執筆者: 星野宏
正社員登用制度を利用すれば、学歴や職歴は特に重視されず、工場勤務の期間工としての仕事ぶりをベースに大企業の正社員になる道が開かれるのがポイントです。
今回は正社員を目指すメリットやデメリット、正社員登用制度の流れ、正社員登用の実績を誇る企業や志望動機の書き方などを詳しく解説します。
期間工と正社員の雇用形態の違いとは?
期間工は契約期間の定めのある有期契約ですが、正社員は契約期間の定めがありません。そのため正社員になると、過去の判例と労働契約法第16条により、解雇されづらくなります。ここでは雇用形態の違いをふまえて、期間工が正社員になるメリットとデメリットを解説します。
期間工が正社員を目指すメリット
期間工から正社員になるメリットは、雇用が安定し社会的な信用を得られる点にあります。景気の動向に左右されるのが期間工のツライところです。景気がよければ仕事に困ることもなく残業もたっぷりあるため、しっかりと稼ぐことができます。しかし不景気になると途端に募集自体がなくなり、先の見通しを立てるのが難しくなるのが期間工です。
一方で正社員になると、簡単に解雇されなくなります。これは過去の労働者のたたかいを通じた数々の判例と労働契約法第16条があるためです。2020年は新型コロナウイルスの影響で期間工の求人は激減しました。募集を再開しているメーカーもありますが、誰もが不安な状況に変わりはありません。雇用を安定させたいなら正社員のほうがいいでしょう。
期間工は期間限定で稼げますが、社会的な信用という点では正社員より低いのが実情です。雇用が安定していない期間工は、結婚やローンを組む際に「しんどい」思いをすることがあります。自由より安定を求めるようになったら、期間工より正社員です。
期間工が正社員を目指すデメリット
期間工から正社員になるデメリットは大きく3点あります。それらは仕事上の責任を負う、複雑な人間関係に巻き込まれる、割り切れない環境に身をおくことになる、です。
期間工の仕事は技術や資格を持たない、初めての人でも取り組める仕事が中心ですが、正社員になると責任やプレッシャーが加わります。ミスをすると会社に損害を与えてしまう、といった責任やプレッシャーを感じながら仕事に取り組める人でないと正社員はツライでしょう。
期間工に「報告・連絡・相談」以外の難しいコミュニケーション能力は求められていません。しかし正社員になると、円滑な業務を遂行するために積極的に上司や同僚とコミュニケーションを取る姿勢が求められます。
イヤなことがあっても、期間工は期間が定められているため、期間満了まで頑張ればいいという割り切りが可能です。その一方、正社員になるとイヤなことがあった際に、「正社員を投げ出すのはもったいないのでは?」と仕事を辞める選択を 簡単にできなくなります。
期間工から正社員というキャリアパス
期間工を募集しているメーカーでは、正社員登用制度を設けている場合があります。この正社員登用制度を利用するのが、期間工から正社員になるキャリアパスです。ここでは正社員登用制度と、多くの正社員を登用した実績のある企業を紹介します。
期間工から正社員登用制度を利用する
期間工から正社員になるためには、正社員登用制度を利用します。正社員を目指して期間工になるなら、大前提として、正社員登用に積極的に取り組んでいるメーカーの期間工に応募しましょう。
期間工の正社員登用制度は「やる気と頑張り次第」で正社員を目指せるのが魅力です。期間工としての仕事ぶりが、正社員になるための重要な鍵になることに留意しておきましょう。つまり期間工として採用されれば、無条件に正社員登用制度を利用できるわけではありません。
無遅刻・無欠勤、「報告・連絡・相談」はもちろんあいさつや積極的なコミュニケーション、イベントや研修の参加、作業の工夫や改善の提案などに取り組んでみましょう。
期間工から正社員登用の実績のある企業を紹介
ここでは期間工から積極的に正社員を登用した実績のあるメーカー例を挙げます。
●2020年12月期の四半期で106名を正社員に登用しています。制度を始めてから累計で1,572名( 2020年12月現在)の期間工が正社員になった実績があるのがスバルです。2020年下期からは正社員登用のチャンスを年2回から4回に増やすなど積極的な姿勢が目立ちます。
●2015から2019年まで5年間の正社員登用実績は、なんと1,620名です。
●過去5年間で641名の登用実績を誇ります。勤続1年以上で受験資格が発生、最大4回受験可能と公表しているので参考にしましょう。
正社員と期間工の仕事内容は同じ?
正社員登用試験に合格したあと、期間工の仕事と比べて大きな変化があるわけではありません。基本的には期間工のときと同じ作業をします。ただし正社員になると頑張り次第で班長へ昇進したり、ほかの希望部署への配属がかなったりするかもしれません。そのため正社員として働きだしたら、積極的に工場内を把握するように、より多くの作業工程を担えるようになるための努力は必要です。
正社員登用制度の流れとは?
正社員登用試験は、希望すれば期間工なら誰でも受けられるわけではありません。まず応募資格が必要です。ここでは正社員登用試験の応募資格や、試験の内容について解説します。
正社員登用試験の内容とは?
応募資格を得るためには、一般的に期間工として契約期間を更新しなくてはなりません。応募資格は目安として1年以上在籍してから得られるので、正社員を狙う人は留意しておきましょう。
その上で上司から期間工としての働きを認められることが重要です。正社員登用試験を受けるには、上司からの推薦状や許可が必要な企業が少なくないからです。次に筆記試験や面接を受けることになります。
試験の内容は、国語と算数の能力をみるSPI試験の場合が多いようです。リクルートマネジメントソリューションズが開発したSPI試験は、就職活動していれば一度は受ける可能性があるほどよく利用されている試験です。
正社員へステップアップした元期間工のインタビューをみても、正社員になるのは楽なものではありません。適当な気持ちで受かるのは難しいといえます。
しかし正社員登用に積極的なメーカーで期間工になるなら、正社員登用を目標に掲げてやる気と頑張りをみせる勤務態度で働くのも懸命な策のひとつです。
正社員登用試験で志望動機の答え方
正社員登用試験には面接もあります。面接に備えて志望動機を事前に考えておきましょう。その際に志望動機の答え方の参考にしたいのが、期間工を募集するメーカー公式サイトに掲載された先輩たちへのインタビューです。
正社員に登用されている多くの人の中から、選ばれた数人がインタビューに答えています。メーカーが望む正社員はこういう人たちなのだな、という参考になるでしょう。
期間工から正社員を目指す本音は「雇用の安定」かもしれませんが、面接で志望動機を聞かれて「安定」したいから、という答え方はおすすめではありません。
もっと会社に貢献したい、役立ちたい、成長していきたいという意欲にあふれたインタビューを参考に、志望動機を準備するといいでしょう。なかには上司の協力を得て、面接の練習をした人もいます。このように上司や仲間の助けを得られる人材が、企業が求める人材だという点も留意しておきたいポイントです。
期間工から正社員を目指すなら、やる気のある勤務態度で働こう
工場勤務から、雇用の安定や社会的信用を得られる正社員になる道もある期間工。日本有数の大企業で正社員になるチャンスです。ただし正社員を目指す道は、簡単ではありません。正社員を目指すなら、期間工として働くと決めたときからやる気と頑張りをみせることが大切です。
正社員登用に積極的に取り組んでいるメーカーの期間工に応募しましょう。実績を公表していなければ、正社員登用に積極的ではない可能性があります。正社員登用試験の応募資格を得るためにも、周りとのコミュニケーションにも留意しながら、期間工の仕事に取り組みましょう。
監修:星野宏
・キャリアサポートオフィス process代表 キャリアコンサルタント
・キャリアコンサルティング技能士1級
・公認心理師
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