月給「23万円」の派遣社員ですが「月給24万円で無期雇用派遣にならないか」と打診されました。どうしたらいいですか?
配信日: 2024.02.24 更新日: 2024.10.10
そこで、一般的な派遣社員から無期雇用派遣へ転換することについて考えてみました。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
派遣社員としてより安定した生活を望むなら無期雇用派遣になるべき
一般的に「無期雇用派遣」とは、契約期間の決まっていない派遣社員のことをいいます。そのため、派遣先での派遣期間を気にすることなく正社員のように働きつづけられ、派遣先との契約が終わっても派遣会社との契約は続くので、次の派遣先が決まるまで毎月の給与のうち一定額までは保障されることが一般的のようです。
加えて、一般的な派遣社員における「いつ契約が切られるか分からない」「同じ派遣先で3年までしか働けない」といったデメリットを解消することができ、さらには時給がアップすることも多いようです。2022年に行われた、一般社団法人日本人材派遣協会「派遣社員WEBアンケート調査結果」によると、およそ24.6%の方が「無期雇用派遣」として働いていることが分かりました。
もし、月給23万円の有期雇用派遣から月給24万円の無期雇用派遣になるという場合、賃金の上昇する可能性や、長期間安定して働ける可能性がある点を踏まえると、無期雇用派遣となっておく方がいいでしょう。
無期雇用化の目玉には、交通費の存在もある
無期雇用派遣となると、交通費が支給される可能性が高いという点も見逃せません。
一般的な派遣社員は時給制であり、かつ時給に交通費が含まれていることも多いです。交通費は別途支給されていれば、本来非課税です。しかし、交通費も時給に含まれていると、交通費相当額も課税対象となり、損をしていることになります。
その点、無期雇用派遣であれば交通費は別途支給されることが一般的であるため、毎月の交通費が非課税になります。
仮に毎月の交通費が1万円であり、そのうち15%が所得税と住民税の課税対象とされると考えてみると、交通費が時給に含まれているかどうかで、年間1万8000円も差がつくことになります。
無期雇用派遣は正社員ではない
注意すべきこととして「無期雇用派遣は正社員ではない」という点があります。無期雇用とはいえあくまで派遣社員に留とどまり、派遣先を転々としていくことになります。派遣先や派遣元の正社員らのように「スキルを積んでいずれ管理職へ」という道は難しく、あくまでも派遣社員として働きつづけることになるわけです。
そのため、この先の給与が30万円、40万円と大幅に上がっていくことは期待できないでしょう。実際、ボーナスの額は正社員より少ないことなどもあるようです。それどころか賞与の支給がないということもあり得ます。
無期雇用派遣は正社員のようにいわれることもありますが、正社員ではないと意識し、給与の額以外の雇用条件を確認することが大切です。
長期間働き続けられるとは限らない
また、無期雇用派遣のデメリットでは「無期雇用派遣になったからといって、長期間働けるとは限らない」という点が挙げられています。無期雇用派遣は、派遣先によって勤務先や業務内容など諸条件が変わり、常に自分の希望する条件の派遣先で働けるとは限りません。
それによって、せっかく長期間働けるようになっても、条件が合わなくなって退職せざるをえないこともあるでしょう。
「雇用派遣の定めのない無期雇用派遣でも、正社員と同じように安定して働けるわけではない」ということを知っておきましょう。
まとめ
「期間の定めなく働くことができ、月給は23万円から24万円に上がる」という条件が提示されると、無期雇用派遣になった方が、一見するといい話のように思えるかもしれません。しかし、無期雇用となってもあくまでも立場は派遣社員であり、正社員ではありません。
長期的な目線で見ると、大掛かりな給与アップは考えづらい上、派遣先を転々としながら続けることになり、長期間働きつづけられるとは限りません。
もし、給与アップを条件に無期雇用派遣を打診されたときは、給与額だけでなく、自身が望む働き方を実現できるのかよく考え、決定するようにしてください。
出典
一般社団法人日本人材派遣協会 2022年度派遣社員WEBアンケート調査結果
執筆者:柘植輝
行政書士