更新日: 2024.07.05 その他相続
親の借金は相続放棄すれば大丈夫ってホント? 相続放棄できないケースや対処法も解説
相続放棄は、被相続人の財産だけでなく、借金を相続しないための手続きであり、原則として、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所に申述を行う必要があります。相続放棄のメリットは、借金を引き継がずに済む点にありますが、デメリットとしては、自宅などのプラスの財産も一切受け取れなくなることが挙げられます。
相続放棄ができないケース、具体的な手続きの流れ、注意点なども紹介しており、相続放棄を検討している人にとって非常に有益な情報が満載です。ぜひ、参考にしてみてください。
監修:古市 英志(ふるいち えいじ) / 弁護士
第一東京弁護士会所属の弁護士。早稲田大学法科大学院を修了後、現在の事務所に入所し、数々の実績を積み上げる。幅広い分野で活動を展開する中で、特に相続関係に注力しており、その専門知識と経験からクライアントの信頼を集める。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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目次
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相続放棄とは?基本的な知識を解説
ここでは、相続放棄とはどのような手続きのことか、基本的な知識を解説します。
相続放棄の定義と法律効果
「相続放棄」とは、相続人が被相続人(亡くなった人)の財産を一切相続しない、という選択をする手続きです。
相続放棄は、民法第九百十五条で「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と定められています。
このように、被相続人(亡くなった方)が亡くなった後に相続人は、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」の3つのうちから1つを、相続開始を知ってから3ヶ月以内に選択する必要があります。
「限定承認」とは、負債があって相続財産がプラスになるかマイナスになるか分からないような場合に、プラスの財産の範囲内でだけ相続をするという手続きですが、今回は詳しい説明を割愛します。
一般的には、遺産分割協議で誰がどれだけ財産を相続するかを決定するまで、相続放棄や承認といったことは意識していないでしょう。しかし法律上は、相続の開始を知った時から3ヶ月以内に相続放棄か限定承認しなければ、「相続を承認」したものと扱われます。
一方で、相続放棄をすると、申述相続人としての権利・義務とその地位を失い、最初から相続人ではなかったものとみなされます。そのため、被相続人の財産を相続することができなくなりますが、借金も相続しないので、被相続人の借金に追われることもありません。
相続放棄をするメリットとデメリット
相続放棄のメリットは、被相続人の借金を引き継がずに済むことが挙げられます。しかし、デメリットとしては、借金だけでなく財産も一切受け取れなくなることがあります。親が亡くなって相続放棄する場合、もしも親名義の自宅に住んでいると、その土地建物を使う権利が無くなりますので、注意が必要です。
また、一旦相続放棄が受理されてしまうと相続放棄を撤回することはできませんので、相続放棄するかどうかは慎重に判断しましょう。なお、相続放棄の撤回ではなく、「取消し」は例外的にできる場合があります。
相続放棄の手続き期限
相続放棄をするには、相続開始を知った日から3ヶ月以内に被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に相続放棄の申述を行う必要があります。
この期限を過ぎると、原則として、相続放棄できなくなるために、期限内の手続きが必須です。また、相続放棄するかどうか考える時間が必要な場合には、相続放棄の期限の伸長をすることができます。
また、相続財産が全くないと信じ、かつそのように信じたことに相当な理由があるときなどは、相続財産の全部又は一部の存在を認識したときから3ヶ月以内に相続放棄の申述をすれば、相続放棄が認められることもあります。
相続放棄の申立てに必要な書類と手続きの流れ
相続放棄の申述を行う際には、相続放棄の申述書、被相続人の死亡の分かる戸籍謄本、住民票の除票または戸籍の附票と、相続人の戸籍謄本、収入印紙800円分、郵便代としての切手が必要です。
場合によっては、その他にも必要な書類があるため、裁判所のホームページを確認してみると良いでしょう。
手続きは、まず家庭裁判所に相続放棄の意思表示をするための書類を提出します。この提出は郵便でも可能ですが、相続放棄の期限が近い場合などは確実に提出できるよう、持参した方が良いでしょう。
次に、家庭裁判所は申述書類を確認すると2週間程度で申述人の自宅に照会書が届くことが多いです。この照会書には、相続放棄の申述書に書いた内容を記載する項目があり、申述人本人が自分の意思で本当に相続放棄を申述したかを確認するためのものです。
なお、相続放棄の手続きを弁護士に依頼した場合等には、照会書の送付そのものが省略されることがあります。
申述、照会書の内容に問題がなければ、照会書の返信後、1~2週間程度で相続放棄申述受理通知書が自宅へ郵送されるケースが多いです。これで相続放棄の手続きは完了です。
ただし、被相続人の借入先(住宅ローンの金融機関や、銀行、カードローン会社など)は相続放棄したかどうかが分かりませんので、相手方に「相続放棄の申述が受理された証明書」を提出する必要があります。
この証明書は「相続放棄申述受理証明書」といい、申述を行った家庭裁判所で1通につき150円(収入印紙)で発行してもらえます。また、郵送でも請求可能(別途郵便代が必要)です。
相続放棄をした場合、借金は払わなくていい?
相続放棄をした場合、被相続人名義の借金は払う義務がなくなり、また、払ってはいけません。この点について詳しく解説します。
相続放棄と借金の関係性
相続放棄をすると、相続人ではなかったことになるので、被相続人の借金もプラスの財産も相続できません。では、借金や他の財産がどうなるかというと、相続を承認した相続人が相続することとなります。
例えば、父親が亡くなって、配偶者である母と子ども3人(長男、次男、三男)が相続人で、次男と三男が相続放棄をした場合には、母と長男が相続人となり、この2人で相続財産を分割することになります。また、借金も母と長男が支払う義務を負い、次男と三男は借金を支払う義務を免れます。
よくある勘違い:遺産分割協議での相続放棄?
よくある勘違いとして、遺産分割協議書に「自分は財産を受け取らない」という内容で合意した場合、これを「相続放棄した」と言う方がいます。しかし、これは相続人として遺産分割協議に参加した結果、自分は相続財産を受け取らないことに相続人間で内部的に合意しただけで、被相続人に借金がある場合には、債権者との関係では、法定相続分の範囲で借金を支払う義務を負います。
相続放棄はあくまで、「家庭裁判所に相続放棄の申述を行って認められた場合にのみ成立」します。相続財産を受け取らないと決めている方は、必ず3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述を行いましょう。
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借金の相続権の対象範囲(法定相続人の範囲)
法定相続人の範囲は民法で決められており、配偶者がいる場合は常に相続人であり、それに加えて配偶者以外の相続人は第一順位(子又はその代襲相続人)、第二順位(親、両親が死亡した場合の祖父母)、第三順位(兄弟姉妹又はその代襲相続人)と順位が決まっており、先順位の相続人がいない場合には次の順位が相続人となります。
ここでは相続人の範囲について詳しく解説します。
配偶者は常に相続人
被相続人が死亡時に婚姻関係にあった配偶者は、常に相続人になります。
ここでいう婚姻関係は法律上の婚姻関係であり、婚姻届けを提出していない内縁関係などは含まれません。また、離婚調停中の夫婦の場合でも、離婚が成立していない限りはどちらかが死亡すれば、残ったもう一方は相続人となります。
配偶者以外の相続人
相続人は2種類あり、相続開始時に婚姻していると必ず相続人になる配偶者と、順位付けがある、配偶者以外の相続人が存在します。この配偶者以外の相続人は、被相続人との関係で第一順位・第二順位・第三順位と決められています。
第一順位は被相続人の子であり、子が被相続人よりも先に死亡していた場合はその子(被相続人から見ると「孫」)が相続人となり、これを代襲相続と言います。
第二順位は被相続人の親・祖父母といった直系尊属です。第一順位がいない場合若しくは第一順位の相続人が全て相続放棄した場合は、親か祖父母が相続人となります。親等(親は1親等、祖父母は2親等、曾祖父母は3親等)が異なる人との間では近い親等のものが相続人となります。たとえば、父母・祖父母が生きている場合には親等の近い父母が相続人となる、ということです。
第一順位、第二順位の相続人がいない場合若しくは全員が相続放棄した場合、第三順位である兄弟姉妹が相続人となります。そして、兄弟姉妹で被相続人よりも先に亡くなっている人がいる場合、その子(被相続人から見ると甥、姪)に限り、代襲相続によって相続人となります。
相続人がいない、若しくは全員相続放棄をして相続人がいなくなった場合
相続人がそもそもいない天涯孤独の場合、若しくは配偶者が相続放棄をし、第一順位・第二順位・第三順位も全て相続放棄してしまった場合等には、相続人不存在と言う状態になり、相続財産法人を設立して家庭裁判所が選任した相続財産清算人が被相続人の債権者等に対して被相続人の債務を支払うなどして清算を行い、残った財産は国庫に帰属することになります。
なお、特別縁故者(被相続人と特別の縁故のあった者)に対して相続財産が分与される場合もあります。
相続権が移ったことはどうやって分かる?
例えば、第一順位(子)が全員相続放棄を行い、第二順位(親・祖父母)が既に死亡している場合、第三順位(兄弟姉妹)の人たちは、家庭裁判所などから相続人になったことを聞かされるのでしょうか?
そのような通知はなく、第一順位の人たちが相続放棄した後に第三順位の人が相続人になったことを伝えるか、債権を回収したい銀行などが相続放棄の事実と戸籍を調査して、相続権が移り、第三順位の人に相続人になったことを伝える、ということがあります。
銀行などから相続人になった経緯を聞かされてしまうと、自分は関係ないと思っていた第三順位の人たちは突然自分たちが相続人になり、混乱してしまい、場合によってはトラブルの原因となります。
こういったトラブルを防ぐためにも自分たちの相続放棄で相続順位が変動する場合、できる限りは次順位の相続人には事情を伝えておきましょう。
また、順位が変動した場合の相続放棄の起算日は「自己のために相続の開始があったことを知った時」なので、先順位の相続人の相続放棄の完了を知った日や、債権者から相続人であることを告げられた日から3ヶ月以内に相続放棄を行えば大丈夫です。
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借金の相続放棄ができないケース
借金の相続放棄ができないケースもあります。それは相続を承認してしまった場合と、相続放棄の熟慮期間を過ぎてしまった場合です。どういったケースか詳しく説明します。
ケース①相続を承認した場合(単純承認)
民法第九百二十条には単純承認による法律効果は次のように規定されています。
「相続人は、単純承認をしたときは、無限に被相続人の権利義務を承継する。」
そして、法律上、相続財産の全部または一部を処分したときは、単純承認をしたものとみなされます。
この場合の処分は「捨てる」ことではなく、その相続財産の用途に従って利用したり、売却、賃貸、譲渡等をしたりすることです。例えば、被相続人名義の自宅不動産を売却したり、被相続人名義の預貯金を相続人の私費に充てたり、といったことは単純承認とみなされてしまいます。
すなわち、相続財産を使ったり、売却したりしてしまうと、単純承認したとみなされ、相続放棄ができなくなる、ということです。
ケース②相続放棄の期限を過ぎた場合
相続放棄の期限(相続開始を知った日から3ヶ月以内)を過ぎた場合、原則相続放棄をすることはできません。この場合、相続人は単純承認したとみなされ、被相続人の財産と借金を引き継ぐことになります。
ただし、例外として、3ヶ月を過ぎた後に相続財産が見つかった場合に、相続財産が無いと信じており、そのように信じることに相当な理由があるのであれば、相続放棄の期限を過ぎていても相続放棄が認められる場合があります。
その他にも検討すべき条件があり、期限後に相続放棄を検討している場合、手続きが難しくなることが多いので、弁護士など専門家にできるだけ早く相談しましょう。
借金の相続放棄ができない場合の対処法
自宅の不動産があって、相続放棄をするわけにはいかない、といった場合の対処法をご紹介します。
借金の相続放棄ができない場合の対処法1.任意整理
「任意整理」は、相続放棄ができない場合の借金対策として有効です。
任意整理とは、銀行やカードローン、クレジットカードなどの借入が重なり多重債務になって返済ができなくなった場合に、弁護士などが介入して、今後の返済計画を組み直すと共に、将来利息をカットしたりして現実的に返済できるよう交渉してもらうことです。
また、古い取引の場合などには高金利での返済をしていたために、過払い金が発生していて、逆にお金が戻ってくる場合もあります。
「借金があるから相続放棄」ではなく、他の財産との合計を考えたり、借金が実際にはどれだけあるかを調べた上で、借金は分割で返済しつつ、放棄するわけにはいかない財産を相続する、というのも1つの解決方法です。また、放棄するわけにはいかない財産がある場合には、相続放棄ではなく、限定承認を選択した方が適切なケースもあります。
これらの手続きを行う場合には、弁護士や司法書士などの専門家に相談しましょう。
借金の相続放棄ができない場合の対処法2.住宅ローン
借金が「住宅ローン」の場合には、団体信用生命保険など、債務者が死亡した場合に残った住宅ローンは生命保険で支払われるものもあります。被相続人名義の住宅ローンで相続放棄を考えている方は、住宅ローンの資料を見直したり、金融機関に相談しましょう。
借金の相続放棄手続きの流れ
借金を相続放棄する場合の具体的な手続きは次のとおりです。なお、家庭裁判所への申立ての具体的な内容は既に紹介したとおりです。
流れ(1)相続放棄前の準備
相続放棄の申立てをする前には、被相続人の財産状況や借金の有無を確認することが重要です。
必要に応じて財産調査を行い、相続放棄の判断材料とします。相続放棄の期限とされている「相続の開始を知ってから3ヶ月」は熟慮期間と呼ばれ、こういった財産調査、相続を承認するか放棄するかの検討のための時間に充てられるものです。
流れ(2)家庭裁判所での手続き
相続放棄の手続きは被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所で行います。申立に必要な戸籍などを準備し、家庭裁判所に提出後、申立人の自宅に照会書が届き、返信すれば最終的に相続放棄申述受理通知書が郵送されて、家庭裁判所での相続放棄の手続きは完了となります。
流れ(3)相続放棄申述受理証明書の取得
相続放棄の手続きが完了した後は、家庭裁判所に「相続放棄申述受理証明書」を請求します。郵送でも請求可能で、1通150円を収入印紙で支払います。また、借金の債権者が複数いる場合には、その会社の数だけ取得しておきます。
また、相続放棄完了時に送られてくる「相続放棄申述受理通知書」は証明書とは別の書類であり、再発行もできないので、債権者に提出する際は必ず、「相続放棄申述受理『証明書』」を取得しましょう。
流れ(4)債権者に相続放棄申述受理証明書を提出する
借金の支払いを請求してくる債権者に対しては、家庭裁判所で取得した「相続放棄申述受理証明書」を提出します。この証明書が提出されると、債権者としては相続人でない相手に支払い請求はできないので、他の相続人や次順位の相続人に請求することになります。
債権者からも家庭裁判所に相続放棄申述受理証明書を請求できるので、必ず提出が必要なものではありませんが、スムーズに手続きを終わらせるためには、こちらから積極的に提出しておいた方が良いでしょう。
借金の相続放棄をする際の注意点
借金の相続放棄をする際に注意するポイントはいくつかありますので、まとめて紹介します。
注意点①単純承認に該当する行為は絶対にしない
相続放棄をする可能性がある場合には、被相続人の預貯金を使ったり、形見分けたりする、負債を支払うといった単純承認に該当し得る行為は絶対にしてはいけません。
そういった行為をしてしまうと、相続放棄ができなくなるかもしれません。
注意点②手続きの期限と重要性
相続放棄の手続きは、原則として、相続開始を知った日から3ヶ月以内に行う必要があります。この期限を逃すと、相続放棄が認められない可能性が高くなるため、、期限内の手続きが非常に重要です。
注意点③財産調査の必要性
相続放棄を決定する前には、被相続人の財産状況を正確に把握することが重要です。家族でも知らない財産や借金の存在や、友人の保証人になっているという場合もあります。100%全てを調査することは難しくても、財産調査は徹底的に行う必要があります。
注意点④専門家への相談の重要性
相続放棄に関する手続きは複雑であり、個々のケースによって適切な対応が異なることがあります。そのため、弁護士や司法書士などの専門家へ相談しましょう。
親(被相続人)の借金があるかどうか調べる方法
被相続人に借金があるかどうかを調べる代表的な方法は次のとおりです。なお、被相続人の死亡の分かる戸籍謄本と、相続人の戸籍謄本が必要となる場合が多いため、準備してから調査をしましょう。
方法①公的機関を利用した調査
相続人が把握していない不動産の存在が疑われるケースでは、法務局や市区町村役場で不動産の調査を行います。市区町村役場で名寄帳を取得すれば被相続人がその市区町村で所有している土地建物が判明します。そこで不動産が特定できれば、法務局で登記簿謄本を取得します(インターネットでの取得もできます)。
もしも、被相続人が自己の所有する不動産を担保にお金を借りていれば、登記簿謄本には抵当権や根抵当権等の権利が設定されています。それらを発見した場合には、登記簿に記載の金融機関に問い合わせると、借入金額や残高など、詳細を知ることができます。
方法②信用情報機関への開示手続
クレジットカードや銀行からの借入などの情報は、JICC(日本信用情報機構)、CIC、全国銀行協会、といった信用情報機関に登録されています。これら機関に被相続人の情報の開示を請求すれば、借入の状況がつかめます。
方法③金融機関との協力
被相続人が利用していた金融機関に被相続人の死亡を伝え、把握している以外に口座がないか、借入をしていないかを問い合わせることができます。
この時注意することは、被相続人の死亡を金融機関に連絡すると被相続人名義の預貯金口座が凍結されることになりますので、注意が必要です。
方法④遺品整理や書類の確認
遺品整理を通じて、親が残した書類や記録を確認することで、借金の有無や詳細を把握することも可能です。特に、銀行の通帳や契約書などの金融関連、土地建物の権利証といった不動産関連の書類には特に注意してください。
方法⑤郵便物の調査
被相続人宛の郵便物を精査することも大切です。借金や引き落としなどの月々の支払いが滞ると、債権者は電話や郵便で支払い確認をしたり、請求書を送ってきます。これらの請求書を精査することで、家族も知らなかった借入が見つかることもあります。
これらの手続きを駆使して、できるだけ正確に被相続人の財産を調査し、それでも判断が難しい場合は弁護士や司法書士に早めに相談して、期限の伸長や、限定承認なども検討しましょう。
借金の相続放棄に関してよくある質問
借金の相続放棄に関してよくある質問を紹介します。
Q1:相続放棄の期限はいつまで?
相続放棄の期限である熟慮期間は、原則として相続開始を知った時から3ヶ月以内です。相続放棄の申述や期限の伸長、限定承認を行わずに熟慮期間を過ぎると単純承認したことになり、相続放棄をできなくなります。
Q2:相続放棄できる財産とできない財産がある?
相続放棄をすると、被相続人の財産の全てを放棄することになります。つまり、借金だけを放棄したり、自宅の土地建物だけを単純承認することはできません。つまり、プラスの財産とマイナスの財産(借金)はセットで考える必要があります。
Q3:親の生前に相続放棄できますか?
相続放棄は相続開始後に行うものなので、生前に相続放棄はできません。
Q4:相続放棄の手続き中、金融機関から借金の支払いを請求されましたが、どう対処すれば良いですか?
被相続人の借金を一部でも支払ってしまうと単純承認に該当してしまい相続放棄ができなくなってしまうおそれがありますので、相続放棄をして支払うつもりがないことをハッキリ伝えましょう。
Q5:相続放棄の借金は誰が払うの?
相続人が相続放棄した場合の借金は、次の順位の人に相続され返済義務を負います。
仮に全員が相続放棄した場合は、誰も借金を引き継ぐことはありません。
ただし、債権者(お金を貸した人)が家庭裁判所に申し立てを行った場合は、家庭裁判所が相続財産管理人を選出します。
相続財産管理人に選出されたひとは、遺産の範囲内で債権者に弁済を行う必要性があります。
Q6:相続放棄の借金を知らなかった場合は?
存在を知らなかった場合は、一定の条件を満たすことで相続放棄できます。
詳しくはこちらを読んでみてください。
借金の相続放棄まとめ
相続放棄は手続きの完了後には撤回ができないので、行う前にしっかりと「財産調査」を行いましょう。
また、相続放棄が完了した後には相続放棄申述受理証明書を発行してもらい、各金融機関に提出すれば金融機関は、通常それ以上支払いを請求してこなくなるでしょう。
相続放棄の手続きはご自身でもできますが、相続財産が不明、債権者が多い、といった場合には弁護士や司法書士などの専門家に依頼しましょう。また、3ヶ月という期限もあるので、悩んでいる場合はできるだけ早く相談をしましょう。
出典
裁判所 相続の放棄の申述
★e-gov民法
裁判所 相続放棄の申述
法テラス 相続放棄は、いつまでに行えばよいのですか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
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