更新日: 2020.07.30 その他保険
運用は怖いから投資信託はやらないけど、変額保険には入ってる。それって、正解?
一方で、損することもある投資は怖いという理由で、積極的に運用に踏み切れない人もまだ多いはずです。ただそんな人の中にも、変額保険には加入しているという人がいるかもしれません。その選択は正しいのでしょうか?
執筆者:北垣愛(きたがき あい)
マネー・マーケット・アドバイザー
証券アナリスト、FP1級技能士、宅地建物取引士資格試験合格、食生活アドバイザー2級
国内外の金融機関で、マーケットに関わる仕事に長らく従事。
現在は資産運用のコンサルタントを行いながら、マーケットに関する情報等を発信している。
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まず投資信託とは?
かなり認知度は高まってきましたが、改めて「投資信託」とは、証券会社や銀行などで購入できる運用商品の一つです。投資家のお金を預かった資産運用のプロが、投資家に代わって運用してくれるもので、少額から購入することができます。
ただし、プロが運用するといっても、相場の環境などによって損することもあり、運用の結果は購入した投資家が請け負うこととなります。
元本が保証されていないことが、投資を怖いと感じる人にとっては大きなハードルでしょう。また、販売手数料や信託報酬、ものによっては信託財産留保金といった手数料がかかることも、購入をためらう理由となっていそうです。
しかし、投資信託は多くの投資家から資金を集め、まとめて運用するため、さまざまな資産に分けて投資すること(「分散投資」)ができます。個人の資金ではなかなか効率的な分散投資は難しいため、これは大きなメリットといえます。また、個人が購入することができないような投資先にも間接的に投資できることも魅力です。
変額保険とは?
変額保険には「保険」という言葉は付いていますが、実は「保険」の部分と「運用」の部分に分解することができる商品です。加入者が払い込んだ保険料の一部は投資信託などによる運用に回されており、その運用成果に基づいて、満期保険金や解約返戻金などが増減する仕組みとなっています。
保険に回った分の保険料で、死亡保障は確定して支払われます。しかし、保険期間の決まっている保険で、終了まで無事生存して満期保険金を受け取る場合には、元本割れしているリスクもあります。途中解約の際に受け取る解約返戻金では、元本割れのリスクはより一層高くなります。
変額保険にも、さまざまな手数料がかかり、パンフレットを注意深く見れば確認することができます。ただ、保険関係費用などでは明示されていないものもあり、投資信託より少し分かりにくいところもあります。
変額保険は、「掛け捨て保険+投資信託」で代用できる?
変額保険は、死亡保障がある上に、運用によって満期保険金の増額が目指せるため魅力的だと感じる方も多いのかもしれません。
しかし実は多くの場合、保険は掛け捨てのものに置き換え、運用は投資信託などで別に行う方が、経済的により効率の良い結果となりそうです。2つのハイブリッドである変額保険は、その複雑な商品設計の中で余計なコストがかかってしまっているためです。
解約しても返戻金の無いシンプルな仕組みの掛け捨て保険では、他の貯蓄性のある保険と比べて保険料がかなり割安になっています。
また掛け捨て保険なら、保障内容をそのときの状況に応じてより簡単に見直すこともできます。年齢が上がるほど、必要な保障金額は少なくなっていくかもしれません。
運用部分についても、投資信託には変額保険よりも多くのメリットがありそうです。運用の成果は、それを行う運用会社の巧拙によって大きな違いが生まれます。しかし変額保険では、数年にわたって運用成績が低迷していても、途中で運用会社が変わることは通常ありません。
一方、投資信託であれば、売却や別の銘柄への入れ替えも、保険より簡単に行えます。手数料がかかる投資信託であったとしても、多くは投資金額の1~3%程度(入れ替えの場合は、これの倍程度)です。
さらに、変額保険では運用で損失が出ていても満期時点で損益が確定してしまいますが、投資信託なら売却を見送って相場回復をしばらく待つという選択をすることも可能です。
変額保険が有利な場合はないのか?
変額保険を勧められる際、相続対策に役立つ「非課税枠」の話が挙げられるかもしれません。
契約者が被相続人で、受取人が法定相続人である場合に、法定相続人の数×500万円が保険金から差し引かれるというものです。これにより、その非課税枠の分だけ相続財産が減り、相続税も軽減されることになります。
ただし、これは掛け捨て保険であっても同じです。あえて変額保険のメリットを挙げるとすれば、変額保険では契約が長期間であることが多いため、保険期間がうっかり切れていたというような事態が少ないということはいえるかもしれません。
多くの場合、変額保険に加入するよりも、保険と運用を別に行う方が合理的かつ効率的であると考えられます。もちろん、ご自身が必要と考える保険の保障の程度によっては、多少異なる結論が出る可能性もあります。
しかし、変額保険を検討されるときには、掛け捨て保険と投資信託などの運用商品の組み合わせも比較検討してみることをお勧めします。
執筆者:北垣愛
マネー・マーケット・アドバイザー