更新日: 2020.09.04 遺言書

遺言の基本をおさらい!法務局で遺言が保管できるようになったって本当?

遺言の基本をおさらい!法務局で遺言が保管できるようになったって本当?
人生100年時代になり、従来に比べると、自分の老後や死後について考える時間を多く持つことになりました。厚生労働省が公表した2019年の日本人の平均寿命は、女性が87.45歳、男性が81.41歳となり、男女ともに8年連続のプラスになったようです。
 
こういった中、自分の人生の最期をイメージしながら、自分の人生を自分らしく生きる準備をしつつ、亡くなったあとに備えること、つまり『終活』が注目されるようになってきました。
 
終活では、万が一認知症になったときの対策、財産の見える化、自分の葬儀をどうするのか、お墓をどうするかなど、さまざまなことを考える必要があります。終活の中で解決しなければならない課題の1つに相続もあります。
 
相続が発生すると、いままで仲の良かった兄弟が言い争うことになったり、家族がバラバラになってしまったりと、「相続」が「争族」となってしまうケースが数多く見られます。このような相続に関するトラブル件数を裁判所の司法統計で見ると、平成20年1万202件だったものが、平成30年で1万3040件となっており、10年間で約3割も増加していることがわかります。
 
自分の子どもや家族がそういったことにならないように、自分が亡くなったときに財産をどのような分配するのか、自己の最終意思を明らかにしておく必要があります。今回はその最終意思、つまり遺言についての基本を振り返り、新しい制度が開始されているので、その内容について確認してみましょう。
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

遺言の基本

<遺言とは?>
自分が死亡したときに相続人等に対して、財産をどのように分配するか等について自己の最終意思を明らかにするものです。これにより相続をめぐる争いを事前に防止することができます。遺言の方式は主に、公正証書遺言と自筆証書遺言がありますが、次に詳しく見てみます。

■公正証書遺言とは

法律専門家である公証人が、2人以上の証人の立ち会いのもと厳格な方式に従い作成する信頼性の高い方式です。遺言の内容について公証人の助言を受けることができます。公証人がその原本を厳重に保管します。
 
なお、作成には家庭裁判所での検認手続きが不要ですが、財産の価額に応じた手数料が必要です。詳しくは、お近くの公証役場で確認すると良いでしょう。
 

■自筆証書遺言とは

15歳以上で、自分が書くことができれば、いつでも自らの意思により作成できる、手軽かつ自由度の高い方式です。ただし、法令上の要件を満たしていなかったり、内容に誤りがあったりすると無効になります。遺言者が自分でその原本を管理する必要があります。
 
なお、ご自身で作成するため手数料はかかりませんが、遺言者本人の死亡後、家庭裁判所での検認手続きが必要です。

新しい遺言の残し方

令和2年7月10日より、「自筆証書遺言書保管制度」という制度が開始されました。
 
この制度が始まり、手軽かつ自由度の高い「自筆証書遺言」がさらに使いやすくなりました。いままでは、自分で原本を管理しなければなりませんでしたが、法務局に保管を申請できるようになりました。さらに、法務局で保管された自筆証書遺言書は、家庭裁判所での検認手続きが不要となりました。
 
もう少し、詳しく内容を見ていきましょう。
 

■自筆証書遺言書の保管の申請先

遺言者の住所地、本籍地、所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所(東京法務局では、本局・支局・板橋出張所の5カ所)で申請ができます。管轄する遺言書保管所や予約の方法については、法務省ホームページにて確認をしましょう。
 
なお、予約をしないと申請の受付ができないので、必ず予約を入れるようにしましょう。
 

■費用

遺言書の保管申請には、3900円/件の費用がかかります。その他の費用として、必要に応じて、以下の費用がかかります。
 
・遺言書情報証明書の交付請求(1通1400円)
・遺言書の閲覧請求(1回1400円(モニター)、1700円(原本))
・遺言書保管事実証明書の交付請求(1通800円)
 

■メリット

1.遺言者
(1)紛失・亡失を防ぐことができます。
(2)他人に遺言書を見られることがありません。
(3)相続人や受遺者等の手続きが楽になります。
(4)法務局では、遺言の内容のチェックはしてくれませんが、形式要件(日付の記入の有無、訂正のやり方等)のチェックをしたうえで預かってくれますので、形式要件の不備で遺言が無効になることはありません(内容が法律に整合しているかどうかは、自分でチェックする必要があります)。
 
2.相続人・受遺言者等
遺言者の死亡後、家庭裁判所での検認手続きは不要のため、速やかに相続手続きができます。
 
(参考)
裁判所「司法統計」
法務省「「自筆証書遺言書保管制度」について(令和2年7月10日開始)」
 
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー


 

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