を積むことができます。

一方でデメリットとしては、医師としてのキャリアアップが制限される可能性があることや、生命保険会社の将来性への不安、業務の単調さなどが挙げられます。メリットとデメリットを考慮し、ご自身にとって最も良い選択をしましょう。

出典

公益財団法人 生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計 生命保険に加入している人はどれくらい?
厚生労働省 令和4年「労働安全衛生調査(実態調査)」の概況
一般社団法人 日本医療安全調査機構 医療事故調査・支援センター 2022年 年報
e-Govポータル 明治二十九年法律第八十九号 民法

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部

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