フレックスタイム制における残業時間とは?残業になる場合と、その計算方法を解説

配信日: 2022.08.30 更新日: 2024.10.10

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フレックスタイム制における残業時間とは?残業になる場合と、その計算方法を解説
働き方の多様化が進む中、フレックスタイム制を導入する企業もあります。ただ、フレックスタイム制は残業の扱いが複雑で、残業代が一切出ないものと誤解してしまう可能性もあります。
 
本記事では、フレックスタイム制においてどのような場合に残業代が出るのか、そしてその計算方法について解説します。
齋藤たかひろ

執筆者:齋藤たかひろ(さいとう たかひろ)

2級ファイナンシャルプランナー

フレックスタイム制とは

フレックスタイム制とは、労働者が日々の始業・終業時刻、労働時間を基本的に自らが決められる勤務形態のことです。「9:00~18:00」といった一般的な定時制とは異なり、あらかじめ定められた総労働時間の範囲内で、1日の労働時間を配分できます。
 
これにより、保育園や幼稚園の送迎を夫婦で分担したり、ラッシュ時を避けて通勤したりと、生活と仕事の調和を図りながら働けるというメリットが期待できます。
 

フレックスタイム制における残業時間の取り扱い

フレックスタイム制における残業時間の取り扱いは、定時制とは異なります。ここでは、その基本的な考え方について解説します。
 
(一般的に「残業」は企業が定める所定労働時間を超える時間を意味します。ただ、法定労働時間内の残業に対して割増賃金を支払うかは企業によって異なるため、本記事では法定労働時間を超える「時間外労働」に焦点を絞って解説します)
 

労使協定で定められる必須事項とは

フレックスタイム制を導入する企業では、以下の4つの事項が労使協定で定められています。
 

●対象となる労働者の範囲(「全従業員」「課ごと」「個人」などのいずれも有効)
 
●清算期間(フレックスタイム制において労働者が労働すべき時間を定める期間で、最長3ヶ月)
 
●清算期間における総労働時間(所定労働時間。労働契約で定められた、労働者が働くべきとされている時間)
 
●標準となる1日の労働時間(清算期間における総労働時間を所定労働日数で割った時間。年次有給休暇を取得した場合に、この時間分を労働したものとして取り扱う)

 

法定労働時間の総枠とは

労働基準法では、法定労働時間は原則1日8時間、1週40時間までと定められています。フレックスタイム制においてはこの定めに関わらず、清算期間における「法定労働時間の総枠」を超えた場合に時間外労働としてカウントされます。「法定労働時間の総枠」の計算式は以下のとおりです。
 
法定労働時間の総枠=1週間の法定労働時間「40時間(※)×清算期間の暦日数÷7日」
 
暦日数は月によって異なるため、法定労働時間の総枠も清算期間ごとに異なる結果となります。なお、時間外労働を行うには、労使間で36協定の締結が必要となるほか、25%以上の割増率で割増賃金が支払われます。
 
(※)特例措置対象事業場(常時10人未満の労働者を使用する事業場で、商業、映画、演劇業、保健衛生業、接客娯楽業)の場合は、44時間。
 

フレックスタイム制における時間外労働の計算方法

フレックスタイム制における時間外労働の計算方法を、「清算期間が1ヶ月以内の場合」と「清算期間が1ヶ月超〜3ヶ月以内の場合」に分けて説明します。
 

清算期間が1ヶ月以内の場合の計算方法

この場合、「清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間」が時間外労働となります。
例えば、次の例で考えてみます。
 
・暦日数30日で、実労働時間が180時間であった場合
 
このとき、法定労働時間の総枠は、40時間×30日÷7日=171.4時間です。そのため時間外労働は、180時間-171.4時間=8.6時間となります。
 

清算期間が1ヶ月超〜3ヶ月以内の場合の計算方法

この場合には、以下の時間がいずれも時間外労働としてカウントされます。
 

(1) 1ヶ月ごとに、週平均50時間を超えた労働時間
(2) 清算期間を通じて、法定労働時間の総枠を超えて労働した時間((1)を除く)

 
次のような例を挙げて考えてみます。
 
・清算期間が6月・7月・8月の3ヶ月、実労働時間が180時間・230時間・150時間であった場合
 
まず、(1)について週平均50時間となる月間の労働時間(50時間×各月の暦日数÷7日)を求めると、6月は214.2時間、7月と8月はそれぞれ221.4時間となります。
 
よって、実労働時間が週平均50時間を超えているのは、7月の230時間ー221.4時間=8.6時間となります。これは7月の時間外労働としてカウントします。
 
次に、(2)について法定労働時間の総枠を求めると、40時間×(30日+31日+31日)÷7日=525.7時間。
 
清算期間における実労働時間は180時間+230時間+150時間=560時間であったので、ここから(1)でカウントした8.6時間を除くと、(560時間-8.6時間)-525.7時間=25.7時間となります。この25.7時間は、最終月(8月)の時間外労働としてカウントします。
 

フレックスタイム制の残業計算を理解しておこう

清算期間が1ヶ月超のフレックスタイム制では、このように計算方法が複雑になります。最近では、勤怠システムで労働時間が記録・管理されているので、計算方法をあまり意識する必要はないかもしれません。ただ、システムも万能ではなく、それを利用する人間もまた間違いを犯す可能性があるため、基本的な計算の考え方をしっかり理解しておきましょう。
 

出典

厚生労働省 フレックスタイム制のわかりやすい解説&導入の手引き

e-Gov法令検索 労働基準法

 
執筆者:齋藤たかひろ
2級ファイナンシャルプランナー

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