「タバコは換気扇の下でしか吸っていない」のに、敷金ゼロ物件で「壁紙の黄ばみと臭い」を理由に“退去費用25万円”請求された! 全張替えするそうですが、支払う義務はありますか? 原状回復費用のルール
本記事では、換気扇の下でタバコを吸っていたとしても原状回復費用を負担しなければいけないのかについて解説します。
FP1級、CFP、DCプランナー2級
タバコを換気扇の下でのみ吸っていたら費用支払いを拒否できる?
「換気扇の下でしか吸っていなかった」という理由だけで、原状回復費用の支払いを全面的に拒否するのは難しいでしょう。
国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」では、タバコのヤニや臭いについて、通常の使用による汚れを超えるものとして借主負担になり得るとしています。重要なのは、喫煙した場所ではなく、実際に室内へどの程度のヤニや臭いが残ったかです。
同ガイドラインでは、喫煙によって「当該居室全体」のクロス等がヤニで変色したり臭いが付着したりした場合、居室全体のクリーニングや張替えを借主負担とするのが妥当としています。
つまり、汚れや臭いが一部に限られているのに広範囲の張替えを請求された場合には、施工範囲の根拠を確認する余地があります。写真や張替面積、単価などの明細を求めましょう。
クリーニング費用の借主負担など特約条項の有効性
契約書に「退去時のクリーニング費用は借主負担」などの特約が記載されていても、常にそのまま有効になるとは限りません。
国土交通省のガイドラインでは、通常の原状回復義務を超える負担を借主に課す特約について、主に以下の点が必要と整理しています。
・特約に必要性があり、暴利的ではないなど客観的、合理的な理由がある
・借主が通常以上の負担を負うことを認識している
・借主がその負担について合意している
また、最高裁平成17年12月16日判決では、通常損耗まで借主に負担させるには、負担する範囲が契約書に具体的に明記されているなど、明確な合意が必要との考え方が示されています。
さらに、民法621条では、通常の使用による損耗や経年変化は、原則として借主の原状回復義務から除かれています。
ただし、喫煙によるヤニや臭いまで通常損耗になるわけではありません。契約書の特約と、実際の汚損状況の両方を確認することが重要です。
国交省の原状回復ガイドラインの見解
国土交通省のガイドラインでは、クロスについて経過年数を考慮し、6年で残存価値が1円になるよう借主の負担割合を考える方法を示しています。
新品のクロスから使用を始めたと単純化すれば、目安は以下のようになります。
・入居3年:約50%
・入居5年:約17%
・入居6年:残存価値は1円
ただし、これは法律で定められた「負担額の上限」ではなく、ガイドライン上の一般的な考え方です。
また、6年以上住んでいれば原状回復費用が全て1円になるわけでもありません。クロスそのものの価値と、ヤニや臭いを除去するためのクリーニング・消臭作業などは分けて判断される場合があります。
そのため、25万円を請求された場合は、「入居年数が長いから払わなくてよい」と判断せず、クロス張替え、クリーニング、消臭などの内訳を確認しましょう。
敷金ゼロ物件で別途請求された場合でも、金額に納得できなければ、張替面積や単価、作業内容などの明細と請求根拠の説明を求めることが大切です。
まとめ
換気扇の下だけで喫煙していても、室内にヤニや臭いが残っていれば原状回復費用を負担する可能性があります。
ただし、25万円全額が当然に借主負担になるわけではありません。クロスは経過年数を考慮するのが基本で、全体を張り替えるなら汚損や臭いがどこまで広がっているのかも確認する必要があります。
まずは契約書と請求明細を確認し、クロスの張替面積・単価・経過年数・クリーニングや消臭費用の内訳を、管理会社や大家へ確認しましょう。話し合っても解決しない場合は、消費者ホットライン「188」などへ相談する方法もあります。
出典
国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)
e-Gov法令検索 民法
執筆者 : 高柳政道
FP1級、CFP、DCプランナー2級
