『千と千尋の神隠し』油屋の経営は儲かる?現代の温泉旅館に置き換えて売上を試算
本記事では、現代の温泉旅館をモデルに「油屋」の売上や年間利益を考察します。
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油屋はどんな温泉旅館?モデルや建築構造から規模を考察
油屋は一体どれほどの規模を持った施設なのでしょうか。まずはその全貌をおさらいしましょう。
『千と千尋の神隠し』に登場する油屋は大規模な温泉旅館
油屋を連想させる温泉宿はいくつか実在しています。
・道後温泉本館(愛媛県)
制作スタッフが実際にロケハンに訪れ、参考にしたと公表されている施設です。
・歴史の宿 金具屋(長野県 渋温泉)
木造4階建ての圧倒的な存在感が、油屋の夜の雰囲気を彷彿とさせます。
・積善館(群馬県・四万温泉)
本館へと続く赤い橋が、千尋が息を止めて渡ったあの橋を連想させます。
・鬼怒川温泉あさや(栃木県)
広がる豪華な吹き抜け空間は、まさに油屋の内部そのものです。
油屋の客室数は作中で明示されていませんが、これらの温泉旅館の規模をベースに今回は「100室」と仮定して、現代の基準でその売上を試算してみましょう。
多層構造の油屋には客室や従業員施設、ボイラー室などが存在
建物全体は大まかに、以下のような階層に分かれています。
・最下層:ボイラー室
・低階層:従業員部屋、大浴場
・中階層:宴会場、客室
・最上階:湯婆婆の執務室 兼 宮殿
さらにメインとなる客室・サービスエリアも用途に合わせて垂直に分けられています。
・1階:洗浴エリア
・2~3階:休息・宴会エリア
・4階:VIP個室エリア
また「従業員用」「お客様用」のエレベーターが使い分けられている描写もあり、縦の動線も完璧に設計された大規模なリゾート施設であることがわかります。
油屋の年間売上はいくら?宿泊料金と客室稼働率から試算
次に油屋の年間総売上のシミュレーションへ進みましょう。
旅館の客室稼働率を参考に「40%」と設定
観光庁の「宿泊旅行統計調査」を見ると、2025年の旅館の客室稼働率は月によっておおむね30〜40パーセント台で推移しています。
夏休みや紅葉などの観光シーズンをピックアップしてみても、その実態は以下の通りです。
・8月:45.7パーセント
・10月:41.8パーセント
・11月:42.1パーセント
こうした水準を踏まえ、優良旅館のラインである年間客室稼働率「40パーセント」と仮定して計算を進めることとします。
1室3人・1人5万円、客室稼働率40%で年間売上を計算
試算の前提条件は以下の通りです。
・総客室数:100室
・客室稼働率:40パーセント
・1室あたりの平均宿泊人数:3人(神様のグループ利用を想定)
・1人あたりの平均宿泊料金:5万円(高級旅館の1泊2食付き料金を想定)
これらを落とし込むと、油屋の年間売上を算出できます。
・年間の客室利用:100室 × 40パーセント × 365日 = 1万4600室
・1室あたりの客室単価:3人 × 5万円 = 15万円
したがって年間の売上は、1万4600室 × 15万円 =「21億9000万円」となります。
油屋の年間利益はいくら?人件費や食材費などを差し引いて計算
ここからは株式会社リロホテルソリューションズ「経費構造診断シミュレーター」の目安レンジを参考に、油屋の年間利益を試算します。
人件費・材料費・水光熱費・修繕費・OTA手数料を設定
油屋は旅客に豪華な料理や温泉、宴会、手厚いサービスを提供しています。客室数・宿泊人数・宿泊料金などは作中で明示されていないため、料理や設備、従業員などに多くのコストがかかる「高級旅館」と仮定し、算出したものを表1にまとめました。
表1:油屋の経費シミュレーション
| 経費科目 | 目安レンジ最高値 | 費用率 |
|---|---|---|
| 人件費 | 42パーセント | 9億1980万円 |
| 材料費 | 24パーセント | 5億2560万円 |
| 水光熱費 | 12パーセント | 2億6280万円 |
| 修繕・設備関連費 | 9パーセント | 1億9710万円 |
| OTA経由の宿泊者比率(経由売上) | 44.9パーセント | 約9億8331万円 |
| OTAの実質コスト | 17パーセント | 約1億6717万円 |
※参考資料を基に著者作成に筆者作成
今回は広告宣伝費、保険料、通信費、租税公課などを個別に設定しておらず、費用項目を増やすと試算の前提が複雑になるため「その他の費用は0円」としました。
年間費用は約20億7247万円、年間利益は約1億1753万円
前記の表1の値を足すと、油屋の年間費用は「約20億7247万円」と計算できます。年間売上「21億9000万円」から年間費用「20億7247万円」を引くと、年間利益は「約1億1753万円」です。
したがって、利益率は「約5.4パーセント」という結果となりました。
平均的な旅館の利益率と比較すると?
黒字旅館の経常利益率「10.6パーセント」と比較すると、今回の油屋の利益率はそれを下回る結果となりました。八百万の神々を満足させるために料理や設備へ惜しみなく投資している場合、売上規模は大きくても利益は意外と薄いと考えられます。
しかし人件費をほとんど払わずに千尋たちを働かせているとすれば、実際の利益はもっと跳ね上がるのかもしれません。
出典
スタジオジブリ STUDIO GHIBLI 千と千尋の神隠し
観光庁 観光統計・白書 宿泊旅行統計調査 2025年(令和7年)1月~12月分(年の確定値)報道発表資料(11ページ上部)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
