更新日: 2021.02.03 その他相続
相続のキホン!「寄与分」「特別受益分」って何?どう計算される?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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寄与分とは
例えば、相続人の中の1人が被相続人の家業を手伝うなどして、被相続人の財産の維持または増加に貢献した場合、遺産を法定相続分どおりに分けるのは不公平です。
そこで、相続人間の公平を保つために、寄与のあった相続人には、法定相続分にプラスして寄与分が与えられます(民法904条の2第1項)。
寄与分が与えられる具体例としては、上記の家業を手伝う(報酬を得ていた場合は除く)ほか、家業に資金提供したり、被相続人を看病・介護して被相続人の医療・介護費用の支出を減らし相続財産が減らずにすんだケースなどがあります。
寄与分を金銭的に算定するのは簡単ではありません。まずは相続人間で協議をしますが、話がまとまらない場合は裁判所が算定します。では、寄与分が算定された場合の法定相続分の計算はどうなるのか見てみましょう。
まず、寄与分はいったん遺産から除外し、残りの遺産を法定相続分に従って分割し、その後、寄与した相続人の相続分にプラスします。例えば、相続人が子ども2人、遺産が2000万円で、弟の寄与分が200万円と算定されたケースで考えてみましょう。
まず、遺産2000万円から200万円を差し引きます。残りの1800万円を法定相続分で分けると、兄弟それぞれ900万円ずつとなります。そのうえで、弟に寄与分200万円を足します。これにより、兄の相続分は900万円、弟の相続分は1100万円となります。
寄与分が認められない人に報いるには
寄与分が与えられるのは相続人に限られます。例えば、親の介護を長男がした場合、寄与分が認められる可能性がありますが、長男の妻が介護をした場合、相続人ではないので寄与分は認められません。
したがって、長男の妻に報いるには遺言を作成する必要があります。義父が遺言の作成に消極的な場合でも、特別の寄与が認められる場合、長男の妻は、義父の死後、相続人に対して、寄与に応じた額の金銭の支払いを請求することができます(民法1050条1項)。
特別寄与料について相続人間で話し合いがつかない場合は、家庭裁判所に対して特別寄与料を定めるように申し立てることができます。
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特別受益分とは
特別受益分は寄与分と反対です。生前に被相続人から住宅資金や事業資金、結婚の際の持参金などの援助を受けていた場合、その生前贈与を無視して、遺産を法定相続分で分けるのは不公平です。
そこで、相続人間の公平を保つため、相続人の中に、被相続人から遺贈や生前贈与を受けた者がいるなら、相続分を定める際に、生前贈与等(特別受益)を清算します。
では、特別受益分が算定された場合の法定相続分の計算はどうなるのか見てみましょう。まず、遺産に特別受益分を加えた後、法定相続分で分け、特別受益分を受けた者については、そこから特別受益分を差し引いて実際の相続分を決めます(民法903条1項)。
例えば、相続人が子ども2人、遺産が2000万円で、弟への生前贈与が200万円あったケースを考えてみます。まず、遺産に特別受益分をプラスした2200万円(2000万円+200万円)を法定相続分どおりに分けます。
そうすると兄弟それぞれ1100万円ずつになります。そして、特別受益分を弟から差し引きます。これにより、弟の相続分は900万円、兄の相続分は1100万円です。
なお、被相続人が特別受益の清算を否定する意思(持ち戻しの免除)をした場合には清算は行われません(民法903条3項)。
夫が自分名義の自宅を妻に贈与した場合、結婚期間が20年超の夫婦間で居住用不動産の遺贈や贈与があった場合、持ち戻しの免除の意思表示があったと推定されます(民法903条4項)。
持ち戻しの免除の意思表示によって他の相続人の遺留分を侵害した場合、特別受益を受けていない相続人は遺留分侵害請求権を行使できます。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。