夫が定年を機に、退職金で趣味のバイクを買いたいと言い出しました。老後に備えた貯金と年金があるのに、退職直後からまとまったお金を使っても大丈夫なのでしょうか?
しかし、退職金は給与のように翌月また入ってくるお金ではありません。購入してよいかは、退職金の額だけでなく、今後の年金収入、毎月の生活費、住宅や医療など将来の支出まで確認して判断する必要があります。まず「バイクを買った後でも生活資金に余裕があるか」を数字で確認しましょう。
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退職金が多く見えても老後は毎月取り崩す可能性がある
たとえば退職金としてまとまった金額が口座に入ると、「200万円くらい趣味に使っても大丈夫だろう」と感じやすくなります。
しかし、老後は給与収入が大きく減る人も多く、年金だけで毎月の支出を賄えなければ、その差額を貯蓄から取り崩すことになります。
総務省の2025年家計調査では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯で、可処分所得は月平均22万1544円、消費支出は26万3979円でした。平均値を単純に比較すると、毎月約4万2000円を資産などから補う計算になります。
ただし、この統計の世帯主の平均年齢は77.6歳であり、定年直後の夫婦だけを対象にした数字ではありません。
また、自分たちの家計がこの平均と同じとは限りません。年金だけで十分生活できる家庭もあれば、住宅ローンや家賃が残っていて毎月大きく不足する家庭もあります。そのため、バイクを買う前に、夫婦が実際に受け取れる年金の手取りと、現在の生活費を並べてみましょう。
毎月3万円不足するなら年36万円、毎月8万円なら年96万円を資産から補うことになります。「退職金がいくらあるか」だけでなく、「毎年いくら減っていく家計なのか」を見ることが重要です。
バイクは購入代金だけでなく買った後にも費用がかかる
もう一つ確認したいのが、バイクを所有し続けるための費用です。
購入時には車両代だけでなく、ヘルメットやウェアなどをそろえることがあります。購入後も、燃料代、保険料、税金、駐車場代、点検・整備費、消耗品の交換などが必要です。
バイクには自賠責保険(共済)への加入が義務付けられています。また、国土交通省の案内では、排気量250ccを超えるバイクは車検の対象です。継続して所有するなら、こうした費用も見込んでおく必要があります。
仮にバイク本体が100万円だからといって、「老後資金から減るのは100万円だけ」とは考えないほうがよいでしょう。
たとえば年間の維持費を仮に15万円と見積もれば、10年間で150万円になります。実際の金額は車種、走行距離、保険、駐車環境などによって大きく変わります。
購入前には、販売店で初年度に必要な総額を聞き、毎年かかる費用も夫婦で見積もっておくと安心です。
逆に、老後の家計を計算しても十分な余裕があり、維持費も問題なく払えるのであれば、「退職後だから趣味にお金を使ってはいけない」と考える必要はありません。生活に必要な資金を確保したうえで、余裕資金を退職後の楽しみに使うことも一つの選択肢です。
買う前に「使ってはいけないお金」と分けておく
バイク購入で大切なのは、老後資金の全部を一つの口座残高として考えないことです。
まず今後の生活費を補う資金、住宅の修繕や車の買い替えなど予定している大きな支出、医療・介護など将来必要になる可能性のある支出に備える資金を整理します。そのうえで残る余裕資金から、趣味にいくら使えるか考えます。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)も、リタイア後のライフプランを考える際には、収支だけでなく、物価上昇や長生きによる経済的なリスクも考える必要があるとしています。
たとえば「退職金から先にバイク代を引いて、残った金額で老後を考える」のではなく、「老後に残しておきたい資金を先に確保し、残りからバイク代を出す」という順番です。
希望するバイクが予算を超えるなら、中古車にする、購入時期を1年遅らせる、現在の趣味費から一定額を積み立ててから買うなどの方法もあります。「今すぐ買うか、諦めるか」の二択にしなければ、夫の希望と老後の安心を両立しやすくなります。
まとめ
退職直後に退職金でバイクを買うこと自体が、必ずしも無理な使い方というわけではありません。
年金と貯蓄で今後の生活を維持でき、バイク購入後も十分な余裕資金が残るのであれば、長年やりたかった趣味へお金を使うのも老後資金の一つの使い方です。
ただし、退職金はまとまった金額だからこそ、購入価格だけを見て判断しないことが大切です。バイクを持ち続けるための維持費まで計算し、年金で不足する生活費、住宅修繕、医療・介護などに備える資金を先に確保しましょう。
そのうえで残った余裕資金の範囲なら、「老後だから使わない」のではなく、楽しみに使う選択もできます。夫婦で金額を見える化してから決めれば、バイクを購入した後に「こんなはずではなかった」と後悔するリスクを減らせます。
出典
総務省統計局 家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2025年(令和7年)平均結果の概要
国土交通省 自賠責保険・共済に加入するには
国土交通省 東北運輸局 青森運輸支局 二輪車の検査
J-FLEC 金融経済教育推進機構 リタイア後のライフプラン戦略
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
