コロナ禍以降、ほぼ在宅勤務でしたが、原則週3日出社する方針に変わりました。通勤手当は以前のような取り扱いに戻るのでしょうか
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち会うなかで、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後はそれらの経験を仕事に活かすとともに、日本FP協会の無料相談室相談員、セミナー講師、執筆活動等を続けている。
テレワークは減少しつつも定着してきた
国土交通省の「令和7年度テレワーク人口実態調査」によると、雇用型就業者のうち、これまでにテレワークを経験したことがある「雇用型テレワーカー」は25.2%でした。コロナ禍前の令和元年度が14.8%だったのと比べると高い水準になっています。
一方、現在の働き方を見ると、テレワークといっても出社と在宅勤務を組み合わせる形に落ち着きつつあります。
令和7年度の「直近1年間のテレワーク実施率」では、コロナ禍以降の実施率が全国で低下傾向であることがわかりますが、首都圏では28.1%と突出しています。全国平均は16.8%でしたが、前年度から比べ1.2%増加するなど底堅い動きを示しています(※1)。
このように、「原則在宅勤務」は少なくなりましたが、在宅勤務を残しながら出社日数を増やす勤務形態が、はっきりと根付いてきているといえるでしょう。まさにそのような流れの中で、今回のように「原則週3日出社」になると、気になるのが通勤費の扱いです。
通勤手当は「給与」か「実費」か
まず押さえておきたいのは、通勤手当は税金と社会保険でルールが異なることです。所得税では、原則として月15万円まで非課税です。自動車通勤などは別途定められています。
一方、社会保険では、通勤手当は標準報酬月額の算定対象になります(※2)つまり、所得税では非課税でも、社会保険料の計算には含まれるということです。
また、割増賃金を計算する際は、原則として通勤手当は算定対象から除外されます。ただし、通勤距離や実際の費用に応じて支給されることなど、法令上の要件を満たす必要があります。
したがって、
所得税:一定額まで非課税
社会保険:原則として社会保険料算定の対象
割増賃金:原則として割増賃金算定の対象外
という違いを理解しておくことが大切です。
定期券が何日で得になるかは路線によって異なりますが、例えばJR東日本の場合、シミュレーションすると、6ヶ月定期券の場合、目安として出社が週3日を超えると定期券のほうが安くなります(※3)。
つまり会社側から見ると、立替払い精算より、平均週3日超出社する見込みなら、定期券代を支給したほうが支出を抑えられるということです。ただし、鉄道会社や乗車区間によって割引率が異なるので、上記は一例とご理解ください。
週3日出社で社会保険料は変わるのか
前項で、通勤費は「原則として社会保険料算定の対象」と書きましたが、テレワーク中の出社時通勤費は、その日の労務提供地がどこかによって扱いが変わります。
例えば、労働契約上の労務提供地が「自宅」で一時的に出社した場合、その交通費は原則として実費弁償となり、社会保険の算定には含まれません。立替交通費と同様の扱いです。
一方、労務提供地が「会社」であれば、自宅から会社までの交通費は原則として通勤手当となり、社会保険の報酬に含まれます(※4)。
したがって、今回のように会社が「原則週3日出社」とするケースでは、単純に出社日数だけで社会保険上の扱いが決まるわけではないということです。
また、社会保険料への反映有無は、保険料負担の多寡だけでなく、将来の厚生年金額にも影響します。
通勤手当の税務上の非課税限度額や社会保険上の「報酬」の扱いは、法律・制度によって定められています。一方、実際にいくら支給するのか、雇用契約上の勤務地はどこか、定期券にするのか、出社日ごとの精算にするのかは、会社によって異なります。
まずは自社の制度や方針を確認することが、家計と老後の生計への影響を把握する第一歩になります。
出典
(※1)国土交通省 令和7年度 テレワーク人口実態調査 調査結果(令和8年3月)
(※2)日本年金機構 年金Q&A 標準報酬月額の対象となる報酬に、通勤手当は含まれるのですか
(※3)東日本旅客鉄道株式会社 ネットde定期
(※4)日本年金機構 年金Q&A 在宅勤務・テレワークを導入し、被保険者が一時的に出社する際に要する交通費を事業主が負担する場合、この交通費は標準報酬月額の算定基礎となる報酬に含まれますか
執筆者 : 伊藤秀雄
FP事務所ライフブリュー代表
CFP®️認定者、FP技能士1級、証券外務員一種、住宅ローンアドバイザー、終活アドバイザー協会会員
