住宅ローンを完済した後に必要な手続きとは

配信日: 2019.05.30 更新日: 2021.03.03

この記事は約 8 分で読めます。
住宅ローンを完済した後に必要な手続きとは
最低でも10年以上にわたる長い住宅ローン。やっと完済するとなると安心ですよね。ただ、「住宅ローンを完済したら、そのまま何もせず終わり」ではありません。いくつか手続きを行う必要があります。
 
そこで今回は住宅ローンを完済したら行う手続きの内容とその注意点について解説していきます。完済した時に忘れないように、しっかりと覚えて理解しておきましょう。
 
川添典子

執筆者:川添典子(かわぞえ のりこ)

ファイナンシャルプランナー2級

住宅ローンアドバイザー
明治学院大学英文科卒業後、大手ハウスメーカー就職。
住宅販売の営業職として、顧客開拓、住まいづくりの提案、資金計画相談、販売後のアフターフォローを担当。
仕事を通して、お客様の一番の関心事と不安はお金に関する事だと感じ、ファイナンシャルプランナー2級と住宅ローンアドバイザーの資格を取得。
ハウスメーカーを退職後、暮らしに役立つライターとして、お金に関する知識や情報を提供しています。

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住宅ローン完済後の必要な手続き

住宅ローンを完済したら、3つの手続きを行う必要があります。その3つは以下の通りです。
 
・抵当権の抹消手続き
・全額繰り上げ返済の手続き
・火災保険の質権消滅手続き

 
この3つとなりますが、この3つの中で必ずしなければいけない手続きは1番目の「抵当権の抹消手続き」です。抵当権の抹消手続きについては次の章で触れていきます。
 
まず、「全額繰り上げ返済の手続き」ですが、住宅ローンの残債が少なくなったところで一括返済する方もいます。この時に繰り上げ返済の手続きが必要になります。
 
繰り上げ返済の仕方は、住宅ローンを利用している金融機関に繰り上げ返済する旨を伝えます。繰り上げ返済をする場合は、1ヶ月前くらいまでには連絡しておきましょう。
 
「火災保険の質権消滅手続き」は、こちらも手続きが必要な人が行います。加入している火災保険に質権が設定されている場合には、解除する手続きが必要になります。
 

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必ず行う抵当権の抹消

先述した「抵当権の抹消手続き」ですが、こちらは必ず手続きしなければいけません。
 
住宅ローンの返済中は、万一返済できなかった時のために、不動産を担保にして抵当権が設定されています。この抵当権は住宅ローンを完済しても自動的に抹消されないもので、自分自身で抵当権抹消の手続きをする必要があります。
 
仮に抵当権を抹消せずにそのまま放置していると、抵当権が不動産に残ったままになります。抵当権が残ったままだと売却できないことがほとんどです。
 
老後にマンションに住み替えたり、子どもと二世帯住宅にしたりするかもしれません。抵当権が設定されたままだと、その際に不利になってしまう可能性があります。
 

抵当権抹消の手続きはどうやってするの?

抵当権を設定する際には、“抵当権設定登記”を行いますが、抹消する際にも“抵当権抹消登記”を行います。抵当権抹消の手続きは自分自身でできます。
 
金融機関から送られてくる「委任状」「抵当権設定契約証書」などの書類を揃えて、「登記識別情報(権利証)」と一緒に管轄の法務局で抵当権抹消の申請をします。
 
また、抵当権抹消登記にかかる登録免許税は、不動産1物件につき1000円です。戸建て住宅の場合には、土地と建物で合計2000円になります。
 
法務局のホームページを見ると申請書のひな型があるので、それを参考にしながら作成したり、法務局に直接相談したりと自分で手続きが可能です。それでも自分で手続きを行うのが心配な方は、費用がかかってしまいますが、専門家に依頼することもできます。
 

忙しい人は司法書士に任せるという手段も

住宅ローン完済後の抵当権抹消手続きを、すべて自分でするのは大変です。書類の準備や法務局への相談、申請など、手間と労力がかかり多くの時間を費やすことになります。日々時間を確保できる人であればよいですが、仕事や家事等で忙しい人だと簡単なことではありません。仕事やプライベートに影響が出る可能性があります。
 
「仕事等で忙しい」「面倒な作業はしたくない」という人は、司法書士に任せることも考えましょう。抵当権抹消手続きを司法書士に委託する場合は、自分で手続きをするより1万円〜2万円費用は高くなりますが、すべての作業をお任せできます。
 
自分で登記をすると手続きだけに気を取られ、登記上の他の問題点を見過ごすことも考えられます。
 
抵当権抹消手続きを、司法書士に依頼するメリット・デメリットは次のとおりです。
 

●メリット

・すべての作業を任せられる
・手間や労力がかからない
・手続きにほとんど間違いがない

 

●デメリット

・自分で手続きをするよりお金がかかる
・手続き方法を覚えられない

 
司法書士に委託をする場合は、依頼の連絡や委任状作成、金融機関から届く書類の郵送くらいで済みます。法務局へ行く必要もなく、書類の作成や申請、回収等はすべて司法書士が行うため、時間を取られません。
 
忙しい人や面倒に感じる人は、司法書士に任せることも考えてみてください。司法書士に任せた場合の費用は、次項で詳しく解説します。

 

司法書士に抵当権の抹消を委託した場合の費用相場

抵当権の抹消手続きを司法書士に委託する場合は、1万5000円〜2万5000円程度の費用がかかります。費用は、抵当権の抹消をしたい不動産や手続き方法などによって変わります。
 
以下は、抵当権抹消手続きの際に発生する費用内容です。
 
●登録免許税
登記手続きの際に納める税金です。不動産1つにつき1000円の登録免許税がかかります。一戸建ての場合で土地と建物の抵当権抹消手続きをする際は、不動産が2つとなるため登録免許税は2000円です。もし、土地が分筆されている場合は、不動産の数が増えるため登録免許税も高くなります。
 
●事前調査費用
事前調査費用は、抵当権を抹消したい土地や建物の登記内容を調査する際にかかる費用です。不動産1つにつき334円〜600円の事前調査費用がかかります。事前調査方法は「登記事項証明書の取得」「法務局の登記情報提供サービス」これら2つがあります。
 

・登記事項証明書の請求費用:1件600円
・登記事項証明書をオンラインで請求・送付:1件500円
・登記事項証明書をオンラインで請求・窓口受取:1件480円
・法務局の登記情報提供サービス:1件334円

 
など、確認方法によって費用が変わります。
 
●謄本取得費用
不動産の抵当権抹消手続きが完了した後に、抹消されている確認するために取得する登記事項証明書(登記簿謄本)の費用です。不動産1つにつき600円で、オンラインで請求する際は500円になります。
 
●司法書士報酬
抵当権の抹消手続きを司法書士に委託する場合は、司法書士報酬が発生します。司法書士へ支払う手数料のことで、相場は1万円〜2万円程度です。報酬額は司法書士によって異なります。
 
例えば、一戸建ての土地・建物の抵当権抹消手続きをする場合、司法書士に委託すると以下の費用がかかります。
 

●一戸建て(土地・建物)の抵当権抹消手続きを司法書士に依頼する場合

・登録免許税:2000円(土地・建物)
・事前調査費用:1200円(600円×2)
・謄本取得費用:1200円(600円×2)
・司法書士報酬:2万円
合計:2万4400円程度 ※税別

 
事前調査方法や謄本取得方法、司法書士報酬によって費用は安くなることもありますが、念のため2万4000円程度見ておくと良いでしょう。また、上記費用以外には、交通費等がかかります。
 
以下は、上記と同じ条件で司法書士に依頼せず、自分で抵当権抹消手続きをした場合の費用概算です。
 

●一戸建て(土地・建物)の抵当権抹消手続きを自分で行う場合

・登録免許税:2000円(土地・建物)
・事前調査費用:1200円(600円×2)
・謄本取得費用:1200円(600円×2)
・司法書士報酬:0円
合計:4400円程度 ※税別

 
このように、抵当権抹消手続きを自分で行う場合は、司法書士報酬が発生しないため5000円以下の費用に抑えることが可能です。ただし、書類の準備や作成など、抵当権抹消手続きには手間と労力がかかるため、司法書士に依頼するのが一般的となっています。
 
住宅ローン完済後の抵当権抹消手続きは、4000円〜2万5000円程度の費用がかかることを押さえておきましょう。少しでも費用を抑えたい場合は、複数の司法書士事務所を比較して報酬が安いところを選んでみてください。
 

まとめ

住宅ローンを完済したら何もせず終わりではない、ということがお分かりいただけたと思います。抵当権の抹消だけでなく、人によってはそのほかの手続きも必要です。
 
手続きする際には、いくつか書類を揃えたりしなければいけませんから、少し難しく、煩雑に思ってしまうかもしれません。住宅ローンがもうすぐ完済という方は、ぜひ意識してみてください。
 
※2021/3/3 内容を一部修正させていただきました。
 
執筆者:川添典子(かわぞえ のりこ)
ファイナンシャルプランナー2級
 

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