就職したばかりですが体調不良が続いており、この先が心配です…。もし出社できなくなったら給料はどうなりますか？

新社会人になり、慣れない環境や上司・先輩との新たな人間関係に戸惑っている方もいるのではないでしょうか。もし、うまく適応できず休まざるを得ない場合、健康はもちろん収入のことも心配ですね。本記事で、どのような対応策があるのか解説します。

療養時期に応じた収入の変化

心身が疲弊して限界になると、当然ながら仕事どころではなくなります。メンタルヘルスの不調時にもっとも大事なのは、十分な療養期間と適切な治療です。しかし、会社を休む期間が長くなると、お金の不安は日増しに大きくなります。
 
休み始めたあと、会社や公的保険からどのような給付があるのか、時系列で確認してみましょう。
 
図表1

休み始めた当初は、年次有給休暇あるいは病気に利用できる休暇があれば、基本的に100％の賃金が支給されます。医師の診断を受け療養指示が出されると、まとまった期間休むことになります。その間に休暇がなくなり、今度は欠勤や休職となる場合、多くのケースは無給です。
 
そのため、今度は健康保険の「傷病手当金」が生活の支えになります。傷病手当金の支給中に無事復職できればよいのですが、もし、支給が終了しても、症状が障害年金の要件を満たせば、障害認定日以降に受給できます。
 
このように、主に「諸休暇」「傷病手当金」「障害年金」の3つが、療養生活中の家計の支えとなります。それぞれについて詳しくみてみましょう。
 

会社からの収入

年次有給休暇は、入社から6ヶ月間の継続勤務と8割以上の出勤率という2つの要件を満たすと、まず10日の年次有給休暇が付与されます（※1）。勤続年数に応じ、最大で年20日が付与されますが、会社によっては法定以上の日数が付与されることもあります。
 
いずれにしろ新入社員の付与日数は限られますから、すぐに休暇を使い果たし欠勤や休職（無給）になる可能性が高いといえます。休暇だけで十分な療養期間に充てるのは、残念ながら難しいでしょう。
 

健康保険からの給付

有給休暇がなくなると、次に頼りになるのは健康保険の傷病手当金です（※2）。傷病手当金は、会社員などが病気やケガのため勤務先を休み、報酬を受けられない場合に支給されます。支給水準は、おおむね月収の3分の2です。
 
また、受給期間は支給開始日から支給日（欠勤日）を通算し、1年6ヶ月です。
 
実は、欠勤中でも社会保険料の支払い義務は残ります。無給期間は本人負担分を会社が立て替えて納めているため、後日会社に戻し入れしないといけません。また、会社経由で傷病手当金が支給されるケースでは、振込時にすでに保険料等が控除されています。
 
このように、給料の3分の2といっても、手取り額はさらに低くなります。奨学金や各種ローンの返済を優先したやりくりが必要となります。
 

公的年金からの給付

療養が長期にわたる場合、公的年金から障害年金を受給できることがあります（※3）。保険料の納付期間等の受給要件を満たしている場合、初診日から1年6ヶ月経過した日（障害認定日）において定められた障害の状態にあるときは、障害基礎年金と障害厚生年金が支給されます。
 
つまり、傷病手当金を最大1年6ヶ月受給し終える頃までに、対応する障害等級の状態であれば、障害年金の受給につなげられるということです。
 
なお、障害基礎年金と障害厚生年金の両方が支給されるのは、障害等級表における1級と2級です。厚生年金のみ3級の障害年金あるいは障害手当金（一時金）が支給されます。
 

傷病手当金がポイント

早期治療で早く回復すればよいのですが、もし時間がかかる場合、傷病手当金が当面の頼りになる公的給付といえます。
 
加入する健康保険組合によっては、給付額や支給期間の上乗せといった付加給付があります。また、公務員は共済組合から傷病手当金が支給されますが、支給水準や支給期間が健康保険組合より若干手厚いのが特徴です（※4）。
 
一方心配なのは、休職規定によっては傷病手当金の終了より早く休職期間満了を迎え、退職となる可能性があることです。
 
なお、傷病手当金受給中に退職した場合、退職日までに継続して1年以上の被保険者期間がある場合は、退職後も引き続き残期間を受給できます。ただ、休職期間満了が入社から1年以内だと要件を満たせず、退職と同時に傷病手当金も切れてしまうことになります（※5）。
 
自社の休暇・休職制度、傷病手当金の付加給付について、早めに調べておくことをお勧めいたします。
 

出典

（※1）厚生労働省　リーフレットシリーズ労基法39条　年次有給休暇の付与日数は法律で決まっています
（※2）全国健康保険協会 協会けんぽ　傷病手当金
（※3）日本年金機構　障害年金
（※4）地方職員共済組合　勤務を休み報酬が支給されないとき
（※5）全国健康保険協会 協会けんぽ　傷病手当金について　Q6：傷病手当金を受給していましたが、会社を退職することになりました。退職後の期間についても傷病手当金を申請できますか？
 
執筆者：伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員