50代になったとき、夫婦円満で過ごせるために
配信日: 2021.01.25 更新日: 2024.10.10
長年連れ添うご夫婦では、不仲になってしまう場合もあります。その原因の1つに、お金の問題があるのかも分かりません。
ファイナンシャル・プランナーとしては、お金の価値は変わっていくため、額面だけ見ていてはいけないと感じています。子どもが独立したあとでも夫婦仲良く暮らせるために、お金の価値についてご夫婦で知っておきましょう
執筆者:吉野裕一(よしの ゆういち)
夢実現プランナー
2級ファイナンシャルプランニング技能士/2級DCプランナー/住宅ローンアドバイザーなどの資格を保有し、相談される方が安心して過ごせるプランニングを行うための総括的な提案を行う
各種セミナーやコラムなど多数の実績があり、定評を受けている
失われた30年でも物価は上昇している
日本では高度経済成長期後にバブル崩壊となり、1990年以降、低成長が続いていました。
この期間は「失われた20年」といわれていますが、低成長が現在まで続き、今では「失われた30年」ともいわれています。内閣府が公表している1994年から2019年までの国内総生産(GDP)では、25年間で約23.4%と大きな成長となっていないことが分かります(※1)。
国内の経済が停滞していても、海外の国の成長などに伴う製造コストの増大や、貨幣価値の目減りで物価は上昇しています。総務省の統計によると、2015年を100とした消費者物価指数の数値は、2019年が101.8となっています(※2)。
結婚して子どもが独立するまでの期間を25年と考え、2019年から25年前の1994年を見ると、消費者物価指数は97.7です。これを割り戻すと、1994年から2019年で約104.2となり、4%程度の物価上昇となっています。
現在の低金利では、実質の損失
日本銀行が公表している普通預金の店頭表示金利の平均は、2007年10月から2021年1月4日時点までで0.001%となっています(※3)。これは100万円を預けて1年間で10円の利息になるということですが、20.315%の税金が差し引かれ、実際の利息は8円です。
この利率に対して物価上昇は25年で4.2%となっていたため、年利で考えると0.1646%の物価上昇率となります。100万円の預貯金は1年で8円しか増えませんが、物価は1年で1646円増えたことになり、実質1638円のマイナスになっています。
1年間では1638円の差ですが、20年後を考えると100万円のものが104万2000円となり、預貯金では160円しか増えないので、4万1840円も損失になっているともいえます。この例は100万円ですが、大学4年間の費用として500万円くらいは考えておきたいので、500万円とした場合は20万9200円も不足することになります。
元本確保は表面的に家計を苦しめる
ご結婚をされたばかりのときや子どもが小さいうちは家計に余裕があるご家族も多いと思います。
しかし、例えば賃貸アパートに住まわれているご家庭では、子どもが大きくなるにつれて居住環境が手狭になり、マイホームの購入を考えるケースも増えてくるのではないでしょうか。そうなると、収入が増えているご家庭では問題ありませんが、収入が増えていない場合でも支出は増えていくため、だんだん貯蓄ができなくなってしまう可能性が出てきます。
そんなときに、子どもの教育費として学資保険のように元本確保型ではありますが、ほとんど増えない教育費の準備を選んでしまうと必要になった時期に不足があることが分かり、学資保険以外からお金を用意しなくてはいけなくなります。不足に対して損失ではないと感じられる方もおられるでしょうが、この不足分こそが実質の損失となっています。
夫婦仲が悪くなるのは金銭面だけの問題ではないけれど
50代近くになると夫婦もマンネリ化し、離婚をしないまでも夫婦仲が悪くなるケースもあるようです。お金の問題だけが主な原因ではないでしょうが、家計の収支のバランスが悪くなることで少しずつストレスが溜まり、夫婦仲が悪くなるという可能性もあるのではないでしょうか。
そう考えると、一番幸せな時期ともいえる新婚のときに、お金の価値に対してのお互いの理解をしっかりと深め、元本確保型商品だけではなく実質で損失とならない資産形成の方法をご夫婦で考えていく必要があるのではないでしょうか。
まとめ
今回、資産形成についての相談時に良く聞く「リスクがあるのはNGなので」という奥さまの言葉から、元本確保型商品を選ぶことで将来の教育費や老後資金の不足に陥らないために知っておいていただきたいことを紹介してみました。
資産運用は損失を被るギャンブルのようなものと思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、お金の価値や資産運用に対して理解ができれば、お金の価値を踏まえた貯蓄方法を早い段階で始められます。早いうちから貯蓄を始めると月々の負担も少なく済み、リスクの低い運用方法でも目標に到達できる可能性は高くなります。
ぜひ、元本確保型商品ではないお金の準備方法をご夫婦で検討していきましょう。
出典
(※1)内閣府 国民経済計算(GDP統計)
(※2)総務省統計局 消費者物価指数(CPI) 時系列データ
(※3)日本銀行 主要時系列統計データ表 預金種類別店頭表示金利の平均年利率等(週次<月曜基準>)
執筆者:吉野裕一
夢実現プランナー