更新日: 2021.01.09 その他暮らし

個人事業主が知っておくべきこと 小規模企業共済とは何か?

個人事業主が知っておくべきこと 小規模企業共済とは何か?
小規模企業共済という制度があります。これは小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立てによる退職金制度です。
 
会社員や公務員などの被用者と比べて個人事業主は社会保険で必ずしも恵まれていないのですが、小規模企業共済は税制的にも優遇されていて、小規模事業者にとって知っておくべき制度です。この記事では小規模企業共済の税務メリットについて解説したいと思います。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

小規模企業共済の対象と目的

小規模企業共済は、小規模企業の経営者や役員、個人事業主などのための積み立てによる退職金制度です。
 
「小規模」とは業種によって従業員の人数で決められており、建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などの場合は、常時使用する従業員の数が20人以下、商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合は、5人以下の小規模の個人事業主または会社の役員の方などを指します。
 

小規模企業共済の仕組み

個人事業主が小規模企業共済に加入する場合の仕組みについて解説します。
 
掛け金は月額1000円から7万円の間で、500円刻みで選択することができます。掛け金の増減は可能です。事業をしている間、毎月積み立てていきますが、個人事業主が廃業・死亡した場合に共済金を受け取ることができます。
 
そのほかにも、老齢給付(65歳以上で180ヶ月以上掛け金を払い込んだ場合)または、個人事業を法人成りした場合などにも共済金を受け取ることが可能で、受け取りの事由により、共済金の金額が変わってきます。
 
掛け金は中小機構が予定利率1%で運用するので、元本割れのリスクはありません。受取金は一括払い、分割払いまたはその組み合わせが可能です。
 

小規模企業共済の節税効果

掛け金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となります。
 
これは個人型確定拠出年金(iDeCo)と同様です。共済金もiDeCoと同様、分割払いの場合は公的年金等控除が適用され、一括払いの場合は、退職所得控除が適用されます。
 
次の前提で節税効果を反映した利回りを算出してみましょう。

  • 掛け金:毎月1万円
  • 加入期間:10年
  • 請求事由:個人事業の廃業
  • 共済金A:(廃業の場合の共済金)129万600円
  • 加入期間中の課税所得:500万円

 

1年当たりの節税額
所得税の節税額 1万円×12ヶ月×20%=2万4000円
住民税の節税額 1万円×12ヶ月×10%=1万2000円
1年間の節税額計 3万6000円
10年間の節税額 3万6000円×10年=36万円 
(掛け金計120万円の30%)

 

掛け金の全額が所得控除になるというだけで、掛け金の30%相当の節税効果が期待でき、10年間の累計では、掛け金120万円に対し36万円の節税効果が出てきます。もし、課税所得がさらに大きければ、もっと大きな節税効果が期待できます。
 
これに対し、運用益は次のとおりです。

  • 共済金A (129万600円÷120万円)-1=7.55%(10年)
  • 運用益年利回り:7.55%÷(10年÷2)=1.51%*
  •  
    *10年間の間、毎月掛け金を積み立て120万円になるので、金利計算上の積数は当初120万円を一括投資した場合と比べると1/2になるので、10年を2で割って計算します。

 
すなわち、運用利回り1.51%に加えて、年間の掛け金の30%相当が節税額として毎年還付ないし減額されるということになります。これはかなり大きなメリットです。
 

まとめ

これだけ大きな節税効果があるので、小規模企業共済に加入する価値はあると思います。
 
注意すべきは、節税効果といっても、所得税は税の還付、住民税は税の減額という形で受け取ることになるので、廃業したときに現金で受け取るわけではないことです。節税分を毎年貯蓄して翌年の掛け金に回すことをきちんとやらないと節税メリットはいつの間にかどこかへ行ってしまいます。
 

出典 中小機構 小規模企業共済とは
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
 

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