職場の定期券で「自宅と逆方向」のスタバに通う友人。「改札出なきゃ大丈夫」とのことですが、その分の“運賃”を払う必要はないの？ 不正乗車をしないために知っておきたいこととは
改札を出ていないから大丈夫と思っていても、実はそれが定期券のルール違反になり、最悪の場合、定期券の没収や割り増し運賃の追加請求につながることもあるのです。
鉄道会社の規則とペナルティの観点から詳しく解説します。
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
目次
改札を出なければセーフ？ 定期券のルールを正しく理解しよう
「改札を出なければ、定期券の区間外でも電車に乗ってかまわない」と考える人は少なくないかもしれません。しかし、定期券が使えるのは券面に記載された区間と経路だけです。改札の入場と出場が定期券内だったとしても、指定区間を越えて乗車すれば、本来は追加の運賃が必要になります。
例えば、JR京葉線の八丁堀駅から南船橋駅までの定期券を持っている人は、定期券区間外である東京駅構内（改札内）の飲食店で食事をしたり、お土産店で買い物したりはできません。
八丁堀駅～東京駅間は片道150円なので、往復で300円の支払いが必要です。
定期券外の無銭乗車は不正乗車！ 罰則は？
不正乗車として駅員の指摘を受けた場合のペナルティは、決して小さくありません。JRの旅客営業規則の第168条には、「定期券の区間外を係員の承諾なく利用した場合は無効として回収する」旨が明記されています。
例えば、八丁堀駅から南船橋駅までの6ヶ月定期券の料金は5万9120円です。仮に有効期限が5ヶ月残っている状態で回収となった場合、5万円近くの損失となります。
当然、八丁堀駅～東京駅間における正規運賃の支払いが必要です。ただし、旅客営業規則の第265条には「当該区間の正規運賃とその2倍の増運賃を請求する」と記載されています。今回の場合は正規運賃300円に増運賃600円を加えた900円が請求されるのです。
不正乗車とならないためにすべきこと
当然ながら、不正乗車とならないためには運賃を正しく支払う必要があります。改札を出る前に窓口で申告し、差額運賃を支払いましょう。
もしくは、東京駅であえて改札を出てしまうのも手です。Suicaと一体型の定期券であれば、あらかじめチャージしておき、東京駅で出場すれば、その時点で正しく運賃の支払い処理が行われます。その後に再度入場すれば、東京駅からの乗車として記録され、運賃を正しく支払えるのです。
もし東京駅に行く頻度が高いのであれば、いっそのこと定期券の区間に東京駅を含めるという方法もあります。ただし、八丁堀駅～南船橋駅の6ヶ月定期券は5万9120円であるのに対し、東京駅～南船橋駅の6ヶ月定期券は7万350円と、その差額は1万1230円です。
1往復が300円なので、元を取るには38往復（月に6～7往復ペース）が必要となります。ある程度の利用頻度がなければ割に合わない点にも注意しなければなりません。
改札を出なければOKではない！ 運賃を正しく払おう！
「改札を出なければ定期券外の駅に行っても問題ない」と考えるのは誤解です。定期券はあくまで「券面に記載された区間と経路」に対して有効なものであり、それを越えて乗車する場合は、定期区間外の運賃を支払わなければなりません。
不正乗車とみなされたときのペナルティは重く、定期券の回収だけでなく、2倍の増運賃を含めた追加請求を受けます。「知らなかった」では済まされないのが現実です。
うっかりルール違反をしてしまわないように、定期券の正しい使い方をあらためて確認しておきましょう。
出典
東日本旅客鉄道株式会社 旅客営業規則
執筆者 : 浜崎遥翔
2級ファイナンシャル・プランニング技能士
