推しが持つと欲しくなる? チャオ・ルースーの「編みバッグ」から見る中国の“明星同款”ブームと拡大する「ファン経済」「谷子経済」
こうした「推しと同じものを持ちたい」という気持ちは中国でも見られ、若者たちの間でブームになっているようです。
この記事では、中国における推し活や、中国のファン経済について解説していきます。
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チャオ・ルースー愛用の「編みバッグ」が注目。「明星同款」とは?
中国の人気女優チャオ・ルースー(趙露思)が身に着けたバッグがSNSで注目を集め、ファンが同じ商品を探しだす動きが見られました。中国では、芸能人が身につけた服やバッグ、コスメなどと同じ商品を「明星同款」と呼びます。
「明星」は芸能人やスター、「同款」は同じデザインやモデルを意味し、これらを合わせると「スターと同じ商品」といった意味になります。
チャオ・ルースーは出演ドラマのファッションで注目を集めており、ファンが各話の衣装・バッグ・靴などのブランドや価格をまとめ、ECサイトで本人や役名に関連するキーワードが検索上位に入った例もあります。
そして、近年の中国では、ブランド品だけでなく、編みバッグのような親しみやすいアイテムにも「推しと同じものを持ちたい」という需要が広がっているようです。単なる芸能人の「愛用品紹介」にとどまらず、なぜ中国の若者が明星同款にひかれ、購入・手作り・SNS投稿まで楽しむのかを、次章で見ていきましょう。
「高級だから欲しい」だけではない。中国の若者に広がる“自分が満足する消費”
明星同款といえば「憧れの芸能人が持つ高価なブランド品をまねする消費」をイメージしやすいかもしれません。しかし、中国の若者の消費意識は変化しており、必ずしも「高級だから欲しい」という考え方だけではありません。
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)では、近年の中国で「反向消費」「悦己型消費(自己満足型消費)」「情緒消費」といった言葉が登場していることを紹介しています。これらは、他人からどう見えるかだけでなく、「自分が満足できるか」や「自分が幸福感を得られるか」を重視する広がりを示しています。
こうした消費意識を踏まえると、明星同款も「有名人が持っているから高価でも買う」という単純なものではなく、「好きな芸能人と同じものを持つことで気分が上がる」「自分らしいファッションに取り入れたい」といった感情的な価値から選ばれることも考えられるでしょう。
さらに、編みバッグのようなアイテムなら、完成品を購入するだけでなく、自分で似たデザインをつくる楽しみ方もできます。「推しとおそろい」にするだけでなく、「自分らしいアレンジ」を加えることで、好きなものを自分らしく楽しむことにもつながりそうです。
「推しと同じ」がSNSで広がる。明星同款と中国のファン経済
中国では、推しの芸能人やキャラクターに関連する商品を購入することが、個人の楽しみだけでなく、ファン同士の交流にもつながっています。
ジェトロの「中国のIP商品化に関する市場調査」では、IP関連商品の主要な消費層は若者で、購入した商品を「WeChat」や「抖音」などのSNSで積極的に共有する傾向があり、こうした自発的なコミュニケーションが新たなファンを巻き込む効果を生んでいると分析されています。
こうしたSNSでの共有を明星同款に当てはめると、芸能人の愛用品がSNSで話題になることで、ファンが商品を特定して購入したり、「同款」として同じ商品を身に着けた写真が再び投稿されるなどいった流れで、さらに話題が広がることが考えられます。
そして、「同じバッグを持っている」「同じファッションを再現した」ということ自体が、自分が誰を推しているかを示し、同じファンとの会話を生むきっかけにもなるでしょう。
つまり、明星同款は単なる「芸能人のまね」ではなく、推しへの共感や自己表現、ファン同士のコミュニケーションが重なった消費と捉えることができそうです。
「谷子経済」は1600億元超。中国では“好き”にお金を使う市場が拡大
明星同款とは対象が異なるものの、中国ではアニメ・ゲームなどの「推し」に関連するグッズ消費も大きな市場になっており、若者のファン消費を考えるうえで参考になります。
中国では、アニメやゲームなどのキャラクターグッズを意味する「谷子(グッズ)」という言葉が広まり、中国の調査機関の報告によると、2024年の「谷子経済」の市場規模は前年比40パーセント増の1689億元に達したとされています。
さらに、グッズ販売だけでなく、版権ビジネスやイベント、テーマパークなどを含む「二次元周辺産業」は、2024年に約6000億元に達したとされています。こうした数字からも、ファンによる消費が大きな市場を形成しているといえます。
ただし、「谷子経済」は主にアニメ・ゲームなどのIP関連グッズを対象とするため、芸能人の明星同款と同じ市場として扱うことはできません。一方で、どちらも「好きな対象とのつながりに価値を感じてお金を使う」という点では共通しています。
チャオ・ルースーの編みバッグ人気から見えてくる「明星同款」も、単に有名人と同じ商品を買うブームではなく、推しへの共感や自分らしさ、SNSでの共有が組み合わさった、中国におけるファン消費の一側面として捉えることができるでしょう。
まとめ
中国では、推しと同じものを持つ「明星同款」が注目されており、単に芸能人のまねをするだけでなく、推しへの共感や自分らしさを楽しむ消費にもつながっています。
また、キャラクターグッズを対象とする「谷子経済」も拡大しており、中国では好きなものをきっかけとしたファン消費が大きな市場を形成しています。
推しへの思いが、自分自身の楽しみやファン同士の交流、消費行動へとつながっている点は、明星同款を理解するうえで興味深いポイントといえるでしょう。
出典
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 流行語から読み解く中国の消費マインドの変容
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 中国のIP商品化に関する市場調査 2025年度更新版(11ページ)
独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ) 同人コミュニティーが支える中国「谷子経済」はホンモノか?
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
