「世帯年収850万円の4人家族」vs「年収300万円1人暮らし」なら、ゆとりがあるのは“年収300万円”!? SNSでは「そりゃ少子化止まらん」「扶養控除もない」の声続々…実際の“手取り率・金額”を比較
世帯年収850万円は余裕があり、年収300万円は苦しいと思う人も多いでしょう。ところが、手取りから家賃と生活費を差し引くと、見え方は変わります。本記事では、手元に毎月いくら残るかを試算しました。
CFP
SNSで話題に!「扶養控除がない」の声も
話題になったのは、夫婦と中学生以下の子ども2人の4人家族(世帯年収850万円)と、年収300万円の1人暮らしを並べた投稿です。
投稿者は「中学生以下は扶養控除がない」と補足し、ほかのユーザーからは、結婚しないのも当然だという声や、子どもの扶養控除の復活を求める声が上がりました。
では、扶養控除をめぐる指摘は制度上正しいのでしょうか。
国税庁によると、扶養控除の対象は、その年の12月31日時点で16歳以上の人に限られます。中学生以下の子どもは対象外で、子どもが増えても扶養控除で税金は軽くなりません。
一方、子育て世帯には児童手当があります。支給される金額は、3歳以上高校生年代までは1人あたり月1万円(第3子以降は月3万円)です。今回の4人家族は、子ども2人がともに3歳以上として、月2万円、年間24万円を受け取れる計算です。
手取りはいくら? 税金と社会保険料を引いて試算
ここでは、夫婦の年収が550万円と300万円、合わせて世帯年収850万円の共働き世帯と、年収300万円の1人暮らしを比べます。どちらも東京都の協会けんぽに加入する40歳未満の会社員としました。
健康保険や厚生年金の保険料は、毎月の給与を等級で区切った「標準報酬月額」と賞与の額をもとに決まります。
今回は簡易的に、本人負担分の健康保険4.925%、子ども・子育て支援金0.115%、厚生年金9.15%、雇用保険0.5%を合計した14.69%を年収に掛けた概算です。
等級の区切りによっては実際の天引き額と年間で2万円ほど差が出るため、目安として見てください。なお、所得控除は社会保険料控除と基礎控除のみで計算しました。
図表1
筆者作成
図表1のとおり、4人家族の手取りは年671万5950円、児童手当24万円を足すと年695万5950円で、1ヶ月あたり57万9663円です。1人暮らしは年241万4500円、1ヶ月あたり20万1208円でした。
手取りの割合は世帯年収850万円のほうが低い
額面に対する手取りの割合は、世帯年収850万円の4人家族が79.0%(児童手当を除く)、年収300万円の1人暮らしは80.5%です。
4人家族のほうが低いのは、所得が多いほど税負担が重くなる仕組みで、年収550万円の人のほうが税金の割合が高いためです。また、中学生以下の子どもには扶養控除がないため、この割合は子どもがいない場合と変わりません。
家賃と生活費を引くと、残るのはいくら?
次に、1ヶ月の支出を「家賃」と「家賃以外の生活費」に分けます。家賃は、持ち家か賃貸かで差が出やすく、平均では実態をつかみにくいため、ここでは4人家族を月15万円、1人暮らしを月6万円と仮定しました。
家賃以外の生活費は、総務省統計局の家計調査(2025年平均)で、世帯主が会社などに勤める「勤労者世帯」の消費支出から住居費を除いた額です。
勤労者世帯のうち4人世帯は、消費支出が1ヶ月37万2589円で、住居費を差し引くと約35万5000円になります。1人暮らしの勤労者世帯は消費支出19万1523円、住居費3万327円で、残りは約16万1000円です。
図表2
筆者作成
図表2のとおり、家賃を引くと、4人家族に42万9663円、1人暮らしに14万1208円が残ります。1人あたりでは4人家族は10万7416円で、1人暮らしより3万3792円少なくなります。
つまり、1人あたりで使えるお金はSNSの投稿どおり1人暮らしのほうが多い計算です。
ところが、平均的な生活費まで引くと結果は逆転します。4人家族には約7万5000円が残る一方、1人暮らしは理論上約2万円の赤字となり、平均的な支出では収まらない水準です。
逆転するのは、生活費が人数に比例しないためです。実際、4人世帯の生活費は約35万5000円で、1人暮らしの約16万1000円の2.2倍ほどにとどまります。単純に1人暮らしの4倍とはなりません。
まとめ
試算では、世帯年収850万円の4人家族は家賃と平均的な生活費を払って月7万5000円ほどが残り、年収300万円の1人暮らしは平均的な支出では収まらない結果になりました。
ただし、家賃を引いた時点の1人あたりの金額では、1人暮らしのほうが多く手元に残ります。世帯年収の多さだけで暮らしぶりは測れないということです。ゆとりがあるかないかを見るには、家族の人数と住居費を考慮する必要があります。
出典
国税庁 No.1180 扶養控除
総務省統計局 家計調査年報(家計収支編)2025年(令和7年)
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2025年
全国健康保険協会 令和8年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表(東京支部)
こども家庭庁 児童手当制度のご案内
執筆者 : 金子賢司
CFP


