更新日: 2021.01.08 その他暮らし
死後離婚したら、年金や相続はどうなる?
死後離婚が年金や相続に与える影響など、死後離婚について今多くの方が気になっている点について解説していきます。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
死後離婚とは
死後離婚とは、配偶者の死後、配偶者の親族との姻族関係(結婚により生じた親族関係)を解消させることをいいます。
離婚した場合は当然に配偶者の親族との姻族関係も解消されるのですが、死別の場合そうはいかず、配偶者がその意思を示すことで初めて姻族関係が解消されるのです(民法728条2項)。
なぜ死後離婚が増えている?
死後離婚を選ばれる背景には、配偶者の生前からの我慢や金銭的な理由という点があります。例えば、長年姑と仲が良くなかった、配偶者と折り合いが悪く離婚を我慢していた、同じ墓に入りたくない、配偶者の死後にまで配偶者の親族の面倒を見たくないといったものが多いようです。
死後離婚の手続きは?
死後離婚を行うための手続きは「姻族関係終了届」と呼ばれます。姻族関係終了届は届け出をしたい人の本籍地や所在地の市区町村役場にて行います。手続きの際に必要なものは以下のとおりです。
・姻族関係終了届書
・戸籍謄本(本籍地で届け出をする場合は不要)
・届け出をする人の印鑑
なお、姻族関係終了届には提出期限がない上、亡くなった配偶者の親族側の承諾も不要です。よく考えた上で提出するようにしてください。
ただ、姻族関係終了届を出しても姓は変わらないため、姓を婚姻前のものに戻したい場合は別途復氏の手続きをする必要があります。死後離婚をせずとも復氏届のみをするといったことも可能です。
死後離婚は相続と無関係
死後離婚をしたとしてもそれは相続とは無関係であり、通常どおり相続をすることができます。例えば、死後離婚をしたからといって、亡くなった配偶者の遺した財産の相続人になれないということはありません。なぜなら、死後離婚は亡くなった配偶者の親族との関係を終了させる手続きであるからです。
相続は亡くなった時点で発生し、その時点で配偶者であれば相続人となっているため、死後離婚は相続に影響を及ぼさないのです(民法882条、同890条)。
当然、死後離婚が相続放棄の意思となされることもなく、遺族から遺産を返せと言われても返す必要がありません。
死後離婚は年金にも影響を及ぼさない
死後離婚をしたとしても問題なく遺族年金(遺族基礎年金や遺族厚生年金など)を受け取ることができます。
なぜなら、死後離婚は亡くなった配偶者の親族との関係を解消する手続きであり、遺族年金の受給資格にはなんら影響を及ぼさないからです。その後、再婚など支給停止となる条件を満たさない限り、死後離婚の後も遺族年金を受け続けることができます。
死後離婚はよく考えて行うべき
死後離婚は、配偶者の死後に配偶者の親族との姻族関係を解消させるための手続きになります。死後離婚をしたとしても、自身の相続や年金には影響を一切及ぼさず、亡くなった配偶者の遺した財産を相続し、遺族年金も受け取ることができます。
しかし、死後離婚をしてしまうとその届け出は基本的に撤回することはできません。死後離婚をするのであれば、十分に検討してから行うようにしてください。
参考
大阪市 姻族関係終了届
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・支給開始時期・計算方法)
執筆者:柘植輝
行政書士