定年した父が、引っ越しを考えているようです。老後資金のために自宅を売って、公営住宅に移ることは可能なのでしょうか?年収以外の条件を解説!
公営住宅は、住宅に困っている低所得者へ低廉な家賃で賃貸することを目的とした住宅です。そのため、収入基準を満たすだけで必ず入居できるわけではありません。
自治体や募集区分によっては、持ち家の有無や現在の居住地域、世帯構成なども申込条件に関わります。自宅を売却する前に、希望する自治体の申込条件を確認しましょう。
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持ち家がある人は原則申し込めない自治体もある
公営住宅は、一般の賃貸住宅より家賃を安くすることだけを目的とした制度ではありません。国土交通省の案内では、公営住宅は、住宅に困窮する低額所得者などに対して、低廉な家賃で供給するために整備された住宅とされています。
公営住宅法では、入居資格として収入基準に加え、「現に住宅に困窮していることが明らかであること」を求めています(第23条)。
そのため、十分に住める自宅を所有している人は、「現在、住宅に困っている」という条件を満たさないと判断される場合があります。たとえば名古屋市営住宅では、入居予定者の中に自分名義の住宅を持っている人がいる場合、原則として申し込めません。
ただし、入居までに売却などによって自家所有者でなくなる場合は、申し込みが可能とされています。つまり、「持ち家を持っている状態では絶対に申し込みできない」とも限りません。
定年した父が自宅を売却してから市営住宅へ移る、という選択肢も条件次第では考えられます。
ただし、これは名古屋市の例です。自治体によって、自宅をいつまでに処分する必要があるのか、申込時点で売却済みでなければならないのかなど、条件が異なる場合があります。
収入以外にも年齢・居住地・世帯構成などの条件がある
公営住宅では、収入だけを確認しているわけではありません。
たとえば名古屋市営住宅では、一般的な世帯について所定の方法で算出する所得月額が15万8000円以下という収入基準に加え、申込者本人の住所地または勤務地が名古屋市内にあること、現在何らかの理由で住宅に困っていることなどが条件になっています。
高齢者など一定の世帯では、通常より収入基準が緩和される場合もあります。
名古屋市では、申込者本人が60歳以上で所定の世帯要件を満たす場合など、一定の「裁量階層世帯」に該当すると、所得月額21万4000円以下まで収入基準が緩和されます。
また、単身で申し込む場合にも条件があります。東京都の都営住宅では、5月・11月の定期募集の単身者向について、60歳以上であることなど、所定の資格要件のいずれかを満たす必要があります。
東京都内に継続して3年以上住んでいることや住宅に困っていること、所得基準を満たすことなども必要です。つまり、「定年して年収が低くなったから公営住宅へ入れる」と単純には判断できません。
父が一人暮らしをするのか、配偶者と一緒に入居するのかによっても申し込める住宅が変わります。
また、退職したばかりの場合、前年には給与収入が多かったこともあります。東京都では、前年から申込時までに退職して現在の所得が減少している場合、「現在の所得」で判定できるケースもあります。
定年直後だから前年の年収が高くて無理だと決めつけず、自治体へ確認してみましょう。
自宅を売る前に公営住宅へ入れる見通しを確認する
最も注意したいのは、「公営住宅へ移ればよい」と考えて先に自宅を売ってしまうことです。公営住宅は、申込資格を満たしていても必ず希望した時期に入居できるわけではありません。
募集戸数に対して申込者が多ければ、抽選などによる選考があります。高齢者世帯などを優先的に扱う制度もありますが、運用は自治体によって異なります。
そのため、自宅の売却代金を老後資金へ回す計画なら、まず希望地域の公営住宅について、入居条件、募集時期、単身申込みの条件、自宅売却のタイミングを確認しましょう。
「入居するまでに自宅を売ればよい」という自治体なら、公営住宅へ申し込み、自宅売却の準備を並行して進める方法も考えられます。また、公営住宅だけに絞る必要もありません。
地域によっては、UR賃貸住宅、住宅供給公社の賃貸住宅、高齢者向けの民間賃貸住宅などもあります。希望する時期や地域に合う住まいがないか、あわせて検討してみましょう。
売却後に住む場所が決まらない事態を避けるためにも、自宅を売る前に転居先の見通しを立てておくことが大切です。
まとめ
定年後に自宅を売却し、公営住宅へ移ることは条件を満たせば可能です。
ただし、公営住宅は住宅に困っている低所得者を対象とする制度なので、持ち家がある人は原則として申し込めない自治体があります。一方、名古屋市営住宅のように、入居までに自宅を売却して自家所有者でなくなる場合は申し込めるところもあります。
さらに、所得基準だけでなく、「現在住宅に困っていること」が必要で、自治体や募集区分によっては、現在の居住地、世帯構成、単身入居の場合の年齢なども条件になります。
自宅を売ればまとまった資金を老後へ回せますが、公営住宅へ必ず入れるとは限りません。
先に売却するのではなく、まず自治体の住宅担当窓口へ「持ち家を売却予定だが申し込めるか」を確認しましょう。入居までの見通しを立ててから売却を進めれば、老後資金を確保しながら住まいも安定させやすくなります。
出典
国土交通省 中部地方整備局 公営住宅とは
e-Gov 法令検索 公営住宅法
名古屋市公式ウェブサイト 市営住宅の申込資格
名古屋市公式ウェブサイト 市営住宅の収入基準
東京都住宅政策本部 都営住宅の入居資格|2.定期募集(5月・11月)
東京都住宅政策本部 所得基準
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
