「残業代は半世紀前の基準!?」教員を苦しめる「教職調整額」って?
配信日: 2022.06.09 更新日: 2024.10.10
この記事では、半世紀前の基準ともいわれる「教職調整額」について説明していきます。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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「教職調整額」の概要と制定の背景
「教員の超過勤務手当を支給しない」ことは、昭和23年の給与制度改革によって最初に決まりました。当時、教員の給与は一般の公務員より1割程度有利であり、教員の勤務時間が単純に測定できないことから取られた措置でした。その後、一般の公務員の給与が改定されたことで教員給与の優位性が失われ、超過勤務が常態化したことから、多くの都道府県で時間外勤務手当の支給を求める訴訟が提起されます。
文部省(当時)は、実態を把握するために昭和41年に全国的な勤務状況調査を実施。昭和47年には現在の「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」が施行し、新たに教職調整額を支給する制度の設置と、超過勤務手当は支給しないことを決めました。
「教職調整額」は給料の4%です。この数字は昭和41年の調査結果に基づき、1週間平均の超過勤務時間が長期休暇などを除いた年44週で行われた場合を想定して算出されたものです。当時1週間の超過勤務時間は、小学校で1時間20分、中学校で2時間30分、平均で1時間48分でした。
「教職調整額」は時代に合ってない?
令和3年に日本教職員組合が小中学校、高校、特別支援学校の教員7014人から回答を得た調査によると、持ち帰り残業を含めた実質的な時間外労働の平均(月当たりの換算)は、小学校で90時間16分、中学校で120時間12分となりました。これは、過労死ラインとされる月80時間を大きく上回っています。1日の休憩時間の平均は小学校で11.7分、中学校で15.5分、3人に1人は休憩が全く取れないという事態です。
ここで「教職調整額」4%算出の前提となった昭和41年のデータと比較してみましょう。昭和41年の超過勤務時間を月当たりに換算しますと、小学校で5時間20分、中学校で10時間。令和3年には小学校で約17倍、中学校で約12倍に増加していることが分かります。調査の前提が異なるので一概に比較することはできませんが、それでも超過勤務時間が大幅に増加していることは明らかです。
「教職調整額」は公務員の残業代と比べても著しく低い
教員の給与は一般の公務員の給与と比較して調整されてきた経緯があります。総務省の「令和2年地方公務員給与の実態」によると、全地方公共団体における一般行政職の超過労働的手当ての平均は3万2027円で、平均給与月額に対する割合は8%であり、「教職調整額」4%の2倍です。
また、平成27年の「地方公務員の時間外勤務に関する実態調査」によると、本庁と出先機関等を合わせた全体の時間外勤務時間数の平均は月13.2時間、年間158.4時間。中学校教員の月当たり換算の時間外労働が120時間12分ということを考えますと、教員は一般の公務員と比べていかに残業時間が多く、超過勤務手当が少ないかが分かるでしょう。
学校外の教育活動や家庭訪問、学校外の自己研修など、教員の労働時間を単純に測定できないのは今も昔も変わりません。しかし、50年以上前に定められた4%の「教職調整額」は、現状に合っておらず、改定を求める多くの声が上がっています。
時代と労働状況に見合った手当の支給を
教員の超過勤務手当に当たる「教職調整額」は、半世紀以上前の昭和41年の実態調査を元に定められたものです。当時と比べますと、教員の時間外労働は過労死レベルを超えるほど大幅に増加している一方で、4%という「教職調整額」の割合は一般公務員の超過勤務手当と比較しても著しく低い水準になっています。今後は、時代と労働状況に見合った手当の支給が求められるでしょう。
出典
文部科学省資料4‐2教職調整額の経緯等について
日本教職員組合 「2021年 学校現場の働き方改革に関する意識調査」
総務省地方公務員の時間外勤務に関する実態調査結果
総務省令和2年地方公務員給与の実態
総務省平成27年地方公務員給与の実態
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部