40歳の兄が「資産6000万円」でFIRE!“年金暮らしの父”に「健康保険の節約のため扶養に入れてほしい」と相談していますが、資産があるのにズルくないですか!? 扶養制度や認定条件を確認
そこでFIREを実現した人が、健康保険料を節約するため、年金暮らしの父親の扶養に入ることはできるのでしょうか。本記事では、健康保険の扶養制度や認定条件のほか、FIRE後に必要となる社会保険料についても解説します。
FP2級、防災士
健康保険の扶養制度とは
日本では、すべての人が何らかの公的医療保険に加入する「国民皆保険制度」が採用されています。
公的医療保険には、会社員などが加入する健康保険や、自営業者、退職者などが加入する国民健康保険があります。また、会社の健康保険には「被扶養者」という制度があり、一定の条件を満たす家族は、自分で保険料を負担せずに健康保険に加入できます。
一方、国民健康保険には「扶養」という制度がありません。家族であってもそれぞれが加入者となり、世帯の所得や加入人数などに応じて保険料が計算されます。そのため、父親が国民健康保険に加入している場合、扶養に入ることはできません。さらに、75歳以上の人が原則として加入する後期高齢者医療制度にも、扶養制度はありません。
ただ、父親が会社の健康保険に加入している場合や、退職後も健康保険を任意継続している場合には、扶養の対象となる可能性があります。
資産6000万円でも扶養に入れる?
会社の健康保険では、扶養に入るための条件が定められています。全国健康保険協会(協会けんぽ)によると、40歳の場合、原則として年間収入が130万円未満であることが条件の一つです。
また、同居している場合は、原則として本人の年間収入が扶養する人の年間収入の半分未満であることも求められ、別居している場合は、本人の年間収入が扶養する人からの仕送り額より少ないことが条件となります。
ここで注意したいのが「資産」と「収入」の違いです。資産とは、預貯金や株式など、現在保有している財産を指し、収入とは、給与や年金、配当金など、一定期間に得るお金のことです。つまり、6000万円の資産があっても、収入がゼロであれば扶養の条件を満たす可能性があります。
ただし、健康保険法では、被扶養者について、主として被保険者により生計を維持する家族などと定めています。これは、実質的に家計を支えているのは誰であるかということです。たとえ収入がなくても、6000万円の資産を使って自立した生活を送っている場合、年金暮らしの父親に扶養されていると認められにくいでしょう。
FIRE後の投資収益はどうなる?
FIRE後は、資産運用による収益を生活費に充てることも考えられます。もし6000万円を年利3%で運用し、配当金などを受け取ることを仮定した場合、月に15万円、年間180万円の利益になります。
この180万円が継続的な収入としてみなされると、扶養要件における40歳の年間収入基準である130万円を超えるため、扶養に入ることは難しいと言えます。一方、預貯金を少しずつ取り崩して生活する場合、預貯金の引き出し自体は新たな収入には当たりません。
なお、NISA口座で得た非課税の利益については、税制上の扶養とは違い、健康保険の扶養認定で必ず収入から除外されるとは限らないため、事前に確認しておくとよいでしょう
FIRE後の健康保険料も考えておこう
扶養に入れない場合、退職後の健康保険は、国民健康保険か、退職前の健康保険を継続する「任意継続」から選ぶことになります。国民健康保険料は前年の所得などをもとに計算されるため、退職直後は収入がなくても保険料が高くなる可能性があります。
一方、任意継続は原則として最長2年間加入できますが、会社が折半で負担していた保険料も自分で支払う必要があります。
また、59歳までは、原則として国民年金保険料の負担も必要です。さらに、40歳以上は介護保険料も必要になるため、FIRE後の支出は生活費だけではないことを理解しておきましょう。
FIRE後の生活設計は慎重に
6000万円の資産があっても、それだけで健康保険の扶養対象から外れるわけではありません。ただし、扶養に入るためには、収入の条件だけでなく、家計をメインで支えているのは誰かという実態も判断の条件となります。
また、父親が国民健康保険や後期高齢者医療制度に加入している場合は、そもそも扶養制度を利用できません。FIREによって働き方の自由が増える一方、退職後は健康保険料や年金保険料などの負担が生じます。資産額だけで判断せず、将来必要となる社会保険料も含めて、無理のない生活設計を考えておくことが大切と言えるでしょう。
出典
全国健康保険協会 任意継続
全国健康保険協会 任意継続被保険者被扶養者(異動)届
全国健康保険協会 令和8年度被扶養者資格の再確認について
執筆者 : 渡辺あい
FP2級、防災士
