コロナ禍で事業者がすべきこと、リストラ=人員削減ではない!

配信日: 2020.10.27

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コロナ禍で事業者がすべきこと、リストラ=人員削減ではない!
帝国データバンクの調査結果では、新型コロナウイルス関連倒産は、全国で446件となっています(2020年9月1日 13:00時点)。これまでゼロであった高知県で倒産があり、全都道府県でコロナ関連倒産があったことになります。
 
月別に見ると、4月に80件以上と急増、6月に103件となって以降、7-8月は前月を下回って推移し、少しずつ回復基調にあるようです。
 
その背景には、緊急融資や金融機関・取引先のリスケ(リスケジュール)対応などの各種支援が功を奏しているようですが、一方で支援に依存しながら経営を維持している企業もまだまだ多いのが現状です。現在の状況が長引けば、やがて体力を失う企業も多くなるでしょう。
黒澤佳子

執筆者:黒澤佳子(くろさわよしこ)

CFP(R)認定者、中小企業診断士

アットハーモニーマネジメントオフィス代表
栃木県出身。横浜国立大学卒業後、銀行、IT企業、監査法人を経て独立。個別相談、セミナー講師、本やコラムの執筆等を行う。
自身の子育て経験を踏まえて、明日の子どもたちが希望を持って暮らせる社会の実現を願い、金融経済教育に取り組んでいる。
また女性の起業,事業承継を中心に経営サポートを行い、大学では経営学や消費生活論の講義を担当している。

https://www.atharmony-office.jp/

事業のスリム化:売上が見込めない中で利益を出すには?

事業の収益の仕組みを簡単に表すと、「売上-経費=利益」です。では利益を出すにはどうすればよいでしょう?答えは3つです。
 
(1)売上を伸ばす
(2)経費を減らす
(3)(1)と(2)の両方

 
簡単な仕組みなのですが、コロナ禍の下では、売上が見込めないため、必然的に経費削減を迫られることになります。事業のスリム化を図るための経費削減において、最も有効なのは固定費を減らすことです。
 
固定費とは、売上に関係なく一定程度かかる経費のことで、人件費や店舗家賃、広告費などは固定費です。固定費の対局は変動費ですが、変動費は売上に連動してかかる経費であり、材料費や仕入などです。
 
同じ金額を減らした場合、固定費を減らしたほうが、変動費を減らすよりもコストカットの効果が高いといわれています。なぜなら、損益分岐点が低くなるからです(以下、計算式参照)。
 
損益分岐点売上高の計算式

 

事業のスリム化:やってはいけないコロナ解雇

新型コロナウイルスの影響による雇止めや解雇、いわゆる「コロナ解雇」が5万人を超えました(厚生労働省、2020年8月31日時点)。非正規労働者を中心に、5月以降1カ月で約1万人が解雇されています。初期のころは旅館業や飲食業が多かったのですが、ここにきて製造業や小売業のコロナ解雇が増えてきました。
 
なお、この数字は把握できた数であり、実際はもっと多いと思われます。中には解雇という形態をとらずに、自主退職の形をとるよう促す(強要する?)ケースもあるようです。
 
会社が従業員を解雇できるのは、
・人員削減が必要であること
・業績不振に対し、会社側の努力がみられること
・解雇を回避するための努力を尽くしたこと
・対象者選定に合理性があること
・労働者との協議を尽くしたこと

 
人件費は会社の経費の中で最も大きな比率であることが多く、経営者の計算上は真っ先に人員整理に手を付けたくなるのですが、何より、働く者のモチベーションを低下させます。人員整理をした会社に残された従業員たちは、「辞めた人の分も働いて、成果をあげよう」と思うのではなく、「明日はわが身?」とビクビクするようになります。
 
そして以前よりも働かなければいけないので、余裕がなくなり、疲弊していきます。辞めた人の2倍働く人を同賃金で採用できればよいですが、そんなことはまずありません。経営者は社員とその家族の生活を支えているので、人を減らすことは最後の手段なのです。
 
執筆者:黒澤佳子
CFP(R)認定者、中小企業診断士


 

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