入社10ヶ月で“転職”を決意! 会社が「中退共で毎月5000円」積み立ててたのに、先輩に「勤続1年未満だと1円も出ない」と言われショック…「計5万円」は本当に“掛け捨て”に? 例外になるケースも確認
会社員の退職金制度として中小企業に広く使われているのが、中小企業退職金共済、いわゆる中退共です。加入できる企業の基準は、業種によって異なりますが、製造業や建設業など一般業種であれば、常用従業員300人以下、または資本金3億円以下の会社が対象になります。
掛金は、事業主が月額5000円から3万円までの16種類から従業員ごとに選び、全額を会社が負担します。従業員本人の給与から天引きされるわけではなく、新しく加入した場合は掛金の半額、従業員1人あたり上限5000円を1年間、国が助成する仕組みまであります。
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「11ヶ月以下」なら退職金は1円も出ない
ところが、この制度には短期離職者にとって手痛い落とし穴があります。独立行政法人勤労者退職金共済機構によると、掛金納付月数が11ヶ月以下で退職した場合、退職金も解約手当金も一切支給されません。
しかも、それまで会社が納めてきた掛金が事業主に返還されることもありません。
つまり、入社10ヶ月で退職すれば、会社が積み立ててくれた掛金は文字通り掛け捨てになります。会社が月5000円を積み立てていたとすれば、10ヶ月分の5万円が丸ごと消える計算です。
得をするのは3年7ヶ月目から
12ヶ月を超えれば支給対象にはなりますが、それで安心とは言い切れません。掛金納付月数によって、受け取れる額はおおむね次のように変わります。
・掛金納付月数が11ヶ月以下:退職金や解約手当金は支給されない
・12ヶ月以上24ヶ月未満:退職金は支給されるが、掛金の総額を下回る
・24ヶ月以上42ヶ月(3年6ヶ月)未満:掛金相当額
・43ヶ月(3年7ヶ月)以上:運用利息が上乗せされ、掛金総額を上回る
会社が月5000円を積み立てていて、1年半勤めて退職した場合、納めた9万円をそのまま受け取れるわけではありません。実際に得をし始めるのは、3年7ヶ月を過ぎてからです。
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転職先も中退共なら、“3年以内”の通算という抜け道
ただし、転職先の会社も中退共に加入していれば、通算制度を使って以前の掛金納付月数を引き継げる可能性があります。これは、退職から3年以内に転職先で被共済者になり、通算の申し出をすれば、前の会社で積み立てた期間と後の会社の期間を合算できる制度です。
合算した結果、納付月数が12ヶ月以上になれば、11ヶ月以下だった前職の分も含めて退職金の対象になります。
特定業種退職金共済制度からの移動や、一度退職した人が同じ会社に復職した場合にも、同様の通算が認められるケースがあります。なお、転職先が中退共に加入していなければこの通算は使えず、前職の分はそのまま掛け捨てで終わります。
退職金は“待っていても”振り込まれない
もう1つ見落としやすいのが、退職金の受け取り方です。中退共の退職金は、会社を経由せず、本人が直接、機構に請求する仕組みになっています。
会社から退職金共済手帳を受け取り、退職金(解約手当金)請求書に必要事項を記入し、住民票などの必要書類をそろえて提出しないと、いつまでたっても振り込まれません。
請求できる期間は、退職日から5年の時効があり、放置すれば受け取る権利そのものを失うので注意が必要です。転職を決める前に、次の3点は確認しておきましょう。
・自分の会社が中退共に加入しているか、加入していれば掛金は月にいくらか
・退職までの掛金納付月数が11ヶ月以下になっていないか
・転職先も中退共に加入しているか、加入していれば退職から3年以内に通算の申し出ができるか
住宅ローンや子どもの教育費を抱えながら転職先を探している人ほど、目先の給料や条件に気を取られがちです。しかし、たった1ヶ月の違いで会社が積み立てた掛金がまるごと消えるかどうかが決まります。
また、受け取れる場合も自分で請求しなければ振り込まれません。退職日を決める前に、いま一度、人事や総務に確認しておきましょう。
出典
独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共) 加入の条件
独立行政法人勤労者退職金共済機構 中小企業退職金共済事業本部(中退共) 掛金
執筆者 : 西村和樹
2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、第一種/第二種電気工事士、医療情報技師、2級ボイラー技士、ボイラー整備士
