更新日: 2019.07.25 その他保険
最悪の場合、一生無保険になることも。保険の不適切販売事件に学ぶ「乗り換え」の注意点とは?
不適切な募集行為はかんぽ生命に限らず他の保険会社でも行われています。「乗り換え」や「転換」などを勧められている方は、「転換」や「乗り換え」をする前に、メリット・デメリットの説明を受け、十分納得したうえで実行しましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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生命保険の苦情内容で多い項目
一般社団法人生命保険協会「相談所レポートNO94(平成29年度版)」によると、苦情内容の上位項目は、「入院等給付金不支払決定」が第1位となっています。
第2位は「説明不十分」、第3位は「不適切な募集行為」、第4位は「入院等給付金支払手続」、第5位は「解約手続」、第6位以降は「契約内容変更」、「不適切な話法」、「個人情報取扱関係」、などとなっています。
レポートの苦情の中で、「乗り換え」と「転換」に関する具体例を見てみましょう。
転換契約の具体的な苦情内容として、「数百円の追加保険料で医療特約の保障内容が良くなると営業職員に言われ、契約を転換したが、保険料払込期間が62歳までから終身に変更され、転換前契約の積立金が保険料に振り替えられるという説明はなかった。保険料免除特約もなくなっている」があげられています。
また、「乗り換え」の具体的な苦情内容としては、「80代の配偶者が代理店に勧誘されて既契約を解約し、新契約に切り替えた、保険料が上がったうえに、入院給付金額や手術給付金額が下がり、白内障手術も対象外になった」や「加入している年金保険より有利だと言われ、解約して、2件の終身保険に加入させられた。
担当者が退職し、後任者から契約内容を聞き、説明が間違っていることに気付いた」などが報告されています。
「乗り換え」の注意点
「乗り換え」とは、現在の契約を解約して、新たな保険に加入することをいいます。新しい契約が成立する前に、現在の契約を解約してしまうと、新しい契約が成立するまでの間、無保険状態になってしまい、その間に保険事故があっても保障が得られないといった大変なことになります。
また、健康状態によっては、新たな保険に加入することができない場合もあり、一生涯、無保険状態になる可能性があります。したがって、「乗り換え」をする場合には、新しい契約が成立した後に、現在の契約を解約することが重要です。
保障内容や保険料などについて新旧契約を比較することも大切です。例えば、予定利率の高い時に契約した、いわゆる「お宝保険」を解約して、現在の予定利率が低い保険に新規に加入するのは一般的に損です。
「乗り換え」する前に、「乗り換え」に伴う利害得失について説明を受け、十分納得することが大切です。先ほど見たように、生命保険の苦情の上位に「説明不十分」がありました。
残念ながら、募集人の中には、営業成績を上げるために、デメリットをしっかり伝えなかったり、虚偽の説明をしたりする人がいます。できれば、保険に詳しいFP(ファイナンシャルプランナー)などの第三者の意見も聞くと良いでしょう。
「転換」の注意点
募集人から「転換」を勧められたことはないでしょうか。「転換」とは、現在の契約を活用して、新たな保険を契約する方法です。現在の契約の積立部分を「転換(下取り)価格」として新しい契約の一部に充当する方法です。
新しい契約の一部に「転換価格」が充当されますので、新規に契約するよりは、保険料の負担が一般的に軽減されます。元の契約は消滅して、新しい別の契約になります。
保険料は転換時の年齢、保険料率によって計算されますので、転換時の予定利率が元の契約の予定利率よりも下がる場合は保険種類によっては保険料が上がる場合もあります。転換には告知(または診査)が必要ですので、健康状態によっては転換できない場合もあります。
予定利率の高い時の保険は保険会社にとっては負担が大きいので、保険会社に都合の良い予定利率の低い保険への転換を勧められる場合があります。
保険会社が転換を勧める場合は、転換以外の方法や転換した場合の新旧契約の内容の比較などについて、書面を用いて説明することが義務付けられています。
その書面に関しては受領した旨の確認印を求められますので、十分に内容を理解・納得したうえでなければ、受領し確認印を押すことはしないようにしましょう。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー