居酒屋バイト中“レジ締め”で「1万円」が不足! 店長に「足りない分は給料から引くね」と言われたそうですが、息子は“時給1100円”なので「9時間のタダ働き」に…責任を取って支払うしかないのでしょうか?
今回のケースでは、居酒屋でアルバイトをしている大学生の息子が、閉店後のレジで1万円の不足が発生したため、店長から給料で穴埋めすると告げられました。時給1100円で働いているため、1万円は約9時間分の給料に当たります。
・1万円÷1100円=約9.1時間(1万円を稼ぐのにかかる時間)
ここでは、給料から不足分を引くことが法律で認められるのか、ミスをした場合に全額を払う必要があるのか、店長に何を確かめればよいのかを整理します。
2級ファイナンシャルプランナー技能士
給料から不足分を勝手に引くことは、労働基準法で認められていない
給料は、その全額を労働者に支払うのが労働基準法の原則です。厚生労働省は、不良品を出すごとに賠償金を給料から天引きする例について、賃金の全額払いの原則に反するため認められない、と説明しています。
さらに、「ミスをしたら1個につき100円」のように、損害が出る前に賠償額を決めておくことも、違約金の定めや損害賠償額の予定として労働基準法が禁じる行為です。「レジが合わなかったら不足分は給料から引く」という店の決まりも、同じです。
税金や社会保険料のように法律で決まっている控除や、労働者と結んだ協定に基づく控除は別ですが、店長の一存で不足分を給料から差し引くことはできません。差し引かれた場合は、その分の給料を請求できます。
ミスで損害が出ても、全額を払う必要があるとは限らない
では、給料からの天引きではなく、店が損害の賠償を求めてきた場合はどうでしょうか。厚生労働省は、裁判例の解説で、仕事上のミスで会社に損害を与えても、労働者が当然に損害賠償の責任を負うものではないとしています。
責任を負うのは、故意や重大な不注意があった場合などで、その場合も損害の公平な分担という考え方から、信義則上相当と認められる範囲に限られます。最高裁は、タンクローリーの事故で会社が従業員に求めた賠償について、損害の4分の1を超える請求は許されないと判断しました。
・1万円÷4=2500円(判例の割合を今回のケースに当てはめた場合の上限の目安)
居酒屋のレジは、複数の店員が触ることが多く、不足の原因が誰にあるのかを店側が特定して証明する必要があります。息子が故意に抜き取ったわけでなければ、1万円の全額を負担する理由はないでしょう。
店長に言われたときに、確かめることと伝え方
まず、不足が出た日に誰がレジを担当し、どの時点で金額が合わなくなったのかを店側に確かめます。レジの記録や防犯カメラで原因を調べるのは店の仕事であり、原因が分からないまま1人に負担させることはできません。
次に、同意書や念書へのサインを求められても、その場で書かないことが大切です。労働者が自分の意思で同意した相殺は認められる場合があるため、一度サインをすると後から争いにくくなります。
伝え方は、「給料から引くことは労働基準法で認められていないと聞きました。原因を調べたうえで、改めて話をさせてください」と、事実を確かめる形にすると角が立ちにくいでしょう。
それでも引かれた場合は、都道府県労働局の総合労働相談コーナーや労働基準監督署に相談しましょう。
まとめ
今回のケースでは、居酒屋のレジで1万円が合わず、店長が給料からの天引きを告げました。給料は全額払いが労働基準法の原則で、不足分を事前の取り決めで給料から引くことは認められていません。
ミスで損害が出た場合でも、労働者が全額を負担するとは限らず、判例では損害の4分の1までとされた例があります。原因の調査を店に求め、同意書にはその場でサインせず、必要なら労働基準監督署に相談することをおすすめします。
執筆者 : 高橋祐太
2級ファイナンシャルプランナー技能士
