親が認知症になると預金口座が凍結される!? いざという時のために知っておくべきこと
配信日: 2021.01.31
金融機関は、預金者本人以外の人が預金を引き出す場合には、預金者本人による意思確認が必ず必要となります。高齢化が急速に進展するわが国において、それに比例して高齢者名義の預金口座残高の割合も上昇していくことになります。
執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)
ファイナンシャル・プランナー
住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。
全国銀行協会による指針
一般社団法人全国銀行協会では、高齢化が進む中で認知機能が低下した顧客に金融機関がどう対応すべきかの指針やルール作りが進められています。例えば、家族が本人に代わり預金を引き出す「代理出金」がしやすくなるような指針などが整備されつつあります。
2020年3月には、「預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引き出しに関するご案内資料」が提示され、「預金のお引き出しには、原則として預金者ご本人の意思確認が必要ですが、預金者ご本人の生活費、入院や介護施設費用等のために資金が必要でお困りの際には、まずは、お取引銀行へご相談いただきたい」との記載があります。
つまり、預金者本人以外は絶対に引き出すことができないという先入観を無くし、まずは取引銀行の窓口まで相談してほしいという銀行側の柔軟な姿勢が示されたということです。もちろん、引き出しの可否については銀行側が事情を聞いた上で判断することになります。
なお、相談で銀行窓口に行く際には、以下のようなものを準備する必要があります。
●【預金者本人の】通帳、キャッシュカード、お届け印
●【来店する人の】本人確認書類、預金者本人との関係性が分かる書類
●【お金が必要な理由】入院や介護施設費用の請求書など
代理人の事前申込
預金者本人が、銀行窓口やATMを利用することができない場合や困難となることを想定し、事前に本人に代わって口座手続きができるサービスがあります。ただし、預金者本人が事前に申し込みをする必要があります。当然ながら、認知症などの制限行為能力者となってしまうと単独の契約などは取り消しとなってしまうので、そのような状況になる前に事前に申し込みをしておく必要があります。
(1)代理人キャッシュカード
預金者本人に代わって、ATMなどで入出金ができる代理人キャッシュカードを発行することができます。発行されたキャッシュカードは、預金者本人から、代理人に渡すことで利用することができます。また、事前の申し込みは預金者本人が銀行窓口(取引店または支店)で行うことになります。
(2)代理人指名手続
あらかじめ2親等内の親族を代理人として指名しておくことで、預金者本人に代わって口座手続きができるようになります。こちらも、預金者本人が事前に申し込みをする必要があります。その際、指名される代理人の来店は不要ですが、代理人が実際に口座から出金する場合には、通帳および届出印と本人確認書類を持参する必要があります。
銀行としての通常の運用では、預金の引き出しは「本人」もしくは「本人が指名した代理人」しか認めていません。また、これらは預金者本人に健全な判断能力があることが前提となるため、預金者本人が認知症を発症したときには、いずれにしろ預金が凍結されることになります。
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まとめ
このような預金口座の凍結に関する対策は、本人が認知症を発症する前後で異なります。これまでの対策は、認知症を発症する前に、任意後見制度を使う、民事信託や信託商品を活用するなどの対策が中心でした。また、認知症を発症した後の対策としては、成年後見制度の利用がありますが、いざ利用する場合には手間とコスト、そして時間(通常数ヶ月)が掛かることが難点となります。
これからの超高齢化の時代において、より実効性の高い、現実に即した柔軟な対応が実現されることが望まれます。
出典
一般社団法人全国銀行協会 預金者ご本人の意思確認ができない場合における預金の引き出しに関するご案内資料の作成について
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー