更新日: 2019.12.09 その他相続

相続人が次々に相続放棄して相続人がいなくなったら、残された財産はどうなるの?

相続人が次々に相続放棄して相続人がいなくなったら、残された財産はどうなるの?
相続が発生すると、法定相続人は3ヶ月以内に、相続するかしないかを決めなくてはなりません。相続放棄をすると、その人は最初から相続人ではなかったことになります。では、相続人が次々に相続を放棄して相続人がいなくなったらどうなるのでしょうか?
 
宿輪德幸

執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

CFP(R)認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
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相続放棄は増えている

相続が発生すると、借金のようなマイナスの財産も含めて相続人に相続されます。ですが、相続放棄をすれば借金から逃れることができます。
 
相続財産は、現金や不動産などプラスの財産と、借金などマイナスの財産は取り扱いが異なります。プラスの財産は、遺言や遺産分割協議により法定相続分と違う分け方ができますが、マイナスの財産は法定相続分で相続されます。
 
借金だけを支払い能力のない相続人に相続させることができると、お金を返してもらえないため、債権者(お金を貸した人)の利益が守られません。近年、相続放棄の件数は増え続けています。
 

 

相続順位

相続放棄をすると、相続順位に従って相続権が移動します。
 
図の例で、まず長男が放棄すると、長女が単独で相続となります。長男が、先に亡くなっていた場合には孫が代襲相続しますが、相続放棄では代襲しません。その後、長女が相続放棄すると第1順位がいないことになりますが、第2順位の直系尊属もいませんので、第3順位の弟が単独で相続人となります。
 
そして、弟が相続放棄すると、法定相続人はいなくなります。
 

 
このように相続人全員が相続放棄をした場合、相続財産を管理する人がいない状態になってしまいます。これを避けるために「財産管理制度」という仕組みが存在しています。
 

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財産管理制度

民法では、相続人の存在が不明(全員が相続放棄した場合も含む)の場合についての財産の扱いについて、以下のように定めています。
 
民法第951条:相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
民法第952条1項:前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任しなければならない。

 
つまり、相続人全員が相続放棄した場合も、相続財産は法人となります。そして、家庭裁判所は申立てにより、相続財産の管理人を選任します。マイナスが多いとしても、プラスの財産もあることが通常ですから、管理人が債務を平等に返済するなどの清算をするのです。
 
相続財産管理人が選任されてからの清算は以下のような流れになります。

(1)相続財産管理人選任の公告(2ヶ月)

 相続財産管理人が選任されたことを通知します。公告は、家庭裁判所の掲示板に掲示し、かつ官報に掲載する方法により行われます。

(2)債権者への請求申出の催告の公告(2ヶ月)

 債権者に対して、請求金額を申し出るように促します。

(3)債権者へ弁済

 債権者に対して、債務を弁償します。財産がなくなれば終了です。借金が原因で相続放棄された場合には、ほとんどが債権者への弁済で終了となります。

(4)相続人捜索の公告(6ヶ月)

 警察、労働局などに書類を提出して本当に相続人がいないのか捜索が行われます。相続人が見つかり、相続を承認したら終了します。

(5)相続財産の清算

 残余財産は、特別縁故者へ財産分与され、それでも残った場合は国庫へ帰属します。 つまり、清算後最終的に財産が残っていれば、その財産は国のものになります。
 

 
なお、特別縁故者とは、下記のような人を指します。
・被相続人と生計を同じくしていた者
・被相続人の療養看護に努めた者
・その他、被相続人と特別の縁故があった者

 
一番多いのは、内縁の妻です。珍しい例では、2016年11月に名古屋高裁金沢支部が35年間身寄りのない男性の世話を続けてきた障害者施設を特別縁故者として認定しています。
 

まとめ

自分の借金で相続人の生活が壊されることは、故人も望まないでしょう。放棄が必要な場合は遠慮せずすべきです。ただし、他の親族に影響が及ぶことがありますので、トラブルにならないように情報の共有が必要です。
 
相続人不存在となると、最終的に残った財産は国のものになります。法定相続人がいない方は、「財産管理制度」のお世話にならなくていいように、遺言で対策しましょう。
 
出典
裁判所「司法統計 第2表 家事審判・調停事件の事件別新受件数―全家庭裁判所」
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/234/004234.pdf
http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/688/010688.pdf
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士


 

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