更新日: 2020.07.23 その他暮らし
マイホーム購入で失敗したくない!不動産業者の見極め方
不動産を購入する時、新築マンションや一部の建売戸建てなどを購入する場合は、デベロッパーや建売業者などから直接購入することが多いと思いますが、中古マンションや中古戸建て、土地などを購入する際には不動産業者が仲介することがほとんどです。
そしてその不動産業者がどんな仕事の仕方をしているかによって、購入条件に差が出てしまうことがあります。今回は不動産購入の際の、不動産業者の見極め方についてお伝えします。
執筆者:西山広高(にしやま ひろたか)
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)、上級相続診断士、宅地建物取引士、宅建マイスター、西山ライフデザイン代表取締役
http://www.nishiyama-ld.com/
「円満な相続のための対策」「家計の見直し」「資産形成・運用アドバイス」のほか、不動産・お金の知識と大手建設会社での勤務経験を活かし、「マイホーム取得などの不動産仲介」「不動産活用」について、ご相談者の立場に立ったアドバイスを行っている。
西山ライフデザイン株式会社 HP
http://www.nishiyama-ld.com/
不動産業者は味方とは限らない
マイホームを購入したいと考え、不動産業者に「こんな条件で物件を探している」という話をすると多くの不動産業者は、喜んでお手伝いをしてくれます。少なくともお客さんがそう感じるように振る舞います。その時点で、もし感じが悪いと感じたら付き合わないほうが良いでしょう。
不動産業者は契約が成立し、物件探しを依頼した人から仲介手数料を受領することで報酬を得ますので、お客さんに愛想がいいのは当たり前ともいえます。
しかし、不動産業者にとって、購入希望者はお客さまですが、必ずしも購入者の味方とは限りません。
本当に購入者に最大のメリットを提供するように動いているかといえば、そうとはいえないのが現実です。特に不動産業者が売主と買主の双方から手数料を受領する「両手取引」を行おうとしている場合、むしろ売主側の味方になることも少なくありません。
両手取引の問題点
1つの業者が売主、買主の双方から仲介手数料を受領する取引を「両手取引」と言います。不動産業者には「不動産を売りたい」という依頼もあります。その不動産をその業者の仲介で売却した場合、不動産屋さんは売主からも手数料を受領できます。
もし、自社で売却を頼まれた物件を、自社を訪れた購入希望のお客さんに売却した場合、その不動産屋さんは売主さんと買主さんの両方から仲介手数料を受領できます。
仮に、物件価格が5000万円だった場合、売主、あるいは買主が不動産業者に支払う仲介手数料は3%+6万円(税抜)と「国土交通省の通達で定められていますので、それぞれから156万円+消費税10%で最大171.6万円をそれぞれから受領できることになります。
この「両手取引」には問題点があります。売主はきっと「なるべく高く売りたい」と考えているでしょうし、買主は「なるべく安く買いたい」と考えるでしょう。双方の希望が相反することになります。
しかし、売主と買主の間に入る仲介業者がこの金額を調整、場合によっては操作することも可能になってしまいます。
もし、5500万円で気になる物件が売りに出されていたとします。しかし、予算は5000万円まで。予算を超えているため値引き交渉をしたいと考えます。
ちょっとこの金額は厳しいかな? と思いつつ、「4800万円でならば買いたい」と意思表示したところ、不動産屋さんから「売主さんに話しましたが、その値段ではさすがに売れない。5300万円でなら応じますとのことです」という返答がありました。
5300万円ではまだ予算を大きくオーバーしているので、何とか予算を少し引き上げ、「5100万円ではどうでしょう。この金額でダメなら諦めます」と再度価格を提示しました。
さてこの時、不動産業者としては「売主さんが5100万円まで了承してくれれば売れる」「買主さんが5300万円まで予算を上げてくれれば売れる」という状態になります。5300万円で決まれば業者が得られる手数料が増える一方、もし交渉が決裂すれば手数料を手にすることができません。
不動産業者の営業マンの多くは、成約件数や仲介手数料の額を営業成績のノルマとして課せられているケースも少なくありません。
どうしてもこの契約を成立させたいと考え、不動産業者が売主に5100万円に応じてもらえるよう交渉してくれれば、買主さんとしてはありがたいでしょう。
しかし、不動産業者がこの売り物件を仲介する権利を確保していれば、仮にこの取引が不調に終わってもチャンスがあるかもしれません。
多くの不動産屋さんは「両手取引」を行っていますが、このような背景を考えると売主の機嫌を損ねたくない、という気持ちのほうが強くなる可能性は高いかもしれません。
不動産業者との信頼関係が大切
購入の際の条件交渉は不動産業者を介して行うことになるため、特に「両手取引」の場合、には取引の相手方に正しく話が伝わらなかったり、場合によっては恣意的に条件を調整されてしまったりすることもあり得ます。
売主、買主とも不動産業者を介して交渉するため、買主は書面による買付申込などを行わないと売主に正しい条件提示ができないばかりか、売主にとって不都合な情報がふせられて伝わることもあります。
不動産の取引では価格のほかにも、引渡時期を含めてさまざまな条件を調整します。不動産業者は不動産取引のプロですが、売主さんも買主さんもほとんどの方がそう何度も不動産取引を経験するわけではなく、その情報量、知識量には大きな差があります。
この知識の差、情報量の差を埋めるためにも不動産業者を選ぶ際には、本当に自分の立場に立って考えてくれるかどうかを見極めることが重要です。
多くの不動産はどの不動産業者でも仲介できます。売主と媒介契約を締結し、売り物件を預かった不動産業者は原則としてレインズという業者間の情報サイトに物件を掲載し、広く買主を募ることを義務付けられています。
まとめ
後になって、「うまく丸め込まれたんじゃないか」「ちゃんと情報を伝えてくれなかったんじゃないか」と疑心暗鬼になるような業者とは付き合うべきではありません。
安全に納得して取引を行うためにも、買主の希望をきちんと伝え、買主の立場に立ってその希望を実現する不動産業者を選ぶことが非常に重要です。
両手取引をしないことを公言している不動産業者はまれです。交渉途中でも、不信を感じた場合には業者を乗り換えるという選択肢もあります。大きな買い物になるマイホーム。安心して長く住むためにも後悔しない選択をしていただきたいと思います。
執筆者:西山広高
ファイナンシャル・プランナー、宅地建物取引士、西山ライフデザイン代表取締役