更新日: 2019.09.02 その他暮らし

仕事でミスして損害を出してしまった… 会社から損害賠償請求されることってあるの?

仕事でミスして損害を出してしまった… 会社から損害賠償請求されることってあるの?
仕事にミスはつきものです。誰でも一度や二度、大きな失敗をやらかしてしまって大目玉を食らったという経験があるのではないでしょうか。
 
では、もし仮にその失敗によって発生した損失分について、会社から賠償するよう請求されたらあなたはどう対応しますか?
 
自分のミスであるからと素直に会社の請求に応じてしまいますか?
 
それとも、一定の範囲の損害は会社が負担するべきだと拒否しますか?
 
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

工場の機械を壊してしまった

Aさんは勤務中に誤った手順で作業してしまい、機械を急停止させてしまいました。
 
それが原因となり機械は故障し、修理の費用や代替機械の手配など会社に多くの損害が発生しました。
 
Aさんの日頃の勤務態度や実績に問題はなく、たまたま不注意と過失による事故が発生してしまったというのが今回の事件の背景でした。
 
しかし、会社はAさんに対して次のように述べました。
 
「今回の事故はAさんの不注意・過失によって起きたものです。したがって、今回の事故によって発生した損害の全額を支払ってもらいます。」
 
Aさんは会社に対して損害の全額を支払わなければならないのでしょうか。
 

会社からの損害賠償は一定の範囲で認められる可能性があります

結論として、会社からAさんへの損害賠償請求は一定の範囲において認められる可能性があります。
 
ポイントとしては全額ではなく「一定の範囲」で認められる可能性があるという点です。
 
では、順を追って説明していきましょう。
 
まず、Aさんは会社に雇用されて勤務している労働者であることから、会社に対して労働契約上の債務(要するにきちんと働くということ)を負っています。
 
ところが、Aさんは不注意によるミスから機械を故障させて会社に損害を発生させてしまいました。不注意によって損害を発生させている以上、債務を適切に履行したとは言い切れないでしょう。
 
そこで民法415条と709条の登場となります。
 
各条文について、今回の事例に即して簡潔に説明すると次のようになります。
 
415条…Aさんが正しく債務を履行していないため、会社は損害賠償を請求することができる。
 
709条…Aさんは過失によって会社に損害を与えたため、会社の損害を賠償しなければならない。
 
とはいえ、会社は労働者の労働によって利益を得ています。
 
にもかかわらず、損害のすべてを労働者に押し付けてしまうと、会社と労働者との間で不公平な差が生じることとなります。
 
そのため、基本的に損害賠償の請求が認められる場合であっても、その範囲は一定のものに限られると考えられます。
 
実際の判例においても、会社の損害賠償請求権は一定の範囲に制限されているものがほとんどです。
 

損害賠償の請求には落ち着いた対応を

たとえ悪意がなくとも、過失によって会社に損害を与えてしまった場合、会社から従業員に対して損害賠償の請求が認められることがあります。
 
とはいえ、必ずしも損害の全額を請求することが認められるわけではなく、これまでの勤務態度や仕事の内容、従業員の地位や予防策の有無など個別具体的な事情を考慮し、一定の範囲に制限されることがほとんどです。
 
また、状況によっては損害賠償の請求自体が認められないこともあります。
 
会社から損害の賠償を求められたとき「自分にも落ち度があるのだから…」と安易に全額支払ってしまうのではなく、状況に合わせて専門家へ相談するなど冷静に対応するようにしてください。
 
Text:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士・2級ファイナンシャルプランナー


 

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