更新日: 2022.12.13 子育て

私立高校授業料無償化、公立高校より私立高校に行ったほうが安いの?

執筆者 : 前田菜緒

私立高校授業料無償化、公立高校より私立高校に行ったほうが安いの?
子育て世帯のライフプラン相談にのっていると、私立高校の授業料無償化制度により、私立高校でも公立高校と同程度の費用で通えるのかと、よく質問されます。
 
そこで、高校授業料無償化制度の内容と、私立高校と公立高校の費用差についてお伝えします。
前田菜緒

執筆者:前田菜緒(まえだ なお)

FPオフィス And Asset 代表、CFP、FP相談ねっと認定FP、夫婦問題診断士

保険代理店勤務を経て独立。高齢出産夫婦が2人目を産み、マイホームを購入しても子どもが健全な環境で育ち、人生が黒字になるようライフプラン設計を行っている。子どもが寝てからでも相談できるよう、夜も相談業務を行っている。著書に「書けばわかる!わが家の家計にピッタリな子育て&教育費のかけ方」(翔泳社)

https://www.andasset.net/

私立高校授業料無償化制度とは

私立高校授業料無償化制度とは、文字通り私立高校の授業料が無償になる制度です。入学金や教科書代などは、基本的には無償化対象外です。
 
また、無償化になる授業料には上限があります。授業料の上限は、国の基準は39万6000円です。授業料がこれ以上高くても39万6000円以上の支援はありませんし、授業料がこの金額以下であれば支援されるのは授業料が上限です。
 
ただ、各都道府県では独自の上乗せ制度があり、国の基準以上の額でも支援される場合があります。上限額の高い都道府県として、京都府65万円(生活保護世帯は98万円)、大阪府60万円、東京都46万7000円などが挙げられ、埼玉県、千葉県に至っては全額支援という手厚さです(2022年12月時点の情報です)。
 
ただし、所得制限があります。国の基準は世帯年収の目安が590万円となっていますが、こちらも各都道府県独自の基準があり、例えば千葉県の場合、全額支援される年収目安は640万円、埼玉県の場合は生活保護世帯です。
 
京都府、大阪府は、年収目安590万円までであれば、先に述べた65万円、60万円が支援されますが、その年収を超えても、支援額は下がりますが、独自の上乗せ制度があります。まずはお住まいの都道府県の基準をクリアできるのか確認しておくとよいでしょう。
 

公立高校と私立高校の費用の差は

では、私立高校授業料無償化制度を利用できるとして、私立高校と公立高校では、どの程度の費用の差があるでしょうか。具体的に見てみましょう。
 
文部科学省の「平成30年度 子供の学習費調査」によると、授業料、クラブ活動、制服代や教科書代など学校にかかる費用は公立高校で年間28万487円、私立高校で年間71万9051円です。ここで、もし授業料が無償化されると、どう変化するでしょうか。
 
公立、私立高校の授業料が全額無償化されるとして、それぞれの調査結果から授業料以外の学校費用を合計すると、公立高校は年間25万5109円、私立高校は年間48万9025円です。授業料がかからなかったとしても、私立高校の金額は公立高校の金額の倍近くありますから、私立高校の学費は決して公立高校と同程度の金額になるわけではないことがわかります。
 
なお、公立高校も授業料無償制度があり、制度対象となる目安の世帯年収は約910万円です。したがって、私立高校授業料無償化対象であれば、公立高校の授業料も無償化対象になります。ただし、無償にならなくても公立高校の授業料は月額9900円(全日制)ですから、私立高校に比べると、かなりお手頃といえます
 

公立高校と私立高校の学校以外にかかえる費用の差は

ここまで見てきた費用は学校にかかる費用です。学校以外にかかるお金、特に塾代については費用が高額になりがちです。私立高校で大学受験対策をしっかり行ってくれたため、塾に行かずにすんだ。公立高校だったため、受験対策の塾が必須で高額な塾代が必要になった。結果、塾費用がかからない私立高校のほうが安かったという話もご相談者さまから聞くことがあります。
 
一方、私立高校に行っても、塾に通って塾代が高額で大変だった、公立高校でもほとんど塾に行かず大学に合格できたという話も聞きます。したがって、学校にかかる費用はある程度比較できるにしても、学校以外にかかる費用については、子どもの性格や成績、目指す大学などによって対策は異なってくるでしょうから、比較が難しいといえます。
 

公立高校と私立高校どっちが経済的?

学校費用だけで比較すると、先に述べたとおり公立高校のほうが経済的といえます。しかし、学校以外にかかる費用まで予想するなら、高校を受験する際に大学受験対策の指導法や、その学校の生徒は塾に行く人が多いのか、進学率や勉強法、推薦入学の情報などを得ておく必要があるでしょう。
 
学校選びはお金の問題だけで片付けられるわけではありませんが、費用面においては、まずは無償化対象家庭になるのか、なる場合はいくら負担があるか確認して学校選びをしておくと、その後の費用に悩む場面は少なくなるでしょう。
 

出典

京都府 私立高等学校に通学される場合の支援制度について
大阪府 私立高校生等に対する授業料等の支援について
東京都 私立高校等の教育費を支援します!
埼玉県 私立学校の父母負担軽減事業について(令和4年度)
千葉県 令和4年度私立高等学校等授業料減免制度
文部科学省 平成30年度 子供の学習費調査
 
執筆者:前田菜緒
FPオフィス And Asset 代表
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
確定拠出年金相談ねっと認定FP、2019年FP協会広報スタッフ

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