更新日: 2020.12.27 その他相続

親が認知症になったら年金はどうなる? 口座凍結を防ぐには?

親が認知症になったら年金はどうなる? 口座凍結を防ぐには?
日本人の平均寿命は延び続けています。それはうれしいことですが、高齢者が増えることで、認知症の問題も大きくなっています。
 
もし、親が認知症になってしまったら、口座が凍結されるのでしょうか。そのとき、年金は受け取れなくなってしまうのでしょうか? 親のお金の管理はどうすればいいのでしょうか?
宿輪德幸

執筆者:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

CFP(R)認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
また、離れて住む親御さんの認知症対策、相続対策をご心配の方のために、Web会議室を設置。
資料を画面共有しながら納得がいくまでの面談で、納得のGOALを目指します。
地域の皆様のかかりつけ法律家を目指し奮闘中!!
https://www.shukuwa.com/

口座の凍結

認知症になったら口座が凍結されるわけではありません。「口座名義人が認知症で意思能力がない」と銀行が認識したときに凍結されるのです。
 

銀行が認知症を理由に口座を凍結するタイミング

(1)家族が認知症を銀行に告知
(2)口座名義人が銀行に行き、銀行職員が認知症になっていることを認識
(3)定期預金などの解約のため家族が銀行に同行して、銀行が本人の認知症を認識
など

 
銀行が口座を凍結するのは、意思能力(自分の行為の結果を理解し、判断できる能力)のない口座名義人が財産を失うことを防ぐためです。そして口座が凍結されると、引き出しや解約は一切できません。年金が入る口座も同様の扱いとなります。
 

成年後見で口座の凍結を解除

家庭裁判所が選任した成年後見人は法定代理人として、口座を利用することができます。
 
意思能力のない本人は代理人を選ぶことはできません。家族などが成年後見を申し立て、裁判所が後見人を選任します。家族を候補者として申し立てすることが多いのですが、親族後見人はわずか21.8%(2019年)となっています。裁判所の判断で、司法書士などの専門職が選任されることが多いのです。
 
後見人が決まると凍結は解除され、裁判所の管理下で後見人が口座を管理します。

※筆者作成
 

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認知症で口座凍結をさせない対策

認知症になっても口座凍結をさせず、家族で財産管理するための対策として「任意後見」と「民事信託(家族信託)」があります。両制度とも契約により設定しますので、本人の意思能力が必要ですが、認知症と診断されても症状が軽い間は契約可能です。
 
●認知症に備える2つの制度の比較

任意後見 民事信託
財産管理人 本人が指定 本人が指定
管理期間 認知症になり、家庭裁判所により後見監督人が指定されてから死亡まで。
認知症前の財産管理委任契約をセット可
自由に設定できる。
元気なうちから開始可。
本人死亡によって終了しないことも可
管理人の役割 本人の法定代理人 信託財産の管理処分
管理方法 全財産の管理可能。
本人名義の財産を管理
信託財産とした財産のみ。
財産の名義は受託者にする。
年金口座・農地など信託不可
施設の契約など身上監護 できる できない
設定方法 公正証書 公正証書でなくてもよい
遺産の分割指定 できない 残余財産帰属権利者として指定できる
専門家報酬 後見監督人の報酬が発生する場合が多い 家族のみで運用する契約とすれば報酬は発生しない
裁判所の関与 後見監督人を通して裁判所の管理がある 裁判所は関与しない
財産の使途 原則、本人のために使う 本人以外も受益者になれる。
家族のために使うことが可能

※筆者作成
※年金口座は本人名義でなければならないため信託財産とすることはできませんが、口座凍結をされていなければ、預金を信託口座に振り込むことは可能です。
 
認知症後の財産の扱いを知っている方は少数で、口座を凍結されてから初めて事の重大さに気付くことになります。そのときになって成年後見制度による家族の負担を知り、本人の財産は諦め、家族の財産で生計を立てる方が多くいます。
 
認知症患者の数は2020年で約600万人と推計されていますが、成年後見制度の利用者はわずか22万4442人(2019年12月末時点)というのが現実です。
 
認知症と診断されても軽症の間は契約できますので、手遅れにならないうちに、任意後見や民事信託を検討した方がよいでしょう。
 
出典
最高裁判所事務総局家庭局 「成年後見関係事件の概況 ―平成31年1月~令和元年12月―」
内閣府 「平成29年度高齢社会白書」(65歳以上の認知症患者の推定者と推定有病率)
 
執筆者:宿輪德幸
CFP(R)認定者、行政書士
 

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