「エアコンはつけっぱなしがお得」は本当? スマートメーターで分かるその真偽
配信日: 2020.04.04
筆者はアナログ式の電気メーターが設置されている住宅に住んでいた頃、このうわさを信じて試した結果、電気代が2倍になってしまった経験があります。そのため、うのみにすることはおすすめしません。
ただ、この疑問はスマートメーターがあれば解消します。そこで、今回はスマートメーターのデータを元に、このうわさの真偽について検証します。
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター
保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。
電気代の計算方法をおさらい
家電製品はそれぞれ消費電力が違います。エアコンや電子レンジ、ドライヤーなどは「消費電力」(W)が大きいですが、扇風機や照明器具はそれほどでもありません。
電気代は「消費電力量」(消費電力×使用時間、kWh)を求め、これに「単価」をかけて計算します。消費電力が大きくても使用時間が短ければ、電気代はそれほどかかりません。
例えば、電子レンジを1日中利用し続けることはあまり考えられませんので、消費電力が大きくても電気代はそれほどかかりません。逆に、照明器具は一つひとつの消費電力が小さくても使用時間が長いので、それなりに電気代がかかります。
電力の単価は契約している電力会社や料金プランによって異なります。例えば、東京電力エナジーパートナーの「スタンダードS」というプランでは以下のとおり、月間の消費電力量が増えると単価も上がります。
これに基本料金が加算された金額が毎月の請求額となります(2020年1月28日現在)。
・120kWhまで:19.88円
・121kWhから300kWhまで:26.46円
・301kWh以上:30.57円
消費電力500Wのエアコンを24時間つけっぱなしにすると、1日の消費電力量は500W×24=12kWhなので、仮に単価を一律26円とすれば、電気代は312円となります。これが30日間続くと9360円となります。
スマートメーターがあれば30分ごとの消費電力量が分かる
スマートメーターとは、電気使用量をデジタルで計測することができる、新しいタイプの電力メーターをいいます。
従来のアナログメーターでは月間の消費電力量しか分かりませんが、スマートメーターなら30分ごとの消費電力量が分かります。
スマートメーターが設置されている住宅の場合、東京電力エナジーパートナーなら「くらしTEPCO」というサービスを利用すれば、消費電力量がほぼリアルタイムで分かります。
このデータを観察すれば、エアコンをつけっぱなしにすると電気代が安くなるのかどうかが判明します。
以下のグラフは筆者が1日中、自宅で過ごした1月某日の消費電力量です(くらしTEPCOで直接グラフを見ることができますが、ここではダウンロードしたデータより筆者が作成したものを掲載しています)。
この日は朝9時頃にエアコンのスイッチをオンにし、23時頃まではずっとつけています。
これを見ると、エアコンのスイッチをオンにしてから2時間程度は消費電力量が大きく(最大0.6kWh)なりますが、設定した室温に達してからは30分あたり0.3kWh程度で安定していることが分かります。
また、エアコンを使用していない時間帯の消費電力量が0kWh~0.1kWhの間(0.1kWh未満の値は表示されません)であることから、消費電力量の大半がエアコンで占められていることも分かります。
パターンBはほぼ1日外出していた日のデータです。外出前と帰宅直後にエアコンを使用したため、その時間帯だけ消費電力量が増えています。
その他の時間帯は待機電力のみで、パターンAと同様に30分あたりの消費電力量は0kWh~0.1kWhの間であることが分かります。
一定の時間以上、エアコンが不要ならオフにしたほうがお得
エアコンをずっとオンにしている間の消費電力量は30分あたり0.3kWh程度で、オフにしている間は0kWh~0.1kWhの間です。筆者のケースでは、この差がエアコンの消費電力量だとみて差し支えないと考えています。
この結果を見る限り、スイッチをオンにしてから室温が設定温度になるまでの消費電力量を考慮しても、ずっとつけっぱなしにするのが決してお得でないことは明らかです。3~4時間以上、エアコンが不要ならオフにしたほうが良いと考えられます。
ただし、以上の検証は外気温、部屋の広さ、気密性、エアコンの性能などさまざまな条件で結論が変わる可能性があります。また、今回は冬のデータのみで検証していますが、夏と冬で結論が変わる可能性もあります。
なお、スマートメーターの設置は順次行われていますが、電力会社にスマートメーターへの変更を依頼しても、現在のメーターの検定有効期間が満了するまでは設置してもらえないようです。
しかし、電力会社を「新電力」(大手電力10社以外の事業者)に切り替えれば優先的に設置してもらえます。スマートメーターに興味のある方は、新電力への切り替えを検討してみてください。
[出典]
東京電力エナジーパートナー「料金のご案内」
東京電力エナジーパートナー「くらしTEPCOのご紹介 ~4つのうれしい~」
執筆者:横山琢哉
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター