事故物件って、誰かが入居したら次回は知らせなくてもいいって本当?
配信日: 2020.06.13
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
事故物件は告知されるのが原則
一般的に、賃貸物件の部屋内で自殺や殺人など、人の亡くなる事故が発生した場合、住み心地のよさを欠く心理的な瑕疵があるとして、不動産業者はそれを入居前に告知しなければなりません。
ただし、法律は告知しなければならないことを明確には定めてはいません。しかしながら、通常多くの人の感覚としては、自殺や事故などで人の亡くなった直後の部屋で生活することに不快な気持ちを感じるものです。
そこで、判例では「住み心地のよさを欠く」といった理由から、事故物件について告知すべきとしているのです。この告知義務は、あくまで事故で人が亡くなった場合です。寿命など事件性のない死は、自然死として告知されないことが原則的です。
そこで一つ問題が生まれます。「いったいいつまでが事故物件として扱われ、告知義務が生じるのか」と。
誰か1人でも住めば事故物件じゃなくなるわけではない
まず、事故物件となったとしても、それについて永遠に告知義務が続くわけではありません。なぜなら、時間の経過とともに、人の死という心理的な不快感は薄まっていくと考えられるからです。
そこで、よくいわれる都市伝説的なものに「1日でも誰かが住めば事故物件じゃなくなるから告知されなくなる」というものがあります。ただし、実際のところ、そうはいきません。
告知義務の続く期間について、明確な基準があるわけではありませんが、賃貸物件においては、少なくとも2年程度は告知義務が続くと思われます。そのため、自分の前に誰かが入居したからといって、必ずしも事故物件としての告知事務が消滅するわけではありません。
この2年という数字は一つの目安のようなものであり、事故の様子や亡くなった方が見つかるまでの時間、近隣住民に事故の記憶がどの程度残っているかなどによっても異なります。
確実に事故物件を見抜くにはどうすればいいの?
直前の退去理由が人の死と無関係なら、事故物件ではないとも限りません。仲介する不動産会社も、前の前の人までは正確に把握していないこともありえます。
そこで、前の入居者だけでなく「過去2年分」といったように、年数で指定して過去の退去理由について確認しておくことで、事故物件でないか正確に確認することができます。
仮に事故でないとしても、出ていく人が年数に比して異様に多い場合は、何かしら問題のある物件であることが想定されます。
絶対に事故物件は避けたい、そうでなくとも問題のありそうな物件は避けたい、というのであれば、契約前の段階で、過去数年分さかのぼって確認しておくとよいでしょう。
なお、事故物件は一般的に、家賃が相場より2割から3割ほど低くなることが多いのですが、前に入居者がいた物件や人気の物件は、家賃はさほど変わらないこともあり、家賃のみから見抜くのは確実ではありません。
住んでいる物件が事故物件と発覚したらどうすればいいの?
もし、入居している物件が事故物件だと発覚した場合は、速やかに管理会社に相談してください。状況の説明やその他対応をしてもらえる可能性があります。
不動産賃貸をめぐるトラブルは、同じ悩みでも個別の事情によって結論が大きく変化します。管理会社に相談して納得のいく結論とならない場合は、全国の消費生活センター・国民生活センター、または各種の専門家などに相談するとよいでしょう。
[出典]一般財団法人 不動産適正取引推進機構「賃貸住宅における自殺に係る賠償責任に関する一考察」(2012年4月)
執筆者:柘植輝
行政書士