更新日: 2020.11.20 その他保険
介護保険料を滞納するとどうなる?支払いが難しいときはどうすればいい?
65歳以上の介護保険料は現在、全国平均で月額5869円ですが、団塊の世代がすべて後期高齢者(75歳以上)になる2025年度には、7200円になると見込まれています。
これに伴い、年金が増えない中、介護保険料を滞納する高齢者は増加すると予想されます。介護保険料を滞納するとどうなるのか、対処法も含め解説します。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/
65歳以上の介護保険料
65歳以上の第1号被保険者が納める介護保険料は、市区町村が3年ごとに介護保険事業計画を策定し、それぞれの地域における3年間の保険給付費の見込みにもとづき、具体的な額を定めています。したがって、全国一律ではなく、市区町村によって介護保険料は異なります。
また、同じ市区町村内でも所得段階に応じた負担になるように調整されています。例えば、ある区では、所得を15段階に区分し、基準額(第5段階)は6470円ですが、最も所得区分の低い第1段階では月額1620円、第15段階では月額2万2650円となっています。
なお、介護保険制度が開始した2000年度の全国平均介護保険料は月額2911円でしたが、2015年度には5514円、2018年度からは5869円となっています。団塊の世代がすべて後期高齢者(75歳以上)になる2025年度には7200円になると見込まれています。
介護保険料の支払方法
40歳から64歳までの健康保険の加入者(第2号被保険者)は、健康保険料と一緒に介護保険料を納めます。自営業の方など国民健康保険加入者の方は、国民健康保険の保険料などと合わせて介護保険料を納めます。
65歳以降は介護保険の第1号被保険者となり、お住まいの市区町村より介護保険料が徴収されることとなります。
年金の受給額が18万円以上のときは、年金から天引きされます(特別徴収)。18万円未満のときは納付書で支払うか、口座振替で支払います(普通徴収)。特別徴収対象者数は約3192万人、普通徴収対象者数は約347万人となっています(令和元年度介護保険事務調査)。
普通徴収の納付書による支払いでは、支払いを忘れる可能性がありますので、口座振替にしておくとよいでしょう。
介護保険料は社会保険料控除の対象です
介護保険料は、確定申告等の際に社会保険料控除として認められます。
・65歳以上で特別徴収により納めている方
1月に、日本年金機構等から「公的年金等の源泉徴収票」が送られます。これに年金天引きで納付した金額が記載されています。
・65歳以上で普通徴収(口座振替)の方
1月に、市区町村から「介護保険料口座振替払込済通知」が送られます。これに、口座振替でお納付した介護保険料額が記載されています。
・65歳以上で普通徴収(納付書払い)の方
領収書でご確認ください。領収書を紛失された方は、市区町村に問い合わせてご確認ください。
介護保険料を納めない場合
介護保険料を納付期限までに支払わずに一定期間経過すると市区町村から支払い督促状が届きます。督促状の納付期限を過ぎると、延滞金などが加算される場合があります。
介護保険料を長期間納めないでいると、財産の差し押さえが執行される場合があります。また、介護保険サービスを利用する際に、給付制限があります。具体的には以下のとおりです。
・保険料の滞納期間が1年以上の場合
利用したサービス費用は全額自己負担です。その後、申請により保険給付費(本来の自己負担を除く費用)が返還されます。
・保険料の滞納期間が1年6カ月以上の場合
利用したサービス費用は全額自己負担です。保険給付費(本来の自己負担を除く費用)についても、一部または全部が一時的に差し止めとなります。
・保険料の滞納期間が2年以上の場合
介護保険料を滞納している期間に応じて、利用したサービス費用の自己負担割合が一定期間3割(自己負担が3割の方は4割)に引き上げられます。また、高額介護サービス費などの支給が受けられなくなります。
厚生労働省「令和元年度介護保険事務調査」によると、保険給付の償還払い化(支払い方法の変更)人数は2714人、保険給付の支払の一時差止人数は55人、保険給付の減額等の人数は1万1552人となっています。
介護保険料の支払いが困難な場合、まずは相談を
介護保険料を滞納すると実質的に介護サービスを受けられなくなるだけではなく、預貯金や不動産といった資産の差し押さえ処分などを受け、生活が立ちいかなくなります。
介護保険料の支払いが難しくなったときには、早めに市区町村の介護保険の担当窓口に相談しましょう。介護保険料の減免措置を受けられる場合があります。
また、生活そのものが経済的に厳しいときは、生活保護の申請を検討しましょう。居住用不動産(土地・建物)を所有している低所得の高齢者世帯の方は、その居住用不動産(土地・建物)を担保とし、生活資金を借り入れる不動産担保型生活資金(社会福祉協議会)を利用する方法もあります。
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。