退職金を受け取った夫が「せっかくだから今のうちに使おう」と話しています。「老後資金」として残しておくより、人生を楽しむために使った方がよいのでしょうか?
退職金は老後の生活を支える重要な資金ですが、お金を残すこと自体が人生の目的でもありません。大切なのは、将来必要になるお金を確保したうえで、余裕資金を自分たちが楽しめることに使うことです。「使うか残すか」ではなく、「いくら残せば安心して使えるか」を考えてみましょう。
ファイナンシャルプランナー
FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。
編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。
FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。
このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。
私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。
退職金を全部「使ってはいけないお金」にする必要はない
老後が長くなることを考えると、退職金を減らすことに不安を感じるのは自然です。
厚生労働省の2025年簡易生命表では、65歳時点の平均余命は男性19.68年、女性24.52年です。退職後の生活が長期間に及ぶことを想定して、資金計画を立てる必要があります。
一方で、使う目的もないまま「とにかく残高を減らさない」と考えると、旅行や趣味など、元気な時期だからこそできる経験を諦めることにもなります。
J-FLEC(金融経済教育推進機構)は、生活設計を考えるうえでの一つの考え方として、「本来、お金を貯めることは手段であり、目的ではない」と説明しています。
つまり、老後資金も「残すためのお金」ではなく、将来の生活や希望を実現するためのお金です。
たとえば夫婦で以前から「退職したら北海道を長期旅行したい」と考えていたなら、その費用を退職金から出すこと自体は不自然ではありません。
重要なのは、その旅行をした結果、数年後の生活費が足りなくならないかを先に確認することです。
まず夫婦で「老後に絶対必要なお金」と「楽しみに使いたいお金」を分けましょう。すべてを老後資金として封印する必要も、受け取った勢いで大きく使う必要もありません。
年金だけで足りない金額を確認してから使える額を考える
老後資金を考える基本は、毎月の収支です。
総務省の2025年家計調査では、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の可処分所得は月平均22万1544円、消費支出は26万3979円でした。差は月4万2435円です。仮に同じ不足が1年間続けば約51万円、20年間単純に続けば約1018万円になります。
ただし、これはあくまで平均値を使った単純計算です。20年間ずっと同じ支出になるわけではなく、物価、医療・介護費、住居費なども変わります。
また、自分たちの年金や生活費が平均と同じとも限りません。そこで、まず夫婦の年金見込額を確認し、現在の生活費から退職後に不要になる費用と新たに増える費用を整理します。
たとえば仕事に伴う外食や付き合いなどの支出が減る一方、旅行や趣味に使う費用は増えるかもしれません。毎月の年金だけで生活できるなら、退職金を楽しみに回せる余地は大きくなります。反対に毎月5万円不足するなら、年間60万円を退職金などから補う前提で考える必要があります。
この不足分を把握せずに、「退職金が2000万円あるから500万円使っても大丈夫」と判断するのは避けたほうがよいでしょう。
楽しみに使うお金を最初から予算として確保する
「余ったら旅行に使おう」という考え方では、老後が心配で結局何も使えなくなることがあります。そこで、生活を守る資金とは別に、「楽しむためのお金」をあらかじめ予算化する方法があります。
たとえば旅行、趣味、家族との食事など、退職後5年間にやりたいことを書き出し、それぞれに予算を付けます。
一方で、住宅の修繕、車の買い替え、家電の故障など、ある程度予想できるまとまった支出も別にしておきます。残った資金は、毎月の生活費の不足や予想外の支出に備えます。
J-FLECも、リタイア後には家計を見直し、必要に応じて収入を増やす、支出を見直す、資産を運用するなどして資産寿命を延ばす考え方を紹介しています。そのため、「退職金は一円も減らしてはいけない」ではなく、「計画的に取り崩して使う」という発想も大切です。
受け取った直後に高額な金融商品や大きな買い物へ一気に資金を動かす必要はありません。迷っているなら、夫婦の生活費が実際にどの程度になるか数か月確認してから使い道を決める方法もあります。
まとめ
退職金は、すべて残すのが正解でも、元気なうちにすべて使うのが正解でもありません。
まず年金で毎月の生活費をどの程度賄えるかを確認し、住宅修繕や医療・介護など将来必要になる可能性のある資金を考えます。そのうえで余裕があるなら、旅行や趣味、家族との時間などに退職金を使うことには十分な意味があります。大切なのは、「いくらまでなら安心して使えるか」を先に決めることです。
老後資金を守ることばかり考えて楽しみを先送りするのではなく、反対に退職直後の勢いで使いすぎるのでもなく、生活を守る資金と楽しむ資金を分けてみましょう。お金を使う目的が明確になれば、退職金を使うことへの不安も抑えながら、充実したセカンドライフにつなげやすくなります。
出典
厚生労働省 令和7(2025)年簡易生命表の概況
総務省統計局 家計調査報告 〔 家計収支編 〕 2025年(令和7年)平均結果の概要
J-FLEC 金融経済教育推進機構 生活設計は引き算で生活設計を考えよう!
J-FLEC 金融経済教育推進機構 リタイア後のライフプラン戦略
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー
