東日本大震災から10年。仙台市と石巻市の被害状況を知り、今後の地震に備える
配信日: 2021.03.11
東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)が発生してから10年、地震の発生を防ぐことはできませんが、東南海・南海地震や首都直下地震等が発生した時の被害を少なくするための備えはできます。
そこで、10年前の仙台市と石巻市の被害状況から、今後の地震で想定される被災状況をイメージしてみました。あなたの命と財産を守るために、改めて10年前に起きたことを思い出し、明日への備えをしておきましょう。
執筆者:松浦建二(まつうら けんじ)
CFP(R)認定者
1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/
石巻市の死者・行方不明者は人口の2.4%
将来、首都直下地震が発生すれば、首都圏の大都市は大打撃を受けます。どのくらい打撃を受けるのかをイメージするために、東日本大震災(東北地方太平洋沖地震)で被害を受けた地域の中から、大都市の仙台市と県内で2番目に人口の多い石巻市を取り上げてみました。
下記は東日本大震災での人的被害の状況です。参考にした消防庁の資料は2020年3月のもので、直近でも死者が増えている地域はあります。
仙台市は死者923人・行方不明者27人・負傷者2277人で、人的被害者の総数は3227人となっています。石巻市は死者3552人、行方不明者420人、負傷者は不明となっています。
被害が大きすぎて把握できなかったと考えられますが、仮に死者行方不明者と負傷者の比率が仙台市と同じだとすると、負傷者は1万3492人です。
仙台市の被災者(死者・行方不明者・負傷者の計)は人口の0.31%、死者のみは人口の0.09%となり、石巻市は推定で人口の10.70%、死者のみは人口の2.18%です。
被災地でも仙台市は100人のうち0.3人なのに石巻市は100人のうち10.7人(推測)も被害を受けていることになります。
東南海・南海地震や首都直下地震の被災地になるかもしれない市区町村に、かなり無理を承知の上でこの比率(人の被害率)を当てはめてみました。
例えば、静岡県磐田市と東京都品川区に当てはめてみると、
・磐田市 人口16万9274人(2020年12月末現在 磐田市ホームページより)
人的被害率が仙台市並みの0.31%だと被災者は522人、石巻市並みの10.70%だと被災者は4119人となります。
・品川区 人口40万6404人(2021年1月1日現在 品川区ホームページより)
人的被害率が仙台市並みの0.31%だと被災者は1253人、石巻市並みの10.70%だと被災者は9890人です。
大地震が発生すると家は大きなダメージを受ける
人的被害と同様に、住家被害についても仙台市と石巻市を取り上げてみました。下記は東日本大震災での住家被害の状況です。
仙台市は全壊3万34棟・半壊10万9609棟・一部破損11万6046棟、合計で25万5689棟(床上浸水は不明)もの住家が被災しています。石巻市は全壊2万44棟・半壊1万3049棟・一部破損1万9948棟、床下浸水3667棟、合計で5万6708棟もの住家が被災しています。
住家と世帯数は等しくありませんが、仮に住家被害に遭った棟数を当時の世帯数で割ってみると、仙台市は54.9%、石巻市は実に93.2%の家が被災したことになります。
そして、この被害率を再び静岡県磐田市と東京都品川区に当てはめてみました。
・磐田市 6万9087世帯(2020年12月末現在 磐田市ホームページより)
住家被害率が仙台市並みの54.9%だと、被災世帯数は3万7922世帯、石巻市並みの93.2%だと被災世帯数は6万4417世帯です。
・品川区 22万8061世帯(2021年1月1日現在 品川区ホームページより)
人的被害率が仙台市並みの54.9%だと、被災世帯数は22万8061世帯、石巻市並みの93.2%だと被災世帯数は21万2644世帯となります。
ここまで被害率が高いと、無傷で済むとは想定しづらいです。かなり大雑把な計算ですが、イメージするには十分な精度ではないでしょうか。磐田市は東海地震や東南海・南海地震で、品川区は首都直下地震で大きな被害が想定される地域なので、取り上げました。
また、石巻市は仙台市に比べて全壊の割合が高く、仙台市は被災した住家うち11.7%が全壊となっていますが、石巻市は3倍の35.3%にもなります。おそらく津波により被災した住家の数が影響していると考えられます。
頑張って強固な家を建てても、相手が津波だと簡単に全部破壊されてしまうのかもしれません。東日本大震災の被災地では10年たった今でも復興途中です。
しかし、再び大地震が襲いかかる可能性は消えません。大地震が起こり、住居が全壊したら……もしものために、保険の加入を検討したり緊急資金用として貯蓄額を増やしたり、今できることがあるかもしれません。
この記事を書いても復興支援にはつながらないかもしれませんが、今後起こる可能性の高い大地震に対して、1人でも多くの人が備えの大切さを意識してもらえることを願っております。
執筆者:松浦建二
CFP(R)認定者